3/23 「推しの文化論」感想スペースの記録
3/23にスペースでおしゃべりした内容の備忘録です。
鳥羽和久さんの「「推し」の文化論」講座の感想を起点に、BTSや推し活についていろんなおしゃべりをしました! ご一緒した、はにさん、Azamiさん、そして聞いてもらったり感想をつぶやいたりしてくださったみなさんにも感謝の気持ちでいっぱいです。
ちなみに、こちらは講座を聞いた直後を中心につぶやいたこと‥‥
スペースは、1か月間つまり2022.4.23ごろまで録音が聞けるはずなので、興味のある方は以下のツイートに貼ったリンクから、タイムテーブルを参考にお聞きください。音声の状況が良くないのですが‥‥。
では、とても長いタイムテーブルと備忘録です😅
●6分45秒ごろ~
:鳥羽さん「「推し」の文化論」講座の紹介と今日のスペースをやるまでの話
●8分ごろ~
:今日の流れの予定ざっくり
●9分50秒ごろ~
:講座の感想いろいろ
・BTSの歌は彼らの物語と有機的につながっている
・その物語とは基本的に「弱い側を守るための戦いであり、強い者への抵抗」。BTSとARMYはその物語を共有
・「ARMY」という固有名をもったファンダム。一見閉じているようで、実はとてもオープン。いつでも誰でも履修(笑)できる
・成功して立ち位置が変わるにつれ、歌(メッセージ)が自然に変わっていく、そのストーリーをファン(ARMY)も一緒に見ている
●21分30秒ごろ~
:講座より「“推し活”は現代人にとって幸福感をみたす活動」
1.推しを通じて自分の内部とつながる、自分を知る
2.推しを通じて他者、社会、世界とつながる
●31分30秒ごろ~
:講座より「BTSはことさら政治にコミットしているというより、生きることは傷つくこと、傷があるところには政治があるんだ」と当たり前に思っているのでは?
『韓国の歴史と社会』
・罪のない多くの人々がおおぜい命を落とす、韓国はそういう歴史が多すぎた国
・今、韓国社会で要職についているのは1960年代生まれ
韓国では「386世代」と言われる
80年代に激しい民主化運動を経験した世代
捕まったり拷問を受けた人もたくさんいる
・その前の世代は祖国が南北に分断され戦争を経験
さらにその前は植民地の時代
つらい歴史が多い
●36分ごろ~
:韓国の「歴史をエンタメ化する力」
・BTSは、386世代の子どもたちにあたる世代
いわゆる「民主化キッズ」 民主化されてほどなく生まれた
・民主化キッズは「血塗られた時代」は知らないが、その残滓は身近に感じて育っているはず。暴力、性暴力、競争社会そして徴兵制
・BTS(防弾少年団)として最初にアップした動画はRMの「黙って投票」
・韓国の映画やドラマの暴力描写は概して激しい
→暴力を受ける側の悔しさや無力感への実感が強い社会
・韓国は今、自国のつらい歴史(特に民主化運動)をたくさんエンタメ化している
ex)「タクシー運転手」、「少年が来る」、「1987」‥‥
・エンタメ化できる = それだけ遠くなったということ
とはいえ、1980年代=当事者も遺族もまだ多くが生きているのに
生々しいエンタメをどんどん作るのは、
「歴史を忘れるな」「伝えていく使命感」のようなものがあるから?
・歴史を咀嚼する力、健全な批判ができる力
「パラサイト」でアカデミー四冠をとったポン・ジュノ監督のスピーチ
「いつも本音の感想をぶつけてくれる韓国の観客に感謝。おかげで満足せず前進し続けることができた」
●43分30秒ごろ~
:韓国人は言葉を惜しまない
・「責任」を引き受けることへの耐性
・韓国では「建前」「大義」が生きていて、一生懸命説明する
(自分こそが大義だ、という“大義の取り合い”の面も)
・基本的によくしゃべる。言葉を惜しまない。
(cf) 説明に力を割かない日本 ~ 国会等を見ていても「いかに説明せずに済ませるか」的な‥‥
・BTSの説明能力、説得力。BTSもよくしゃべる(笑)
・昨年9月の国連スピーチ。「政治利用されている」等の批判に対して、彼らはVライブ(おしゃべりの生配信)で説明
・「僕らはスピーカーの役割だったんです。色眼鏡で見なくていいですよ」
・スピーチの裏話、コラボしたアーティストに会った話、秋夕(韓国の伝統行事)の思い出など、ごはんを食べながら、靴下を脱ぎながら(笑)、リラックスして雑談をする中で、同じトーンで、付け加えのように鮮やかな説明
・BTSは記者会見も自分たちで受けこたえ。記者会見も見ごたえがある。
・RM「メタ認知が得意」 BTSはいつも自分たちの立ち位置や求められるものなどを的確に把握している感じ
●50分50秒ごろ~
『アイドル=メディア?説』
・アーティストは自分の思いを表現する
・アイドルは偶像
・特にBTSは「自分たちを媒体に自由に考えてね」という役割をある程度引き受けている。みんなの「こうあってほしい」という欲望が先にあって、それを容れる器
・といっても際限なく受け容れるのではなく、自分たちなりの編集方針がある感じ
・「Butter」も、ただ楽しいダンスチューンとして聴いてもいいし、アジアンヘイトへのプロテストでもいいし、いろんな受け止め方があってどちらでもOKよ、という作り
・キムナムジュンという考えて言語化できる力のある人がアイドルになったから、そんなふうになったのかな
●58分40秒ごろ~
: 大人になったBTS
・RM「ファンとの関係は平行線のような愛でありたい」
・平行線=決して交わらない。でも離れない。ずっと一緒に行く伴走者、みたいなイメージ?
