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スニーカーブームを終わらせたのは誰か?犯人は・・・お前だ!!


「皆さん、本日はお忙しい中お集まり頂きありがとうございます。」私は激しい怒りを抑えつつ出来るだけ丁寧に挨拶から入った。

「スニーカーブームを終わらせた犯人が分かったからここに来てくれと言われてこんな2時間サスペンスドラマの解決編のような崖に来たけど、本当にスニーカーブームを終わらせた犯人が誰か分かってんのかよ?そもそも犯人なんていんのか?ブームなんていつかは終わるもんだろよ」と開口一番、口を開いたのは・・・
「あ、忘れてたわ、ども紺野と申します!」
「うぇ~~~いっす」
「えー、本日はスニーカーブームを終わらせた犯人が誰かを教えてくれるという事でこちら、崖に来ております。」と実況してくれているスニーカーユーチューバーの紺野と腹口の二人と、
「いゃ、だけど変な話ぃ、2時間サスペンスってぇ、2時間で終わるよねぇ」と訳の分からない事を言っているのはナイキから日本で最重要スニーカーブティックと認定されたトップアカウントショップであるアットモスの元社長、本妙である。

「では全員集まったので始めたいと思います。何故スニーカーブームは終わったのか?そして誰が終わらせたのか?」

「いや、だけど、変な話ぃ、呼ばれてるのは3人だけど、スニーカーユーチューバー1組と僕って、実質どっちかじゃん」

私は本妙を無視して続けることにした。

「まず、スニーカーブームとは何だったのか?スニーカーに特別興味のない人にはこれが分からないと思います。実際、入手しづらいと言われても普通にどこの店頭にもスニーカーはナイキだろうとアディダスだろうとたくさん置いてあります。つまりブームになっていたのは一部の限定スニーカーなのです。」
「ま、それはそうだな。町の量販店の靴屋にはナイキのスニーカーは置いていてもオレらが欲しいスニーカーは取り扱ってないもんな。」
「うぇ~~い」
スニーカーユーチューバーの二人はこの説明に納得してくれたようだ。
「変な話ぃ、ナイキわぁ、ナイキが認めたトップアカウントの店じゃないとぉ、人気のスニーカーわぁ、卸してくんないのよ」と本妙が説明してくれた。

「本妙さん、補足して頂きありがとうございます。そして、そんな限定スニーカーの店頭やオンラインでの抽選の様子や当選確率を動画にするのが一般的なスニーカーユーチューバーです。」

