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山下達郎が解説した「人情紙風船」4K修復版放映はびっくりプロジェクト。

「人情紙風船」の4Kデジタル修復版。お披露目が20年の東京国際映画祭であって、時間があれば行きたいと思っていたのだけれどかなわなかった。
これが日本映画専門チャンネルで放映、しかも山下達郎の解説付き、だというじゃないか。そりゃ見るでしょ。テレビ出ない氏がいったいどうして…と思ったらビデオ撮影はなく、音声と写真のみ。映画放送の後でフジテレビ軽部が聞き手になるひねくれ形式だ。さすがにブレないです。
BSの有料チャンネルとはいえ、山下達郎が出演を快諾したのは、ほかならぬ「人情紙風船」が彼のベストムービーの一つだからだ。解説の中でその理由は少しずつ明かされていく。
そもそも「映画」のプログラムに呼ばれるのは初めてで、日本映画専門チャンネルが20周年と軽部番組(日曜邦画劇場)が1000回目記念だったからはせ参じたとサービストーク。
80年代前半に雑誌「BRUTUS」で蓮實重彦が同作のことを書いていた。ちょうどレンタルビデオの始まった頃でたまたま近所で見つけた。そしたら、30代の山下達郎に最大のインパクトを与えたんですと。
戦後の日本映画につきまとう“教訓”にどうしても引っかかってしまうのだが、戦前の「人情紙風船」には一切何もない。ここに「自分の求めていたものだ」とハマったらしい。
ここからが山下達郎のすごいところで、スタッフや出演者のことを調べ上げている。撮影の三村明の名は、「ベンチャーズ来日映像を撮っていたので覚えていた」とか、本作の宣伝や記事の載っている1937年8月21日号のキネマ旬報を持参したりとか…脚本と完成品の違いを指摘したりとか…やっぱすごいね。筋金入りのオタクとはこういう人を言うんだね。知りたいから調べる、がオタクの正しい姿だと思いますよ。与えられるものだけで満足してるのは、親鳥の餌を巣で待つ雛だもんな。

「人情紙風船」は山中貞雄の現存する3作品のひとつで、僕は学生の頃にかろうじて観た記憶がある。でも、当時でもぐずぐずのフィルムだったし、そもそも台詞はほとんど聞き取れなかったので、良し悪しはわからなかった。
今回の修復は見事なお仕事で、しかも音声がすばらしい。Amazonプライムに、パブリックドメイン化したゾンビのようなビデオが置いてあるので、これとぜひ比較してほしいものだ。
今回ようやくの再会とあいなったわけだが…いやいや、やっぱへんてこりんな映画ではあったよね。悲惨なオチも含めて。
なので、僕は背伸びしてベストムービーなんてこたぁ言いません。
インタビューの最後で山下達郎は金子正次の「竜二」も好きで、新宿東映ホール2(パラスだっけ?)の教室の黒板くらいのスクリーンの話をしていた。思わず笑ってしまった。たぶん同じ頃に通ってるw。

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