・とても成熟した考え方。メンバーが徐々に30代に向かうグループらしい
・「成長につれ、変わっていくBTSの物語」。ファンによって「あのころの物語が好きだった」「今はちょっと」があるのは当然。一方で、人が年齢を重ねていくのも当然であり、変化していく彼らが好き
・しかも、お互いにいい影響を与え合って変わっていく様子は、なかなか見られるもんじゃない
・ただし、彼らは「見せている部分」と「見せない部分」を分けている。肌の露出も、衣装やパフォーマンスとして「魅せる」ものと、うっかり見えて「アーティスト保護」されたものがあるので。
・踏み込まれたくないところには踏み込まないように‥‥
●1時間11分30秒ごろ~
:「僕たちを利用して自分を愛してください」の解釈
・BTSとARMYの関係を象徴するようなメント(スピーチ)。心の支えにしているARMYも多いはず
・人間に対して「使う」「利用する」は、ふつう良い意味では使わない言葉なので、最初はギョッとした。これも、なにげにいろんな解釈ができるメッセージだと思う
・ある意味、自分たちが商品であることの自覚
・それでも、お互い利用し合って自己受容できるなら幸せじゃない?みたいな
・講座で触れられた「砂漠と海」の話にもつながるのでは。人間性すら商品にして資本主義のシステムの中でやっている産業だけど、ちょっとでも抵抗できることはしていこうよ、みたいな?
●1時間19分ごろ~
:「浪費」と「消費」の話
・講座の話、すごく面白かった! 「背筋ブレーカー」で高級ダウンを欲しがる若者は消費で、資本主義にとらわれた行為。。「GoGo」で持ち金を使い果たしちゃえ、というのは浪費で、人間らしい行為。
・BTSの場合、ある程度消費されてしまうのは前提だけど、「本当の意味での消費はさせないぞ」みたいな部分があるから、見ていて安心できる
・2021年夏weverseインタビューSUGA
「事務所がアーティストを商品としてしか見ないなら、クリエイティブな活動はできない。アーティストの意見をちゃんと聞くのがうちの事務所のいいところ」
・「ベプセ」 足の短いダルマエナガ側から歌われた歌
・講座でも言及があったが、成功したあと「あなたたちはもうベプセ(弱者)ではないのでは? ハングリーな人の気持ちを今でも表現できるか?」と質問されたRMとSUGAの返答がよい。本当にバランスが取れたふたり
・RM「自分たちをダルマエナガと呼ぶことには慎重になっている」(今の立ち位置を自覚)
・SUGA「でもそれは自分たちの始まりであり根本なんです」(変わらない意思)
・成功するにつれ立ち位置が変わる、そのことに葛藤する様子も率直に見せてくれる(全部じゃなくても)
・7人全員が、今でも「自分たちはベプセ側。セレブじゃない」と思っているのがバンタンの奇跡
●1時間32分ごろ~
・鳥羽さんが最初のほうで「歌詞の解釈が違うんじゃないか、と言ってくる人がいるけど、そういうのは違うんじゃないか」みたいなことを言ったのがとてもよかった
・曲をどう受け取るかは、アーティストとリスナーのコミュニケーション
・鳥羽さんの話を聞いていると、社会背景や実際の出来事などを参照したうえだったりして、すべてが「鳥羽さんの独自の解釈」ではなく、納得感がある
・それでも、「鳥羽さんの解釈がすべてというわけでもないんだ」とも思えて、あの最初の一言はよかった。
●1時間35分ごろ~ : 戦うBTS
・韓国のエンタメを見ていると、自分と社会の関係性を感じることができる。そして、エンパワメントしてくれる
・日本のエンタメは「私小説」的なものが好まれる?
