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𠮷田恵輔の「BLUE/ブルー」って、すごい映画だったんじゃないか?

𠮷田恵輔の「BLUE/ブルー」は21年4月公開。9月にはNetflixが配信を始めた。こういう公開タイミングが増加していくと、「配信まで待つ」が当たり前になっていくよね。でも、どこの配信業者で扱うかというのはその時にならんとわからないのだから、サービスがこれだけ多いと見極めが難しい。

一例をあげると、2021年2月に劇場公開された島本理生原作映画「ファースト・ラヴ」は、9月現在Amazonプライムでは見放題、U-NEXTでは399円レンタル、Netflixでは配信をしていない。もしこれを観たいと思い、Netflixにないから、U-NEXTで払っちゃたりすると、あとでアマプラ見放題に気づく、という事態になる。
「BLUE/ブルー」も同様、Netflixで見放題、U-NEXT399円、Amazonプライム440円(購入は2500円)と、気を付けなくてはいけないやつだった。いちいちめんどくせ。

でも、観終わったら、1900円でも惜しくない傑作だったことがわかり、せこいこと考えてた自分が恥ずかしくなった。エンターテインメントに金をケチるのは、本当にかっこ悪いことだな。

「愛しのアイリーン」「犬猿」「ヒメアノ~ル」と、のど越しの悪い映画を撮り続ける𠮷田恵輔が監督脚本。だからどんだけ性格がねじくれてる映画になるかと思ったら…予想は大きく裏切られ、ストイックで真摯なボクシング映画となっていた。先入観をもっていただけにこのデキは嬉しい。何も知らなくて観たのが大正解だ。

瓜田(松山ケンイチ)は、実直でスキルも高いが試合ではトンと勝てないプロボクサー。同じジムにはチャンピオンまであと少しのスター小川(東出昌大)がいる。二人は仲良しで、瓜田の幼馴染・千佳(木村文乃)は、小川の恋人でもあった。ある日、ジムにへなちょこな若者(柄本時生)がやってくる。彼は、勤め先の女の子にモテたくて、勢いで「ボクシングやってる」と嘘をついてしまっただけなので、「かっこだけわかればいいです」と恐ろしく低い志で入会してくる。

彼らと取り巻く人々の様々なドラマが、淡々と綴られる地味な話だ。なのにエピソードの積み上げが、いつしか「みんなが好きなボクシング映画」のごとく、ドラマチックに血と汗が飛び交っていく。この組み立てが、びっくりするほどよくできているのですね。その要因の一つが、出演者たちの体現するリアリティ。特に松山ケンイチは、しばらく見ていない間にモノホンボクサーになりましたかってくらいの存在感だった。すげえな。あと、ジム会長のよこやまよしひろがいい。あの顔はいい。

実質悪人の出てこない𠮷田恵輔映画ってどうなんだよ、と思っていたら、なんと監督自身がキャリア30年のボクサーで、今回は殺陣指導もやってると。なるほど、小さい映画かもしれないが、ここには魂が込められていたってことなのね。そりゃ熱い作品になりますよ。

それにつけても…僕も木村文乃の肩をマッサージしたい。

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