いまの和食を考える
料理の鉄人・道場六三郎がいた時代
YouTubeで「道場六三郎 銀座ろくさん亭の厨房から」を見ました。和食の料理人・道場六三郎の店「銀座ろくさん亭」の厨房での調理を撮した5分半ほどの映像です。定期的に配信されていますが、見たのは先月のもの。御年88歳の道場六三郎は、いまも厨房で料理をつくり、スタッフを指導しています。
かつて「料理の鉄人」という番組がありました。1993年から99年までフジテレビ系列で放送された料理エンタテインメント番組です。「料理の鉄人」と挑戦者が指定された食材を使って60分以内に料理をつくり、勝ち負けを競う番組です。料理の鉄人は和、フレンチ、中華の3人で、挑戦者はそのうち一人を指名します。その後、テーマの食材が明かされる、というルール。当時、毎回わくわくしながらみていました。
鉄人の中でも和の鉄人・道場六三郎は強かった。Wikipediaのデータですが、道場の戦績は39戦33勝5敗1分 通算勝率84.6%。中華の鉄人・陳建一は94戦68勝23敗3分 勝率72.3%、フレンチの鉄人・坂井宏行は87戦70勝16敗1分 勝率80.4%です。道場は試合数が他の鉄人にくらべ少ないので、少し割り引いてみなければいけないかもしれませんが、それにしても高い勝率です。ほとんど負けなかったという印象があります。
現代の和食料理人
いま、マスメディアで活躍している和食料理人はだれなのか。こと料理本(レシピ本)に限ると、笠原将弘、野崎洋光のお二人が横綱です。完璧に調べていませんが、うちの仕入れ候補リストからはそれぞれ30冊ほどの料理本を出しています。笠原将弘は料理店「賛否両論」のオーナー兼料理人、46歳。野崎洋光は「分とく山」の総料理長、66歳。
歴史ある老舗から新しいスタイルの和食まで、店は数多い。その中でも、こと料理本の世界では笠原将弘、野崎洋光のお二人の存在感は圧倒的です。なぜ、おふたりがここまで料理本をたくさん出されたのか。その理由はいくつもあるでしょうが、そのひとつに柔軟性があると思います。和の料理を基本としながら、専門性にこだわらず、易しくつくりやすいレシピを提供しています。例えば、笠原将弘ば、『忙しい人のための「ついでレシピ」』。『いつものアレで絶品麺』。野崎洋光では、『和の離乳食 本物の味を赤ちゃんから』『簡単だから毎日作れるシニアごはん』といった幅広いテーマに対応したレシピ本をだしています。お二人とも守備範囲が広いです。
和食のこれから
2013年にユネスコが和食を無形文化に登録をすることを決めました。日本の伝統ある食文化が認められたということで、いいことです。しかし、無形文化に登録されたということは、農林水産省のホームページによれば、
ユネスコの無形文化遺産の保護に関する条約」では、この無形文化遺産を保護し、相互に尊重する機運を高めるため、
とあります。
要は和食は保護されるべき文化遺産ということです。保護され、伝承されるのが和食です。食文化の多様性がしばしば指摘される今日、和食はどのように守られ、そして進化していくのか。このテーマは引き続き考えていきたいと思います。
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