・同じように社会のいろいろなところで要職についている50~60代でも、にっかんでは見てきたもの・体験してきたものが違う
・韓国は民主化を始め、大きな犠牲を払いながら成功体験を積み重ねてきた。「動けば変わる」という手ごたえ
・講座で「BTSは何と戦っているのか」というセクションが設けられるくらい、「抵抗」とか「戦う」のような歌詞が多い。防弾少年団という名前にもあらわれているが、抵抗・戦いが必要だという意思
・最近の「Butter」や「PTD」は人々や世の中の鬱屈を前提に「先に進もう」という歌。一見明るく楽しい歌でも、実際は戦っているのでは。BTSの「戦う」姿勢は変わっていないと感じる
●1時間48分ごろ~ : ルールとグレー
・昨年、違法ストリーミングでコンサートを見たらしいARMYの懺悔の投稿に、ジミンちゃんが「大丈夫です、愛してます」と優しいリプライ。ネットは賛否両論に
・お金を出して買う/見る というルールは必ずしも無謬でフェアなのか? 彼らはシルバースプーンやベプセを始め、生まれもった格差など資本主義社会のルール「当たり前」を疑問視してきた
・事務所の立場で「お金を払って見て」というのは当たり前。事務所には事務所の、アーティストにはアーティストの、ファンにはファンの立場がある。ひとりのファンの過ぎない自分が事務所に成り代わったり、ファン代表になったつもりでものを言わないでいいのでは?
・講座で「「誰も傷つけない優しい世界」なんてユートピアは、実はディストピアじゃないか?」という話があった。きれいな世界を求めすぎると見落とすものがありそう。
・公式がさだめたルールは前提として、ひとりひとりの「自分ルール」を。それは一度決めたら終わり(思考停止)じゃなくて、状況によってある程度揺らぐ、考え続けるもの
・講座で『Blue & Grey』の解説が。憂鬱な心情を歌っているけど、それだけじゃない複雑さを感じた
・「このグレーが僕には心地いい」「すべての埃に祝杯を」 グレーのままでもいいんだよ、と。白黒つけない成熟
●2時間4分ごろ~ : 「いい人になりたい」
・年長者が年少者や子どもに対して「やりたいこと全部やりな」とよく言っている。日本の子育ての場では、むしろ「そんなことしちゃダメでしょ」のほうをよく聞くのでとても新鮮だし、いい言葉だなと思う
・アイドルがてらいなく「いい人間になりたい」「みなさんが僕を良い人間に育ててくれた」と言う韓国。日本で若い芸能人がそういうことを言うと「マジメかw」「意識高いw」と冷笑されるのでは?
・韓国は成績も人間性も何もかも、「常に更新していくべき」という空気がある。それがプレッシャーになる部分もあるので、良くも悪くも。
・日本では、「本音は露悪的なもの」という感覚があるような。理想的な話、建前などを自分の言葉として言うときは最後に「知らんけど」を付けてごまかしたり、あいまいにしたり。自分でもクセのように言ってしまう。責任をもつのが怖いから?
・↑ 失敗が許されないからではないか? そんなに責めることじゃないのでは、と思うことがよくある
・建前や理想を言うことで、それが自分のものになっていく。最初は小さなことから発言して、小さな責任を持つ。責任を負う覚悟ってその繰り返し、積み重ねの中でしか育たないのでは。
・BTSが人気なのは、「いい人になりたい」とか、情熱、誠実、そういうものに心打たれる人が世界中にいるということだろう。
・「稼ぐのが正義」みたいな資本主義社会でもっとも成功している一例が「誠実なBTS」。矛盾しているようで、必然なようで。資本主義社会では人間性も誠実さも、愛すら商品になるから‥‥。
・いろんな矛盾やぐじゃぐじゃしたものをすべて認識しつつ、「それでも最善を尽くす」「戦い続ける」と引き受けているのがBTS。ARMYはその伴走者。でも彼らに背負わせすぎるのも良くないと思う
・BTSのベースはヒップホップ。ヒップホップにはベースに批評精神、抵抗精神がある
・「生きること自体が戦い」という側面。出自も文化も性格も違う他人同士が交われば、必ず何かしらの摩擦がある。たとえ資本主義じゃなくても、それが社会というものの本質。
・彼らはARMYひとりひとりに仕事や勉強があり生活がある、つまり一人一人に戦いがあるのをわかってる、だから戦い続けるというのもあるのでは。BTSの背後にはARMYがいる、でもARMYの背後にもBTSがいる。ARMYじゃなくても、「抗う人」「戦う人」の伴走者がBTS。
・常に「抗う側」のほうにいる。防弾少年団! あらためて、すごい名前。
●2時間32分ごろ~: 最後に
・アミになってよかった。彼らからも、アミからもたくさんのものをもらっている。彼らは一人の人間で、神ではないしモノでもない。崇めたり消費したりはしたくない。
・グッズは買うけど。QOLが上がるから。あれは消費じゃなくて浪費(笑)。
・彼らには幸せでいてほしい。幸せになってほしい。行く末を見守りたいので長生きしなきゃ。最後はそれ(笑)
◆
BTSって、歌詞はもちろん、雑談からスピーチに至るまでとても豊かな言葉をもった人たち。ARMYもそれに触発されて、本当にいろんなことをたくさんお話・発言されていますよね。
バンタンにもアミのみなさんにも刺激されてます。これからもいろいろ話していきたいです^^ ありがとうございました!
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