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ついにヴェールを脱いだ「달려라 방탄 (Run BTS)」に震えが止まらない

2022年10月15日、釜山でのコンサート。前日にRMが長文投稿の中で「バンタンは公演だから(≒BTSの活動の中心、最優先はコンサートだから)」と書いていたとおり、パフォーマンスが鬼神のよう‥‥

私がBTSのパフォーマンスを見るようになって驚いたのは

①一人ずつの声量 ②音を外さない ③激しく踊り走りっても音がほとんどぶれない、外れない ④エネルギッシュな振付 ⑤激しく歌い踊りながら、ものすごくスムーズに、しかもものすごく頻繁にフォーメーションチェンジする ⑥小道具を使った煩雑でアクロバティックな演出も完璧 

というところですかね。もちろん、若さがなせる技という部分もありましょうが‥‥

そのすばらしさが、昨日のコンサートで初披露された「달려라 방탄(Run BTS)」に凝縮されてた。

しかしあのパフォーマンスについてどうしても語りたいのはそれだけではなく、彼らのレジリエンス(≒回復力)と基礎体力の高さに胸打たれたから。
まじで不死鳥かな? 

BTSの魅力は「オーセンティシティ」、つまり表現に嘘がないということだ。おえら方から与えられた楽曲でパフォーマンスするアイドルでも、マーケットの売れ線を狙うだけのプロダクトの生産者でもない。

彼らの根底には「自分の言葉で語る」というヒップホップのマインドがあるから、歌詞も、MCも、動画コンテンツや生配信も、基本的にすべて「真正性」をもっているのだ。

新しい曲を作るときは、いつもメンバー同士で、またスタッフや共同制作者たちと「今、何の話をしたいか」「何を伝えたいか」と話し合うことから始めるという。(※)

だから、逆にいえば、「心からの表現ができない」と思ったらBTSは終わるのだ。デビュー10年目、これまでにも「終わる」危機があったことをファンは知っている。
そして6月には「BTSを終わらせないためには立ち止まらなければいけない」と話した。1時間にわたる飲み会動画で、泣きながら。彼らは本当に正直なのだ。

そのときにRMは言った、

「ファンのみなさんは『Run BTS』のパフォーマンスを楽しみにしていると思う、しかもダンス付きのパフォーマンスを。でも、今はそれをするマインドではない。こんなマインドでやってはいけないと思う」

と(ざっくりと、大意ね)。

実際に6月のアルバムリリース時は、新曲3つの中で、この曲だけは一度も披露しなかったし、ほかの2曲もダンス(振付)のない曲としてパフォーマンスされた。

踊るマインドじゃなかったら踊らない。
彼らは本ッ当~に正直なのだ! 
「たくさん話し合って、こうすると決めたよね」と他のメンバーも話していた。

そして
それからまだ4か月しか経ってないのに、ゆうべ「Run BTS」は披露された。あんなにも完璧なダンスパフォーマンスで!

ねぇ‥‥
いったいどうやって気持ちを立て直したの?(笑)

いやほんと、どんな仕事だって、モチベーションがなければ良いパフォーマンスはできないですよね。
そして、高いモチベーションを保つのは大変。

どんなに好きな仕事でも、人は疲れるし、飽きるし、いろんな面で嫌な思い、しんどい思いをたくさんする。長くやっていれば悩みや迷いも出てくる。
いったん落ちたモチベーションを再び上げていく難しさを、多くの人が経験したことがあるだろう。

あれだけ憔悴して、泣かずに話せないくらい苦しんでたとこから、4か月でここまで復活するって‥‥。
気持ちがないと表現できない人たちなんだよ。特にRM。

きっといろんな要素と過程があったんだと思う。
実際、ゆうべの最後のMCではユンギ(SUGA)も「いろんな紆余曲折があった」と話していた。ファンに見える部分だけでもいろいろあったよね。

紆余曲折を経て気持ちをアゲていって、実際にすばらしいパフォーマンスをするレジリエンスを備えたチームなんだよね。
何度も躓き、落ち込んでは乗り越えてきた歴史がある。ゆうべのこの曲は、その新たな1ページが描き込まれたパフォーマンスだったなと思う。
ほんとにすごいチームだ。

*

で、もうひとつ。基礎体力のほう。

君ら、いつのまにそんなに練習したん??? って話よ(笑)

6月半ば、泣きながらの告白のあと、君たちは

ソロアルバムを発表してプロモーションに追われたり、ソロでアメリカのフェスに出演したり、ボーカル4人だけでベニー&スヌープとコラボしたり、ソロでパリコレに出演したり、ソロでスイスのアート・バーゼルの仕事したり、Crushヒョンとコラボしたり、日本でとんかつ食べて群馬まで行って奈良美智のミュージアムや村上隆を訪ねたり、さいたまスーパーアリーナでNBAの仕事したり、L.A.で謎の仕事(と3時間半のゲーム実況)をしたり、試写会に何度も出席したり、それぞれキャンプや料理やアクセサリー作りのVlogを録ったり、7人で集まった時はソウルで思い出の場所を巡るゲームをしたり、エアリアルヨガをしたりしてたよね??? 

この「Run BTS」の新作パフォーマンスを含む
2時間19曲のコンサートの完璧なセットリスト、いつのまに準備してたん?

BTSだけ1日54時間くらいあります???

いやそんなわけはなく、
短い準備で高いパフォーマンスを発揮できるだけの
個々の能力とチーム力をもっているんでしょうね。
すごい基礎体力だ。プロフェッショナルだ。

*

「Run BTS」は彼らの10年間を振り返るテーマ曲みたいなもので、
その最後を【 Beautiful 】という形容詞と共にしめくくるのがリーダーのRMなんだけど、とても抑えた表現なのがなんだかよかった。

もしかしたら、ダンスで疲労困憊してたのもあるかもしれないが。笑

そこまでの激しいパフォーマンスで、
「走るチーム」防弾少年団の美しさはすでに伝わっているのだ。

” 走れバンタン、走れ美しく ”

最後の最後、「Run!」という単語だけ万感の思いを込めて吠えると
これまで走ってきた紆余曲折の道のり、口さがない世間やヘイター、
そして
不確定な自分たちの未来までもを見据えるような
気魄にみちた強いまなざしでもって、曲は締められた。

公式から昨日のパフォーマンス動画がさっそく上がったので、7月に上げた拙筆のレビューと共にお楽しみいただければ^^

※全て英詞で娯楽性が前面に出た「Dynamite」や「Butter」がポップスターとして裾野を広げ名声を高めたのと裏腹に、長年のファンには疑問をもたれたのも、つまり「オーセンティックでないのでは?」ということなんですよね。私はあれらにはこれまでと別の切り口そして進んだフェーズとしてのオーセンティシティがあったと思ってるけど、そこで「それだけを続けてはいられない」と「Yet to Come」に舵を切ることができるのもまた、あまりにも彼ららしい実直さであり、だからバンタンは信頼と尊敬に値するチームなのです。

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