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9/20 BTS@国連スピーチ について雑感

●7人で、韓国語でスピーチしたのが良かった

正直、3年前の9月に、リーダーのRMが一人で英語でスピーチしたときのような衝撃はなかった。でも、BTSは韓国出身で、7人で活動するグループだ。誰かひとりだけがカリスマなのではなく、矢面に立つのでもなく、7人でパフォーマンスする。英語というスタンダードに適応するのではなく、彼らの母語で。
それは、普段から「僕らはアメリカ人にはなれないし、なろうとも思わない」「僕らは韓国から来たアーティスト」と言っている彼ららしい選択であり、誰ひとり取り残さないSDGsの理念にも合っているんだろうと思った。

●等身大で違和感のないスピーチ原稿だった

原稿も、あのときの完成度に比べればドラマティックさは希薄だし、パートのつながりにちょっと無理があるところも。
でも、だからこそ等身大の言葉でもあった(基本的には自分たちで作った原稿なんでしょう)。

ツアーが中止になり悔しかったこと、それまでの活動がとても得難く思えたことを彼らは繰り返し話してきたし、卒業式ができなかった子たちに向けてオンラインで祝辞を送ったこともある。

スピーチを前にSNSで募集した「young peopleのこの2年間」をボードにしてきたこと。コミュニケーションへの意思。「ARMYがいるから僕らがいる」それがこの場につながっている、という意識を表現してるんだと思う。

●「ロストジェネレーションではなくウェルカムジェネレーション」

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今の10代、20代は、変化におびえるのではなく「welcome」と言いながら前に進んでいく世代だ、と。

「ロストジェネレーションと呼ばないで」
「(気候変動で人類の)エンディングが決まっているかのように語らないで」

という言葉にはハッとさせられた。

私はパンデミックで失われたものの大きさに目を向けてきたけど、「失われた」という見方は比較なんだよね。

年長者が昔と比較して向けてくる〝哀れみ・嘆き目線”ってすごくイヤだったよねと思い出した。「は? そんなもん、なくても困らんし、むしろ要らんわ」と思ってたことが数々あったよ(めっちゃわかりやすく言うと、たとえば社内旅行とかw)。

社会的に弱い立場に思いを致し、小さな声に耳を傾けていくことは大切。でもそれを拡大解釈して型に嵌めがちなのは年長者の悪いクセだよね‥‥と反省。
んで、「若い人への偏見に抗議し、防弾になる」というのが、防弾少年団つまりBTSのそもそものスタートで、いかにも彼ららしいメッセージなのだった。

●ジミン氏ぃぃぃ!

スピーチ途中、一瞬言葉につまって、「すみません」と言う場面があった。
見てるこっちもめちゃくちゃ緊張。
そこからスッとひとつ呼吸をして持ち直した鮮やかさに感嘆!
数々の大舞台をこなしてきた経験値をみた。

翌日のインタビューで
「めちゃくちゃ緊張しました~~~」
と相好を崩すジミン氏。
それを聞いて、インタビュアーをつとめる国連の高官(60代くらい?の女性)が
「あなたが緊張したなんて信じられません。何万人もの前でパフォーマンスしてきているのに。私たちみんな同じ人間ってことですね」
と応えたのもよかった。そう、私たちみんな生身の人間。

ちなみに、その夜のメンバーだけでの生配信では、
「背中が汗びっしょりになり、あの3秒が20年にも感じた」
と語ったジミン氏であった~!

J-HOPE「感極まって言葉につまったんだよね、ってスタッフたち言ってたよ」
SUGA 「え、そういうタイミングじゃなかったじゃん」←こらw
RM 「そういうことにしましょうよ、ヒョンニム!」←兄をなだめるw
グク「ジミニヒョン、ここで全部気持ちを吐き出さないと~」

●ホテルの部屋でごはん食べながらの生配信

飛行機を降りてすぐ支度して国連でのMVを録り始め、合計12時間以上かけて撮影。今回の渡米はとにかくハードスケジュール。

6分半の演説を1時間半ほど練習。「なのにジミニヒョンが本番で‥‥」といじるグクw ジミンが詰まったとき、ジン、SUGAは笑いをこらえ、グク、RMは何事もなかったように振舞ったらしい(テテ談)。

メンバーによるジミンのフォローとリーダーRMへの絶賛

J-HOPE「こんな日程こなしながら、すごいよね」
ジン 「スピーチもだけど、インタビューもあんなふうに言えるなんて」
グク「RMヒョンがいなかったら僕たちどうしてたんだろう」
RM 「みんなそれぞれ役割があるんだよ僕らは。僕はフリースタイル苦手だし‥‥」
ジン「ちょ、言っとくけど僕は会社に抗議する役じゃないからね!」

と言いつつ、長男ジンくんがどんなに会社に抗議してきたかの思い出話、これまでメンバーがどんなに忘れ物や失くしモノをしてきたか、時差ボケのきつさ(と韓国で朝晩逆転してるのでNY時間になじんでるジミンとグク)、子ども時代の各家庭でのチュソク(韓国のお盆的な)の過ごし方、靴下を脱ごうとするグクと止めるRM、結局グクが「僕水虫ないもん」と言って脱いだ靴下を拾って「ほら現代アートみたい」とメンバーに見せるRM

