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「スーパーマン リチャード・ドナーCUT」を観て、またあの頃を思い出してしまった。ドナー監督お悔やみ申し上げます。

僕にとって一番思い出深いスーパーマンはクリストファー・リーヴである。最初の映画は1978年のクリスマスに米国で、日本は翌79年6月に夏休み大作として封切られた。78年の夏が日本のスターウォーズ・フィーバーなので、毎年SF大作を大劇場で観られた至福の時期だった。「エイリアン」1作目も同じ年である。すごい時代だったね。
宣伝コピー「You'll Believe a Man Can Fly.」=「あなたも空を翔べる!」はとにかくかっこよかった。
その主演であるリーヴがクリーンなイメージといやらしくないマッチョ、ハンサムな笑顔で完全無欠なスーパーマン像を作り上げた。
まぁ面白かったですよね。大画面で繰り広げられるスペクタクルと、ワイヤーや合成で優雅に空を飛ぶビジュアルに、夢中になった僕は何度も映画館に足を運んだ。昔は入れ替え指定なんかないから、その気になりゃ朝から晩まで観ることができた。
しかしその時点では、この映画の制作を巡るトラブルは知る由もなかったんだ。そもそも「Ⅰ」と「Ⅱ」は同時に作られていた。製作者であるサルキンド親子は過去に「三銃士」「四銃士」で1本の映画を二分割する荒業で物議をかもしたことがあった。今回は監督リチャード・ドナーによる制作の遅れが対立を引き起こした。間をとりもったリチャード・レスターにより2本同時に撮られていた映画は脚本分割と調整により、別々にされる。文献を参考に思い起こすと、「Ⅰ」+「Ⅱ」で100だとして、70まではドナーが撮ってた、みたいなイメージ。で、「Ⅰ」を仕上げるために「Ⅱ」で使おうと思っていたラストシーンなどを「Ⅰ」で強引に使用してしまったため、ネタの不足した「Ⅱ」はレスターが追加撮影した。
今回その「スーパーマンⅡ リチャード・ドナー・カット版」を満を持して観た(気まぐれ偶然です)。
「スーパーマンⅡ 冒険編」は1981年6月の夏休み大作で、公開直前に特別試写会で観た。今はなき松竹セントラルに夕方から並び、ダッシュで前方の席をとったことを今でも覚えている。来日していたサラ・ダグラスが舞台挨拶したのも。「Ⅰ」に比べればコミカルで、終盤の戦いが思ったよりちんまりしたのが残念だったが、やっぱり大きな映画は大きな画面で観るに限る。…と高校生の僕は興奮したのだった。
それから名画座で何度か観た後、自分の中では重要な映画ではなくなってしまった。続く「Ⅲ」のコミカル展開で混乱し、「Ⅳ」の“最強の敵”で決別した。テレビドラマ「LOIS&CLARK」や「ヤング・スーパーマン」にも食指は動かず。ブライアン・シンガーとレジェンダリーの「リターンズ」は「Ⅱ」の続きを想起させるリブート編扱いだったのでときめいたけれど、ブランドン・ラウスでは荷が重かったし、映画として終盤がへぼかった。
さらに2013年に「DCエクステンデッド・ユニバース」となっていく「マン・オブ・スティール」が始まるが、辛気臭くて楽しくない映画だった。ヘンリー・カヴィルも「悪い顔」してた。
「ジャスティス・リーグ」は好きですよ。でも、重苦しいスーパーマンは、歓迎しづらかった。
「Ⅱ」の話に戻る。本作がドナーの構想の元、復元編集がなされたのが2006年。「リターンズ」の公開と、2004年に亡くなったクリストファー・リーヴへの追悼が込められていた(ドナー・カットの冒頭に献辞がある)。僕は2012年にブルーレイボックス(Ⅰの劇場版・ディレクターズカット版、Ⅱの劇場版とドナーCUT、Ⅲ、Ⅳ、リターンズ収録)を購入していたのだが、そんなに急いでみるものでもないと放置していた。これが大失敗。
今回たまたまU-NEXTで見つけ、「あー、そういえば」と再生したら驚いたのなんの。
2本の「スーパーマンII」はまったく異なる映画だったのだ。
そう、ザックスナイダーのジャスティスリーグばりに違ったのだね。
ドナー撮影のカットと、本来使用するはずだった「Ⅰ」のラストを合体。レスター版をオミットすることで、「スーパーマン1.5」となっていた。
元々「Ⅰ」と「Ⅱ」は続き物だったことがわかる設計だ。
ゾッド将軍たちの脱獄原因、ロイスレーンがクラークにかけるカマ(すごい度胸)、事件解決後の後始末…すべてが「Ⅰ」につながってる。編集順や使用カットも違う。
また、音楽はケン・ソーンの名が外され、ジョン・ウィリアムスのみになっている。
公開当時「Ⅰ」と「Ⅱ」を観てきた人にとっては、超へんてこりんなリミックスを見せられた気分だ。映画編集ってすげえな、とあらためて思った。
で、じゃあドナー版とレスター版、どっちが面白いかというと…やっぱり見慣れたレスター版だったりするんだよね。
これだから映画は楽しい。

そんなドナーが7月5日に逝去された。享年91。俳優出身で若くして監督となり、「オーメン」「スーパーマン」「グーニーズ」「リーサル・ウェポン」とメジャー大作でヒットを連発した。スターをふんだんに起用した大味なアクションが定番で、中でもシリーズ化された「リーサル・ウェポン」は登場人物の家族を描くことで4作がつながっている。ラストは「はい、終わりです!あざーす」ととてもいいエンドロールを見せてくれた。今の「ワイスピ」シリーズもきっと参考にしているだろうねw。21世紀に入ってから「スーパーマン」のディレクターズカットや「スーパーマンⅡ」の再編集などをリリースした。「俺のやりたいのはこれだったんだ」と言い残したかったのだろうね。

僕は「グーニーズ」がちょっと苦手(けたたまし過ぎて)。一番好きなのは、「3人のゴースト」かもしれない。クリスマスの頃に追悼上映します。

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