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【今さら聞けない】中国ビジネスを知る基礎キーワード4選

 中国市場のプレーヤーのみならず、アリババをはじめとした中国の革新的な企業やサービス、流通の仕組みは世界のビジネスマンが注目するところとなりました。その手の話題の中には中国以外では聞きなれない単語が多く「今さら聞けないけど、これは結局どういうこと?」と頭を悩ませている人も少なくないのでは。

 今回はその中でも重要で基礎的な4つのキーワードを簡単にご紹介。また、それに関連した最近のニュース(19年9月2日時点)をまとめました。

1:BAT(百度・アリババ・テンセント)

 中国IT大手の3強といわれる百度(バイドゥ Baidu)アリババ(Alibaba)、テンセント(騰訊控股 Tensent)のこと。絶対知っておかなくてはならないのは、アリババとテンセントの関係です。

 アリババはECサイトから立ち上がり、テンセントは「WeChat」「QQ」などメッセージアプリやゲームがルーツですが、今や同じような事業を拡げあい、シェアを奪い合っています。どちらも買収や投資などでグループを作り上げ、「アリババ経済圏」「テンセント経済圏」と呼ばれています。例えばBtoCのEC市場シェア1位はアリババの「天猫(Tmall)」、2位はテンセント経済圏の「JD.com」になります。

 両陣営ともに、ECサイトや金融(信用評価なども)、SNS、クラウドサービスなどオンラインの他、流通や新型スーパーマーケットやコンビニ、レストラン、ショッピングモールなどオフラインにも展開しています。これらの多様なサービスの利用がビッグデータとして両者の強みになっています。

 最近ではあまりBATとは呼ばれなくなってきていますが、その理由は百度の伸び悩みです。中国No1の検索シェアを誇る百度ですが、2019年第2四半期(8月発表)の業績は売上高が前年同期比1%増の263億元、営業利益は同96%減の2億元、純利益は同62%減の24億元でした。この大きな要因は検索以外の分野で伸ばせなかったことが要因です。しかしスマートスピーカーの分野では健闘しているようで、AIビジネスでどこまで挽回できるか期待がかかります。

関連:世界のスマートスピーカー市場でグーグルはバイドゥに抜かれて3位に | TechCrunch Japan

最近の気になる関連ニュース:
中国アリババ、網易の越境EC事業買収を検討 20億ドル - 日本経済新聞
 
「シャネル」が他社ECに出店 アリババの「Tモール」に - WWD JAPAN.com

2:OMO(ニューリテール / 新小売り)

 最近、中国関連のビジネス用語で最も聞く単語かもしれません。O2Oは聞いたことがあるけれど、という人もいるかと思いますがOMOは「オンラインとオフラインの融合」(Online merge with Offline)のこと。アリババのジャック・マーが提唱したニューリテールの一環として知られており、よくメディアで新小売りと直訳されていますが、正確には多少ニュアンスが違います。

 概念的でわかりにくい人のために具体例を挙げると、最も知られているのがアリババが買収したスーパーマーケットの「盒馬鮮生(Hema Flesh)」です。スーパーがどのようにオンラインと融合されているかというと①オンラインからも注文可能で、最速30分で届けられる。その理由はスーパーの店頭が商品倉庫代わりになっており、ピックアップ要員が棚から商品を集めるから②ビッグデータで商品を需要予測・発注・在庫管理が行われる。OMOは単にオンラインとオフラインをつなげるのではなく、「どちらでも同じように購入ができ、それを選ぶのはお客」という考え方です。O2Oは店が客を誘導するための仕組みですが、OMOは客が選ぶための仕組み。ちなみにこういったスーパーはテンセントもそのほかIT大手も今広げていて、コンビニなど様々な形に幅を広げています。

最近の気になる関連ニュース:
アリババ、4-6月売上高は予想上限を上回る-コアラ買収交渉と報道 - bloomberg
中国アリババ「ニューリテール」宣言から間もなく3年。ストライプ、資生堂など日本企業5社が見た中国市場 - ネットショップ担当者フォーラム

