男の料理家たち
料理店の料理家
先日、キムケン(=キムラケンジ)さんがうちのスタジオに来られました。キムケンさんは会社員のかたわら、料理家、漫画家として活躍されています。『うちメシ - ゆかいな我が家の漫画とレシピ 』なる本も出されていて、好評です。いま、男の料理家として活躍しているのかが気になり、まとめてみることにします。
うちの書店に置かれている男性料理家のレシピ本が多い双璧は野崎洋光と笠原将弘です。野崎洋光は20冊以上、笠原将弘は15冊以上あります。お二人は一般的な料理家とは違います。料理家ではありません。料理をつくる人なので料理家と呼んでもいいのでしょうが、本職は料理店で仕事をされています。野崎洋光は東京・西麻布にある日本料理店「分とく山」の総料理長。笠原将弘は東京・恵比寿の日本料理店「賛否両論」店主。
男の料理家を調べてみると
料理店の店主、料理長ではなく、純粋な男の料理家(ちょっと変ないいかたですが)はいるのでしょうか。まず名前があがるのが、土井善晴。料理家の土井勝を父にもつ大御所です。
土井善晴に次ぐ料理家は、だれがあげられるのでしょう。阿古真理は著書『小林カツ代と栗原はるみ』で、ケンタロウ、栗原心平、ケンタロウの3人をあげています。これに加えうちの在庫でみれば、ムラヨシマサユキ、きじまりゅうたがいます。
このうち、ケンタロウは事故で現在、活動をしていません。栗原心平はテレビ番組「男子ごはん」にレギュラー出演していますが、活動の軸足は母・栗原はるみロデュースのショップ、レストラン「ゆとりの空間」の経営にあるようにみえます。
コウケンテツの変化
若手(40歳代までを若手とします)で現在、もっとも活躍しているのが、コウケンテツです。コウケンテツは、1974年大阪生まれ。父は日本生まれで韓国育ちの在日コリアン、母は結婚して日本に定住した韓国人であり料理家です。
コウケンテツの提供するレシピには年代を経るにつれ、変わっています。10年以上前にだされた『コウケンテツの韓国料理1・2・3』(NHK出版)はタイトル通り、韓国の家庭料理レシピが載っています。これに比べ、2014年に出た『僕が家族に作りたい毎日の家ごはん』(講談社)では韓国料理はほんの一部で、定番の家庭料理が中心となるレシピ集です。
プロフィールも変わってきています。『コウケンテツのおやつめし2』(クレヨンハウス)には「旬の素材を活かした簡単でヘルシーなメニューを提案」と書かれています。コウケンテツは韓国らしさをあえて消し、日本の家庭料理を提供することで人気を得られたのではないか、と思います。爽やかさ、イケメンという重要な要素を持っており、これも人気を支えています。
日本の料理家は女性の世界です。そこに入って活躍するには、そこの文法に従わなければいけないようです。日本の家庭料理という枠を大きく外れると、メジャーな存在になることはできない。そんな気がしてなりません。
ご支援いただきましたら、店で販売する本の仕入れに使わせていただきます。よろしくお願いいたします。