人格をもったあの子に伝えられなかった恋の話

彼氏の従兄弟(21歳:男の子)と仲が良い。

便宜上、Kくんとします。

Kくんは千葉県に住んでいる。1年前くらいからだったか、半年に一度程度のペースで彼氏の家に泊まりに来るようになった。Kくんも普段働いているから気を利かせて、だいたい三連休を狙って遊びに来ているようだ。

Kくんは、障害者で少し知能が遅れているらしい。そりゃ、小さいころはきっとコミュニケーションに苦労しただろうけど(Kくん自身も自覚してる)、そんなことほとんど感じないほど今は普通に会話できるし、よく笑う。好き嫌いがハッキリしていてそれが清々しく、とても楽しい。

かれこれ3年くらいの付き合いになるが、会うたびいろんな話をしてきた。

仕事のこと、学校のこと、好きなアーティストのこと、映画や音楽・・・etc

Kくんは小さいころ、人よりも親や兄弟に付き添ってもらっていろんなことを経験してきたとの自覚があるようで、少し大人になった今、「はじめてひとりで○○する」ということに果敢にチャレンジしている。

1年前にはじめて彼氏の家に泊まりに来たけど、そのときは”はじめて”がたくさんあったようでとても緊張していたこともあった。

はじめてひとりで東京まで電車にのる、はじめてのスカイツリー、親も兄弟もいないお泊り、、、もっと些細な体験でいうと、はじめてカフェで待ち合わせをする、とか、わたしが大事にしてこなかった「はじめて」の体験を、たくさん記憶していて、なんだか羨ましいくらい。

KくんはAKB48とAAAの大ファンで、11月にはじめてライブに行って思わず泣いた話なんか、興奮相まって聞いてるこちらが泣きそうになる臨場感で話してくれた。

そんな彼と、昨日また久しぶりに会ったときに、こんな話をしてくれた。

「俺も次の誕生日で、22歳になるから・・・そろそろ彼女が欲しい。」


・・・


私「好きな人、いるの?」

K「いるけど・・・自分からは声かけられない。」

私「それは、恥ずかしいから?」

K「(好きな人のことを考えると)それが心配で、不安で、眠れなかったりする。」

私「うんうん。その子とは、けっこう会うの?」

K「会ってみないとわからないけど。」


・・・


私「仕事のひと?」

K「いや、たとえば・・・AKB48とか。ひとことでいうと、芸能人と付き合ってみたい。でも・・・無理でしょ?」

私「いや〜・・・あ〜・・どうなんだろう。わたしの周りには、あんまりいないかな。」

K「無理だけど・・・自分の夢は諦めない。だから、そこをなんとかできないかなぁって考えてる」


・・・

つまり、彼の悩みはこうだ。


・そろそろ彼女が欲しい

・芸能人(おもにAKB48)と付き合ってみたい

・どうしたらいいかわからないけど、諦めたくない


わたしはいつも、自分の経験・人間関係から蓄積してきた「主観」をとおして物事を判断している。だから、今回Kくんが相談してくれた芸能人と付き合ってみたいという夢に対して、

一般的には無理だ

という考えをもって会話をしてしまっている。理由は、まず芸能人に会うことなんてほとんどないから。そして、直接会ったことがない人を好きになることがないから。

どちらも、”わたし”の考えだったにもかかわらず、Kくんにはなんともおこがましいことに、「芸能人じゃなくてもかわいいひとはいるよ」ということを教えてあげようとすらしてしまった。

話は進んで、小学校のころの初恋の話もしてくれた。しかし、その恋によって大きく傷ついたことがあるようで、「自分が人を好きになることは迷惑なんじゃないか」と、今でも思うこともあるという。

だから、可愛くてどんなときも笑顔を絶やさない芸能人だったら、自分のことも受け入れてくれるんじゃないかと、本気で考えている。


・・・

芸能人と付き合えない理由のひとつ「そもそも会えない」問題は、Kくんにはあまり大事ではなかった。

なぜなら、お金があれば会えることを知っているからだ。

KくんはAKB48が好きだ。AKB48といえば、芸能人のなかでも比較的会いやすい。CDを買ったら握手会や有料のカフェ(?)の招待状がついてくることがある。※ちなみに握手会はわたしも行ったことがあるが、たしかに会えた。そしてこじはる・・・とてもかわいかったなぁ・・・。


働いて稼いだお金を、何に使うかは個人の自由だ。

だから、AKB48に会いたければ会えばいい。けっこうお金がかかるけど、会うことはできるんだから。いい体験になるに違いない。

なんだけど・・・複雑な気持ちにもなる。

考えすぎなんだろうけど、会って、実らず傷ついてほしくないとも感じる。いや、傷ついてこそ恋愛なんだけど、誰かと付き合うことにお金のやりとりありきで考えて欲しくない、気がする。


とはいえ、芸能人と付き合うことはぜぇ〜ったい無理な話っていうわけでもない、気がする。

そしてそれが彼の夢であることも間違いない。

今まで、さんざん「夢は諦めなければ必ずかなう!」っていう言葉を浴びてきて、健気にひとつずつ叶えてきて、ここにきてこんな壮大な夢にぶち当たり・・・簡単な気持ちで「無理だよ」なんて言ったら、いままでの言葉が全部嘘になってしまうんじゃないか??


結果、何も言えない。


・・・


これが、地元の友人に相談された悩みだったらどうだろう。

「目ェ〜覚ましなよ〜」なんて、飲みながら言えるのかなぁ。

それとも、「応援するよ!」とか言えちゃうのかなぁ。

この差はなんだろう。


・・・


今回、Kくんに対して、無理だとも応援するとも言えず、なんとも言えず、自分の主観で生きていることを痛感し・・・

まだまだ未熟ねぇと感じざるを得ない、日曜日の午後だった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?