‥‥などなど、いつもながら本ッ当~~~によくしゃべる人たちw
グクが「僕たち、カメラつけてるのに普段みたいにしゃべってウケる」と自分で笑ってた。

そんな中、「君たちは歌手なのに国連に行って何すんだ?」みたいなことも言われたけど‥‥」と、目的意識や成果の評価についてユンギがさらっとしゃべってたのも良かった。そういうのも、彼らの通常運転。

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●政治利用的な話について

ここからは備忘も兼ねた私見です。

いろんな感想や意見が出るのは想定の上で、リスクもとりつつの彼らの主体的な行動だと思ってる。というかリスクのない活動はありえないので。特にButterリリース後からのいろんなインタビューや直前のクリス・マーティン(coldplay)との対談を見ると、今回の渡米やスピーチ内容もナルホドねという感じ。

彼らが一方的に利用されているわけではなくて、まぁお互いに(国連、文政権、BTS、事務所)やる価値があったんだよねという。バンタンにとってもリスクより目的が勝ってやったこと、そのリスクや目的をどう捉えるかによって、ARMYの中でも感想は分かれるんだろうな。

昨年のインタビューでもSUGAが「ARMYは多様性ある個人の集合体」だと言ってたので、ARMYみんなに肯定されるとは彼らも毛頭思っていないだろう。

Butterリリース時の会見で「その都度話し合って、その時々で最善と思われる答えを出している」と言っていた。国連の壇上でSUGAが言った「私たちの選択には完璧じゃないものもあるだろうが、だからといってできることが何もないわけではない」という話にも通じる。

誰の人生もすべて思い通りには運べない。彼らはそれぞれの局面で、彼らの可能性と制約の中で、彼らなりの選択をして生きていく。結局はそれを「自分がどう思うか」という話。彼らが(その選択が)どうなのか?でなく、自分が問われる、自分を見つめる問題だと思う。

国威発揚にどうコミットするかは、そもそもお国柄の違いもあるので‥‥。
去年の今ごろも初めて制定された「青年の日」とやらでスピーチしてたよね、大統領府で。日本からすると「エッ」「露骨すぎん?」て感じの建付けの舞台だったけど、あのときもスピーチの内容はすばらしかった。ジンくんがデビュー時の劣等感を率直に語ったりしてね‥‥(思い出し泣き)

「国」というものの捉え方が日本と韓国では全然違うし、韓国のナショナリズムを劣っている・偏ったものだとする見方はあまりに無知でアップデートできていないと思う。むしろ韓国は民主主義に対する意識は日本よりずっと強い面もある。ま、推しが特使になったのが昨今の本邦の政権みたいなのだったら悲しいことこのうえないとは思うw

長期的な影響(政権交代後とか)の心配については、彼らが念頭においているのはそもそも「すぐ近い将来」までなんじゃ‥‥と思ったりする。日本のアイドル文化や社会体制とは大きく違うので。「ずっとバンタンやりたい」は本心だろうけど、ずっと今のスケールでとは毛頭思ってなさそう。いろんなインタビューや生配信を見ていて、「今この状態(人気のピーク)はそう長く続かない」という意識を常にもっているんだなあと感じる。

自分たちへの長期的なメリット(デメリット)というよりは、自分たちにとって、またK-pop文化にとって「今できる最善」を考えてそうというか。ユンギもたびたび「自分たちのあとにいろんなK-popアーティストが出ることが大切」と言っている。

彼らが「もう一度グラミーに挑戦する」と明言してガツガツいくのは、彼ら自身にはチャンスは1,2度しかないという短期的目線と、一度彼らがとることで後に続くK-pop文化(ひいては非・欧米文化)に大きな貢献をするという長期的目線の両方があるんじゃないかなと勝手に想像してる。
そういう「歴史と文化への貢献」的な感覚が韓国的なのかなと思う。よくも悪くも歴史から脱文脈した日本人にはわかりにくいんだろうなと。

あとは、「社会にポジティブな影響を与えたい」ということ。これは彼らの最初からのコンセプトだし常に語っていること(ここへきて、あまりにスケールが大きくなったのだが、彼らはそれを受け容れることにしたんだと思う)。
渡米直前にリリースされたクリス・マーティンとの対談で「特権」の話も出てたけど、大きく育った彼らが、世界に対して今どんなふうに影響力を行使したいか? そこにフォーカスして活動してるように見える。

ま、全部ただの想像と私見です。

ワクチンについては、あれだけ公演したいしたいと言い続けてる人たちなので、そりゃ打つし公表もする(=影響力を行使する)よなと。打たない人・打てない人をどうこうとは一言も言ってないから。ただそのあたり、配信とかでフォローあるかもなとは思う。

かつて「小石ですら政治的になりうる」という名言を放っているグループなので、自分たちの立ち位置は常に意識したうえでの選択だろうし、ARMYはこれまでも「おいおい」と批判してきたファンダムなので、彼らはハナから盲信なんか期待していないはずで、いろんな意味でチェック機能がはたらくグループだと思ってます。

な、長い。


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