2023年 ガザ・モノローグ 「友よ」の和訳 Japanese Translation of one of the 2023 Gaza Monologues "My Friend"

原文は以下のリンクからダウンロード可能です。

友よ
ガザについてなにか綴って欲しいと書いてくれたあなたの手紙を読んだ時、いつもならすぐに返事をするのだが、今回は何日も沈黙してしまった。今は言葉がない。なぜか?それはもしかすると、今生き延びている残虐さのゆえなのかも知れない。今朝、狂ったミサイルによって隣人の家が破壊され、その瓦礫が我が家に飛び散ったにも関わらず、私と家族は奇跡的に生き延びたからかも知れない。あるいは、今は言葉以上に画が物語っているからかも知れない。あるいは、もう語りに実用性が見出せなくなったからかもしれない。特に、日常的な殺人、包囲、飢え、そして75年以上にわたって我々に対して行われてきた国家的テロリズムのさなか、我々の正義を主張し続けていても、誰も答えてくれないからかもしれない。

友よ、昨日、イスラエル占領軍はガザのバプテスト病院を爆撃し、今の時点で500人以上が殉教している。殉教者らはバラバラに切り刻まれ、肉の山となった。

劇作家として、​​​​​​我々は演劇「アンチゴーヌ」は最も残酷な悲劇の一つと理解している。クレオン王がアンチゴーヌの兄弟の埋葬を禁止し、そこから、死後であったとしても、人間であるとはなにを意味するのか、尊厳とは、価値とは、権利とはなにかについての2人の間の会話が展開される。アンチゴーヌは自分の目の前にある兄の遺体を見て、彼を埋葬しないままにしておくことに耐えられない。バプテスト病院の虐殺された、頭のない、手のない、あるいは足のない遺体は我々の時代の新たな悲劇となった。

バプテスト病院の瓦礫の傍で年配の女性が看護師にこう尋ねた。「若者よ、そこに転がっている手を渡しなさい。指輪でわかった。それは今朝、私がニュースを見るために椅子に座るのを助けて支えてくれた娘の手だ。テレビを付けてくれた手だ。娘は家を出る前に私に挨拶し、手にキスをしてくれた。いつも私を抱きしめて肩を優しく叩いてくれた手だ。髪をとかしてくれて、いつも爪を切ってくれた手だ。若者よ、その手は、私の最後の日々の力の源だった。娘に最後のキスをさせておくれ。そうすれば、私はこれ以上娘の身体を求めなくてすむ。​​​​​​​」

友よ、これ以上なにを書けばいいのかわからない。これを言葉を綴ると言えるなら、友人らに読んで、私からの感謝の意を伝えてください。なぜなら、大きな心と人間らしい姿勢を持ち、そして道義を重んじる自由な人間は近頃、とても少なくなってしまったことをわかっているから。

ガザから、大好きだったラヴァルまで、そして愛してやまなかったパリまで。いつか会おう。この地球上の他の住民のように私も自由になった時に。

2023年10月18日 アリ・アブ・ヤシン