3:ミニプログラム

 ミニプログラムは簡単に言うと、「アプリ内のアプリ」です。中国の「ライン(LINE)」的存在の「ウィーチャット(WeChat)」やアリババの決済アプリ「アリペイ(支付宝、Alipay)」、そのほかHAUWEIなどスマホ会社も展開しており、支払い機能などと紐づけられるECサイトなどが参加しています。百度のミニプログラムには小紅書(次章を参照)が、アリペイには「タオバオ(Taobao)」などが参加しています。

 最近では多くのブランドやショップが独自のアプリを作っていますが、いちいちダウンロードするのは結構な手間です。ミニプログラムであれば出前注文やチケット購入など普段の使用頻度が低いアプリでも消されることなくスマホの中に場所をとることができます。

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↑左はピザ屋のミニプログラム。オレンジのボタンを押すとスキャン画面に移動する。店舗の机にあるQRコードを読み取ることで注文ができ、席までピザが届けられる仕組み。右はストリート系ファッションのEC「インナーセクト」。冬には米「コンプレックスコン」の中国版といわれるイベントを開催しており、チケットもミニプログラム上で販売する。

 ミニプログラムはその検索方法がとても特徴的です。①検索(あいまい検索はできないので特定して)②QRコードを読み取る③位置情報から近くのミニプログラムを探すの3種です。②と③はオフラインでの使用を前提としたもので、まさにスマホの画面を見ていない時間までもターゲットとしたオフラインとオンラインをつなぐ施策です。

最近の気になる関連ニュース:
WeChatミニプログラム2019年市場研究レポート - チャイメモ
阪急阪神百貨店、日本初の「ウィーチャットペイスマート旗艦百貨店」に 化粧品予約受取サービスもスタート - WWD JAPAN.com

4:Weibo / Wechat / 小紅書(RED)

 上記の3つは中国で人気のSNSです。多少乱暴ですが、ざっくりいうと「Weibo」=ツイッター(Twitter)、「WeChat」=ライン(LINE)、小紅書=インスタグラム(Instagram)+ECサイトです。

 ①「Weibo」は知らない人がいないのではないか、というくらい有名な中国SNSで、一般人から芸能人、そしてKOL(ワンホン、中国のインフルエンサー)、メディアやブランドまでが日々つぶやきを投稿します。ツイッターと同じく動画や画像もアップできますが、テキストベースのSNSです。最近では木村拓哉をはじめ日本の芸能人も数多くアカウントを立ち上げました。

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 ②前章でも紹介した「WeChat」はメッセージやミニプログラム、決済の「WeChat Pay」、フェイスブック(Facebook)的な投稿ができるモーメントまで幅広いサービスをこのアプリ一つで使用できます。お店やブランドが顧客に情報発信するツールとしても注目されています。

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 ③「小紅書(RED)」はこの中でも一番若く、2013年に設立したアプリです。よく中国のインスタグラムと形容されるように画像ベースのSNSで、メイン層は若い女性ユーザーです。投稿が多いのも美容、ファッション、旅行などに通ったところが多い。しかしインスタグラムとまったく違うのは、ECアプリであることです。

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 「ストア」のタブからは各店舗が出品している(主に美容、ファッション)商品が検索でき、ブランドの旗艦店も入店しています。また投稿に購入ページを紐づけることも可能で、KOLたちはファンから「きょうはどこのリップを使用しているの?購入ページを貼って!」とリクエストされることも多々。中国のジェネレーションZ~ミレニアルズを追うには欠かせないアプリに成長しています。

 これは余談ですが、先日、KOLが通う上海の美容師さんに聞いたところ、集客は主に「WeChat」と「小紅書」で行うといっていました。「Weibo」にはすでに美容関連の集客能力があまりないとのこと。一方で、小紅書は今年7月にアプリストアから消去される事件もあり、今後の動きに注目です。

最近の気になる関連ニュース:
中国SNSメディアの最新動向――2018年中国SNSメディア影響力レポート抜粋 - チャイメモ
次世代SNS「RED(小紅書)」にラグジュアリーブランドが続々と参加 中国インフルエンサービジネス最新事情 - WWD JAPAN.com
【記事コラム】「小紅書(RED)」でどうすれば人気KOLになれるのか? - bolome
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(臼井杏奈 / @AnnaUsui) 

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