覚悟とわずかな希望の狭間で

風林火山が一歩前進

6位争いは一騎打ち模様となりましたね。
前回書いたnoteからボーダー争いをする4チームのうち、EX風林火山とBEAST Japanextとセガサミーフェニックスがそれぞれ2試合ずつ、TEAM雷電が4試合を消化しました。

まずは3/19に風林火山と雷電の直接対決。風林火山としてはこの日の2試合のトータルでマイナスしなければ6位通過に向かってさらに前進すると同時に、8位の雷電と9位のフェニックスに対してはほぼレギュラーシーズン突破不可能という現実を突きつけることとなります。
雷電としては前回も書いた通り1-1がほぼマストで、少なくとも1-2(2-1)で終えた上で風林火山にはそれなりのマイナスで終わってもらうことが必要でした。

そんな中で行われた1試合目は風林火山の二階堂亜樹選手が4着、TEAM雷電の本田朋広選手が2着。風林火山としてはここで雷電とフェニックスに対してわずかなチャンスを与えると同時に、BEASTに対してはちょっと嫌だなという状況になりました。
雷電としては何とか首の薄皮1枚残ったかなという感じでした。

そして2試合目。風林火山は満を持して登場の勝又健志選手。ここでしっかり取り返して6位に向かってさらに前進しようという構え。
そして雷電はなんと本田選手の連闘!全てを託そうというチームの覚悟が見えました。
そして結果は勝又選手が1着で本田選手は2着。これによって風林火山はこの日のトータルをプラスで終え、雷電も同じくプラスで終えたものの風林火山との差14.2ptsしか縮めることができず、これで雷電はほぼ終戦となりました。

この日を終えての順位は以下の通りです。

6 EX風林火山 -153.2
7 BEAST Japanext -291.4
8 TEAM雷電 -425.7
9 セガサミーフェニックス -521.3

BEASTが何とか挑戦権獲得か?

続いて3/21にBEAST Japanext、TEAM雷電、セガサミーフェニックスの3チームが激突。これが事実上の風林火山への挑戦者決定戦みたいなものでしたが、雷電とフェニックスはさすがにもう6位浮上が困難な状況だったので、BEASTが生き残れるか否かの1日と言っても過言ではなかったと思います。

結果はBEASTは1-3で+37.0pts、雷電が3-2は-14.5pts、フェニックスは2-4で-30.5ptsで終了。順位は以下の通りとなりました。

6 EX風林火山 -153.2
7 BEAST Japanext -254.4
8 TEAM雷電 -440.2
9 セガサミーフェニックス -551.8

BEASTは何とか生き残ったかなという感じでしょうか。猿川真寿選手は完全に波に乗ったと言っていいでしょうね。そして菅原千瑛選手のオーラス100点まくりの3着フィニッシュは、もしかしたら後に大きな意味を持つ100点差となるのかもしれません。
風林火山との差は101.2ptsなので、レギュラーシーズン最終日に迎える直接対決を前に最低でも50pts差くらいには持っていきたいところです。

雷電はあと2試合。仮に2試合ともトップだったとすれば、概ね120ptsくらいのプラスになると想定され-320.2ptsで終了となります。仮に風林火山が残りの4試合で全て4着だった場合、1試合平均-50ptsになると仮定すれば-353.2ptsとなるので一応捲ることはできます。
しかしBEASTにも落ちてきてもらわなくてはいけませんし、そもそも風林火山が4試合全て4着になるというのもあまり現実的とは言えず、ほぼ終戦という状況に変わりはないでしょう。

フェニックスは残り4試合。同様の理屈でフェニックスが全てトップ、風林火山が全て4着であったならばフェニックスは311.8pts、風林火山は-353.2ptsとなって捲ることはできるものの、条件としては雷電よりも厳しいものであり、やはりほぼ終戦という状況に変わりはありません。

魅せた本田選手

雷電はこの4試合で3試合に本田選手を登板させましたが、最後まで食い下がる意地のようなものを存分に見せてくれました。
3/19の第2試合ではトップ逃げ込みを図る勝又選手に対して、南4局に4,000オール、1,000は1,100オールと2連続ツモ上がりを見せて、勝又選手まで6,100点差まで迫る見せ場を作り、3/21の第1試合では同じく南4局で四暗刻単騎を聴牌するという、まさにRMOを体現する麻雀を披露。1着こそ取れなかったものの、この週のMVPは誰?と問われれば本田選手と言いたくなるくらい、素晴らしい戦いを見せてくれましたね。

選手も関係者も覚悟をしている

3/21の3チーム生き残り対決では非常に印象に残るシーンがありました。
それは対局前の一コマ。TEAM雷電の高柳監督、本田選手、実況の日吉辰哉プロのやりとりです。

日吉:「今日、もし第1ゲーム、これはフェニックスにも同じことが言えるんですけど、本田がもう落とすようなことがあれば、僕は、あの、申し訳ないんですけど雷電終わったということを言いかねないんで、それはちょっとご了承いただければと思います」