「それの何が悪いんだよ?オレらは人気スニーカーの取り扱いのない地方に住んでいる人達に、実際に抽選を受けるために店頭に並んだりしている東京のリアルなスニーカーシーンを届けてんだよ」
「それがフィギュア等ならそれでいいと思います。が、これはスニーカーです。スニーカーはファッションの一部です。スニーカーだけを履いて裸で町に出ることはできないのです。服を着用して初めて人前に出られるのです。」
「当たり前だろ、そんなこと、わかってるよ、オレ達だって。」
「いや、分かっていないです。では一旦ここで話を変えましょう。ユニクロは相も変わらず人気ですよね?ファッションに興味のない人からファッションに興味のある人にまで。」
「いゃ、だけど、変な話ぃ、ナイキわぁ、ナイキが認めたトップアカウントの店じゃないとぉ、人気のスニーカーは卸してくんないのよ」
何故本妙は変えたはずの話を元に戻した上にさっき言った事と同じ事を言うのだろう?きっと、私がさっき「補足して頂きありがとうございます。」と礼を言われたことに気分を良くしたから、もう一度気分が良くなりたかったのだろう。
「ファッションユーチューバーの動画で再生数が良いのはハイブランドよりユニクロなのはご存知ですか?」私は本妙を無視して続けた。
「知らねーけど、それがどうしたんだよ?」
「つまりファッションユーチューバーが再生数を上げるにはユニクロを使って動画を撮る必要があるのです。そこであの人達はユニクロでオシャレな人でも買う価値のある物を紹介し、着こなしまで提案しています。ブランド物でなくとも安いユニクロでオシャレになれる方法を。」
「いや、だけど、変な話ぃ、ブランドってぇ、高いよねぇ」本妙がじっと私の顔を見て何か言って欲しそうにしている・・・。無視。
「ファッションユーチューバーのやっている事をスニーカーユーチューバーに置き換えると、ファッションユーチューバーはユニクロの限定コラボ商品を朝早くから並んで、並びの人数や店内の様子を伝えて、買えた商品を単体で紹介するだけになります。しかし、実際にファッションユーチューバーが動画にするのはそのコラボ商品をどう着こなせばオシャレではない人でもオシャレになれるかを実際に着用してコーデを見せています。そう、あなた方スニーカーユーチューバーは限定スニーカーだけをフィギュアのように紹介するだけで、どのようにコーディネートするかが欠けていたのです。」
「いや、だけど、変な話ぃ、・・」ガン無視。
「しかも、ファッションユーチューバーは限定コラボ商品だけでなくむしろ普通に店頭に並んでいる商品の方を選んで提案しているので、見ている人達は、自分の住んでいる町にあるユニクロのいつでも買える商品で簡単にファッションユーチューバーの提案を実践できるのです。ユニクロの人気が落ちないのも当然です。」と、本妙のセリフを途中で遮って続けた。
「ハッキリ言いましょう。スニーカー界隈の人達はダサいです。レアなスニーカーさえ履けばいいと思っているのでしょう。それでは見ている人達はマネしたくなりません。腹口さん何ですか、その服装は?ダボダボのバンドTシャツによれよれのパンツ。ダボダボとオーバーサイズは違いますよ。そもそもあなた、オシャレだと言われたことはありますか?スニーカーにそこまでお金や労力をかけてもオシャレだと言われないのは悲しくありませんか?」私は怒りが抑えきれなくなってきた。
「いや、それは、その・・・」
「何でお前に、そこまで言われなきゃなんねーのよ?そもそもオシャレなんて人の価値観だろうよ」紺野が、口ごもっている腹口に代わり私に噛みついてきた。
「知ってますか?[スニーカー好きは何故服装がダサいのか?]って言われてたり、そんな動画があったりするのを。多くの人がそう思っているんですよ。」
「だからオレ達はオシャレになるためにスニーカー履いてるんじゃねーから」
「でもスニーカーを発信しているユーチューバーとしてはスニーカーが人気な方が良くないですか?」
「そりゃそうだよ」
「あなたがイチ消費者としてスニーカーを買ってダサく履くのは好きにしたらいいと思いますが、発信者なら別です。動画を見ている人がマネしたくなるような服装をすればスニーカーを好きな人が増えるのではないですか?」
「オレらは別にオシャレじゃなく、ただのスニーカー好きだから、マネされるような提案なんかできねーんだよ!」
「それならファッションユーチューバーの人とコラボして限定スニーカーをカッコよくコーデしてもらうとか出来るじゃないですか?そもそもスニーカーユーチューバーの人ってファッションユーチューバーの人と違ってコラボ動画がほぼないですよね?そういう閉鎖的な所がスニーカー好きにはありますね」
「てことは、スニーカーブームを終わらせた犯人はオレ達スニーカーユーチューバーって事なのか・・・?」
「そうです、人気スニーカーだけをフィーチャーした閉鎖的な発信の結果です。ファッションユーチューバーがユニクロでやっているように、町の量販店のスニーカーショップに置いてある普通のナイキのスニーカーから、これはイイと思えるモノを紹介して、カッコよいコーデの提案等ファッションユーチューバーとコラボしたりしていれば結果は違っていたのかもしれません。」
「じゃオレ達のやってた事ってなんだったんだよ・・・」腹口がその場にへたりこんでしまった。
「いゃ、だけど、変な話ぃ、」
「変なのはあなたです、本妙さん。あなたは自分のスニーカーショップをアメリカの大手のスニーカーショップに多額の金額で売却した後、何をしているのですか?スニーカーブームが終わった終わったと言うだけで、どうすればまたスニーカーが盛り上がるか建設的な事は何もしていないじゃないですか?」私の抑えきれない怒りの矛先が本妙にも向き始めた。
「いゃ、だけど、変な話ぃ、僕ぅ、売却先の会社から一定の期間、スニーカーに携われない契約になってんのよ」
「それはスニーカービジネスとしてでしょ?ビジネスでなくイチ消費者として提案することはできるでしょう?少なくとも、終わった終わったと騒ぐことはしなくてもいいのではないですか?。それに社長時代に人気スニーカーをスニーカーユーチューバーに横流しして批判されたりもしてましたよね?ユニクロが限定コラボ商品をファッションユーチューバーに配ったなどと聞いたことがありますか?そういう事をされると一般のお客さんは冷めちゃうんですよ。」
「変な話ぃ、じゃぁ、僕も・・?」
「そうです。全員犯人です。アガサ・クリスティのオリエント急行殺人事件パターンです。」

ウーウーウー。パトカーのサイレンが聞こえてきた。

「警察です、逮捕します。」

私の手に手錠がかけられた。

「どうして私が?」

「脱税容疑です。」

「脱税?」

「転売で得た利益の税金が納められていません。」

「は?何だコイツ?スニーカーブームを終わらせたのはオレ達だと、犯罪を犯したわけでもないのに叩いてきたのは自分が転売で儲けれなくなったからじゃねぇか。正体は名探偵気取りのただの転売ヤーかよ」

「いゃ、だけど、変な話ぃ、」

「確かに変な話だったよ」









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