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シンガポールから見る日本のライフスタイル (2020年 私独自の視点による)

シンガポールに長く住み、シンガポール以外にも仕事などで、近隣東南アジア諸国にごく普通に移動する生活が20年も続くとなると、日本という国が非常に面白い存在に見えてくる。

帰国する度に、本屋や図書館に頻繁に通うのだが、そこでびっくりするのは生活の楽しみ方に関する膨大な書籍量である。

掃除の楽しみ方ー例えば、掃除をする際、こんな服装が掃除には似合うとか、そして掃除をする心持ちなどがミニエッセイで出ていたり。また別の本には整理整頓の方法が出ていて、引き出しにダイソーの板を使って区分けをする方法とか、ミニラベルを作りわかりやすくするとか、更にそのミニラベルを可愛く作る方法とか、また更にそれらを作るために揃えるツール紹介といったものが書かれている。

1つ1つにとてもディティールがあり、びっくりしてしまう。実際YouTubeを見ていても、そういう動画が多くなってきているので参考にしている。

東南アジアにはそういう楽しみ方があまりない。勿論、掃除をする、ガーデニングをする、ベーキングをする、といった行為そのものは共通するが、掃除道具にもこだわりを持ったり、いい道具を丁寧にメンテをして長年使うなど、生活を「より」いつくしむ方策は日本ほど細かくないと思う。もしくは、まだそこまで熟していないのか、まだまだ結果主義、頑張れば頑張っただけの見合いが望める経済状況だからか、それとも細かいことまで気にしないカルチャーだからか。

家が小さくても、今ある目の前の生活を楽しもう、といった考えよりは、頑張って働いて大きな家を買う、高い車を所有するといった方法で自分のステータスを上げる方法や、旅行は休みさえ取れれば頻繁に行くライフスタイルといった、自分の「外にある何か」で刺激を求める人が、断然にまだ多いように感じる。実際の目の前の時間よりも、まだまだ目の前に「見えている気になっているイリュージョン」を信じている人が多い気がする。これは日本のバブル時代に似ていると思う。(家はほどよい大きさでいいわ、と思うシンガポール人は少ないと思う)

話は変わるが、シンガポールから「ヒュッゲ(hyuggelig)」を友人宅で経験しにデンマークのコペンハーゲンに旅行した際、デンマークの人達が、季節のフルーツをジャムにする時間を楽しんだり、ジャムにいれるビンやラベルにこだわったり、ジャムの入った瓶の下にひくマットを手作りするのを見て時間がゆったりと流れている気がした。同時に日本でもこういう時間が営まれているのを思い出した。「日本人が好きそうなスタイルだなぁ、そしてこういうことを本にしたものが人気が出るのかな」と思ったものである。

寒くて長い冬の時期、家で過ごす時間が長い北欧は、家で生活を楽しむための雑貨が多い。キャンドルだとか、テーブルの上に置いてちょっと遊べるものだとか、バスルームに置く丁寧に作られた雑貨だとか。こういう時間の過ごし方は、ミドルクラスはともかく、アッパークラスでも東南アジアではこういった時間を見ることは少ない。

ひと昔前、シンガポールや東南アジアにとって日本という国は「最先端」で「オシャレ」の憧れの国であった。しかし今では、シンガポールではほとんどの人が日本に気軽に旅行ができるため、日本の物が容易に手に入るし、また東南アジアのデジタル化が進み、お世辞にも最先端を牛耳る国-日本という認識も彼らの中では薄れてきているように思う。

それでも根強い人気のある国、日本。それは日本人の丁寧な質のある暮らしぶり、そしてそれにまつわる物づくり、サービスに感動する東南アジア人が多い。彼らが旅行から帰ってくるたびに、そういった感動を頻繁に耳にする。そうしてそれらを少しずつ、自分の生活に落とそうとする人たちも増えてきているように思う。

そういった中で最近私が感じるのは、日本はアジアの中のヨーロッパ的な存在なのではないか、と思うのである。台湾や韓国でもそのような生活を営む人が増えているそうだが、聞くところによると日本の動画、ドラマがヒントになっているケースを耳にする。そういった意味で今回の内容は、日本は何か新しい境地が開けるのかもしれない、と思った自分のための備忘録である。







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