高柳:「それはもう、事実上ね、数字上はそういわざるを得ないと思います」

日吉:「あの、何かもうそれを変に、まぁこの後ひょっとしたらどデカいトップ来たらそれはそれでいいわけで、何か、ひょっとしたらというのはあんまり言わない方がいいと思っているんで、ダメな時は介錯させてもらいますので、はい、ご了承ください」

本田:(笑顔で)「言わせませんよ!」

3月21日プチオフショットより

選手も関係者も、もうほぼゲームオーバーだということはわかっているはずです。しかし応援してくれるファンがいる以上は最後まであきらめない姿勢を見せなくてはいけない、わずか0.001%の可能性であったとしても、最後まで全力を尽くして戦わなくてはならない、そんな残酷な現実への覚悟とわずかな希望の狭間で気持ちが揺れ動き、苦しんでいるということがよくわかります。

そして1番印象に残っている言葉は日吉プロの「ダメな時は介錯させてもらいます」。
これは日吉プロなりの最大限の思いやりなんだなと思いました。
実際に第2試合終了後に「レギュラーシーズン通過の夢が途絶えたと言っても過言ではないような着順という結果となりました」と言っています。
これは「完全にゲームオーバー」と言っているわけではなく、「限りなく終了に近い」と言っているに過ぎないのですが、この一言で雷電とフェニックスの、絶望とわずかな希望の狭間で苦しんでいる選手や関係者が少しでも楽になればという思いがあったように思います。

諦めることは悪なのか?

日本ではほんのわずかでも希望があるならば、決してあきらめることをしないということが美徳とされているように思います。
対して欧米では、もう見込みがないのならばさっさと諦めて次に向かっての対策と準備をすることが正しいとされているように思います。
それが良くわかる例としては、メジャーリーグのトレードデッドラインで毎年発生する主力選手のトレードです。

もうポストシーズンに進出することが難しいと判断され、かつチームにいる主力選手の中でオフにはフリーエージェントになる人がいる場合、概ね若手選手2~3人と引き換えにトレードに出してしまいます。
主力選手を出す側としては、このままその主力選手をチームに置いておいてポストシーズン進出を逃し、さらにはオフにFAで他チームに行かれてしまうとただただ損をするだけです。
なのでどうせオフにチームを去られるのであれば、ポストシーズン進出争いをしているチームや、ポストシーズン進出が濃厚で、その後の戦いにおいて懸念される事項を解決したいチームにその選手を放出し、代わりに数年後にチームの主力に育つ可能性のある選手を獲得した方が得であると考えているということです。

もし同じことを日本でやればどうでしょうか?
恐らく批判の嵐になるでしょうね。
まずあのタイミングで主力選手を放出する=ポストシーズン進出を諦めると捉えられますし、仮に主力選手がオフにFAになるとしても全力で留意する(要は最後まで諦めない)ことが正しいとされているからです。そこは浪花節な日本人気質がそうさせるということなのでしょう。

あと日本では1回負けたら最後という戦いがけっこうあります。代表的な例は高校野球で、特に夏の選手権はどのタイミングであっても1回負ければ全てが終わります。たとえ県予選の1回戦でコールド負けであっても、甲子園の決勝で延長サヨナラ負けであっても、負ければ終わりです。最後まで負けなしで終わるのは全国でたったの1校だけです。それ以外のチームは全てどこかのタイミングで1敗して終わりです。2敗以上のチームは存在しません。
こういうところも日本人の「最後まで諦めない」精神を強くするものなのかと思います。もっとも昔であれば「諦める=全てを終わりにする」、要するに切腹して自ら命を絶っていたわけですから。

かくいう私もただの日本人なので、どちらが正しいかはわかりません。
どちらかと言えば欧米的な考えなのですが、話は麻雀に戻して、以前のnoteでレギュラーシーズン通過が厳しく見えたBEASTについて、中田花奈選手をもっと起用して来シーズンを見据えた戦いをすべきでは?と書いたのも、そういう考えからなのです。現実はもしかしたらレギュラーシーズン突破もありうる状況となっていますが。

レギュラーシーズン突破に向けて最後まで諦めたくないファンの皆さんの気持ちはよくわかります。しかしその思いが強ければ強いほど、選手や関係者を苦しめることになるのかもしれないなということをふと思った今日この頃です。まぁMリーガーたるもの、それくらい真摯に受け止める覚悟がないと務まらないのだと思いますが、でも彼らも人間なのです。

そしてそれを近いところで目の当たりにして、選手と関係者の苦しみを痛いほど感じているであろう日吉プロの「介錯」。
もちろん雷電もフェニックスも切腹しているわけではありませんが、少しでも楽にしてあげたいという思いがあってのことなのかと。
私はあの試合前のやり取りを見ることができただけでABEMAプレミアムに入っていてよかったなと思いましたね。

もっとも、天然な本田選手は「介錯」を「解釈」と勘違いしているかもしれませんが(笑)

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