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難関と言われる「医療業界向け音声AIエージェント」開発に、なぜ成功できたのか?

はじめに

デジタル化が急速に進む現代では、生活のあらゆる面でより便利で効率的なサービスが求められています。そんな中、サイト上のボタンをクリックすることなく、スマートスピーカーに話しかけることで簡単に回答を得られる音声AIへの需要は最近、大幅に増加しています。

2019年時点で国内スマートスピーカー普及率は7.6%、野村総合研究所の調査によると2025年には普及率が39%まで増加すると予想されています。また、voicebot.aiの調査によると、アメリカの家庭におけるスマートスピーカーの普及率は2020年時点で既に26%となっています。さらに驚くことに、アメリカでは2019年からの1年間で普及率が32%増加しました。このように、家庭での情報取得方法で音声がより広く使われるようになって来ている現在、患者様や医療従事者においても、より手軽な音声AIを使った情報収集へのニーズは日々高まっています。

カンバセーションヘルス社では音声による医療情報の提供ニーズに応えるため、医療業界向け対話型AIソリューションの音声AI開発を進めてきました。

間違った情報提供が許されない医療業界においては、正確な音声認識が他業界に比べてとても重要であり、その技術開発はとても難しいとされてきました。そんな中、高い精度を誇る医療業界向けの音声AI開発に成功したカンバセーションヘルス社の音声AIプロダクトオーナーのアニック氏に話を聞いてみました。

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音声AIプロダクトオーナーのアニック デェ

正確な医療情報の提供をどう実現するのか? 高まる音声情報提供へのニーズ

家庭や職場でのスマートスピーカーの使用率は急増しています。また、「Hey, Siri!」「オッケー、グーグル」とスマートフォンに話しかけるのも、今や見慣れた光景です。医療業界の音声情報提供への期待、需要向上も自然な流れだと思います。

しかし、患者さんがGoogle HomeやAmazon Alexaなどの音声プラットフォームを使って医療情報を入手しようする際、医療従事者に話すのと同じレベルの正確さを音声AIに期待しています。

また、医療従事者も同様で、MR (医薬情報担当者)やMSL (メディカル・サイエンス・リエゾン) から得られる情報量と正確さを音声AIに求めています。医師が「〇〇製薬さん、私の患者さんには〇〇という薬を2回投与が必要ですか」と尋ねたとき、MRやMSLが応えるように正しい回答が返ってくることを期待していますし、提供する必要があります。

医療業界向けの音声AIアシスト開発に立ちはだかる壁とは?


しかし、音声AIエージェントが医療情報を提供するのには大きく2つの壁があります。

一つ目は、正しい音声言語処理の難しさです。特に医療用語は発音が難しい外来語や長い名称の病名、薬剤名がほとんどです。医療用語を正確に機械が理解することは、他業界のように簡単な日常会話で使われる用語の理解よりも遥かに難易度が増します。

現在、一般的に市場に出回っている医療用ではない自然言語理解(NLU)エンジンであってもその精度は約65%と言われています。そして、一般的なエンジンは、医療会話には最適化されておらず、医療専門用語を正しく理解できないことが約3回に1回起こります。1/3の確率で間違った言語処理がされてしまうことは、医療業界においては大変、大きな問題です。例えば、「コロナワクチン」が「こんな、ワクチン」、ひどい場合には「こんな、ワシ」と音声認識されてしまうこともあります。これではユーザの質問内容からかけ離れた理解をしてしまい、不適切な回答をしてしまいます。

二つ目は、音声言語処理によって機械が正しくユーザの質問を言語として理解しても、正しい回答を提供するには、更にその質問の意図を理解する必要があります。質問者が「コロナウイルスにかかった場合の身体への影響を知りたい」のか、「コロナウイルスワクチンの身体への影響を知りたい」のか、その質問意図は全く違うものです。質問の意図を正確に理解して初めて正しい回答を与えることが可能です。この2段階のチャレンジがある医療業界での音声AIエージェント開発はとても難しいものとなります。

医療に特化したAIエージェントが音声AI開発を可能にした理由とは?

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そんな中、カンバセーションヘルス社では医療業界に特化した音声AIエージェントの開発を進めてきました。これによって医療業界でスマートスピーカーを用いたAIエージェント、対話型のバーチャルアシスタントを提供することが可能になりました。

なぜ、このような難しい分野に取り組み、開発に成功したかと申しますと、弊社がこれまで4年間をかけて磨きをかけてきた医療業界に特化したNLUエンジン、情報処理システムを基盤とした対話型AIエージェントを持ち合わせているからです。

先ほど、医療音声エージェント参入への難関として挙げた2つ目のポイント、つまり質問者の意図を正確に理解することに関して、カンバセーションヘルスでは一億を超えるデータポイントをこれまでに集め、それをタクソノミー型*の情報処理システムを使い整理してきました。この数の医療用語やデータは一晩で集めることは到底できません。弊社の4年間を超える医療業界に特化した対話型AIエージェント開発の賜物であり、日々最新の情報をアップデートしています。質問者の意図を正確に理解することが可能な対話型AIエージェントを弊社は持ち合わせているからこそ、音声にもスムーズに対応できるシステム開発ができました。

そして、1つ目の難関であった、正しい音声理解に関しては世界中の音声データを回収、分析することによって日々精度の向上を図っています。

データ統合もスケールアップも容易。そして、さらに便利に。


弊社の対話型AIエージェントはIQVIA、Salesforce、Veevaなどの主要なヘルステック・プラットフォームへの統合が可能です。そしてクライアント様のニーズに合わせて他ブランド、多言語、多国市場への展開も容易にできる為、これまで多くのトップ製薬会社様に弊社ソリューションをご利用いただいています。これからも医療従事者や患者様の正確で利便性に優れた医療情報提供ニーズに対応した弊社の対話型AIエージェントを、より多くの製薬会社様にご利用いただきたいと思っています。多くのユーザに弊社のソリューションを使用していただくことによって、精度も更に向上していきます。より手軽に正確な医療情報を提供する為に、カンバセーションヘルス社の技術開発はこれからも続いていきます。

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注釈

*タクソノミー

タクソノミーは元々、分類学や分類法を指す用語ですが、IT業界では情報やデータなどを段階構造で整理したものを示します。弊社が開発したタクソノミー型は医療情報に特化したA Iデータモデルで、複雑な医療用語や質問内容の意図を理解し、正しい応答の提供を可能にしたシステムです。

詳しくはこちら: https://note.com/convohealth_jp/n/n004f60efe517

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