「一つの中国」の原則

「一つの中国」とは 米中で認識異なる
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM036XG0T00C22A8000000/

中国共産党は、太平洋戦争当時に日本が掲げていた「八紘一宇」のスローガンを覚えているのだろうか。(直接的には、中華人民共和国や共産党ではなく、中華民国の方が関係していそうだけれども。)
この表現の歴史は2000年近く昔に遡りそうだが、第二次世界大戦で日本の大本営は、これを「侵略を正当化するスローガン」のように使った、と私は理解している。

いうまでもなく、極東の近隣諸国や東南アジア諸国、大洋州諸国の「承諾」だの「同意」などを取り付けたものではなく、大日本帝国政府が(?軍部だけ?)スローガンとして掲げ、当時の日本人を鼓舞するのに使われた言葉だった。

中国は、「軍事演習」というシミュレーションに踏みとどまることで、かろうじて第三次世界大戦を回避している、ということになるんだろうか。
ただ、思い出して欲しいのは、やはり「八紘一宇」を日本以外の国々が「受け入れて来たか」という点だと思う。

「一つの中国の原則」は中国共産党が拘泥しているが、相手方の台湾に受け入れられているものなんだろうか。

誰が言ったのか知らないが、韓国で「自分がやればロマンス、他人がやれば不倫」というフレーズがあって、個人的には結構これは受けた。

やはり思うのは、「自国がやれば解放、他国がやれば侵略」という置き換え。念のために申し添えれば、戦後生まれの私としては「八紘一宇」は戦争遂行のためのスローガンに過ぎない、と認識しているが、太平洋戦争当時の日本の軍部にとっては、戦争の目的が「解放」であることを示す「正当な根拠」として扱われていたと思う。
あえて論争はしないけれども、今現在も「大東亜戦争は、アジア解放の戦いだった」と主張する方々は、日本に存在する。個人的には「一面真理」ではある以上、完全な誤りだとは言えないとは思うが、大局的に見て、特に周辺国の立場から、理解を得るのは難しい側面の方が多い、と考える。

私個人の認識としては、「一つの中国」の原則は、やはり「八紘一宇」と重なってしまう。実現のための手段として軍事力を行使する(大本営、特に陸軍幹部は、軍事行動を起こしたかった)という点も、(当時私は生まれていなかったけれど、)デジャビュのような感覚に陥ってしまう。

アメリカが、ペロシ下院議長の訪台で旗幟鮮明にしたことは、地域のリスクを高めたんだろうか?

第三次世界大戦がどういう形で進行するのか顕在化させた上で、双方「寸止め」で、論点を明らかにした形になっている気がする。

私には、確かにアメリカが主張するように「民主主義推進勢力」と「専制国家群」との対立構造、のように見えている。アメリカによる「演出」だけなんだろうか?
中国が言うように「リスクを高めた」のではなく、「リスクを顕在化させた」だけのように思える。

案外「民主主義」は脆弱ですからね。いざ「戦争」となると、最初はともかく徐々に「反戦」気運が高まり、どこの国の政府も「戦争遂行」には及び腰になる、というのは、対ウクライナ支援ではっきりと見えて来た気がする。今のままだとプーチンの思う壺だという指摘も当たっている気がする。
「民主主義」が「厭戦的」であるのは、ある意味で健全なのだろうと思うが、「自分たち」が直接的な「危機」に晒された時に、現在のウクライナのように団結できるのか、「民主主義推進勢力」が連帯できるのか、そこが最大の問題なのかも知れない。

ただ、はっきりしていることが一つあると思う。
ロシアによるウクライナ侵攻で、エネルギー危機、食糧危機が世界に訪れた。最初は価格高騰、次は奪い合いと飢餓。経済基盤の弱い国では、飢餓の発生が懸念されている。現在どうなのかについては、よくわからない。特に調べてもいない。

中国による台湾侵攻が実際に起きて、日本や韓国も巻き込んで、文字通り第三次世界大戦に突入したとすると、おそらく「半導体供給」がかなり危うくなると思える。
全世界で、「半導体素子を利用している産業」がダメージを受ける。もしかしたら、あらゆる産業分野を直撃するような気がする。直接的な戦闘行動に巻き込まれない国々でも、無論、中国やロシアも含めて「激震」とも言えるような不況に見舞われる、気がする。
どこの国も、表向きの「戦争」だけではなく、この「大不況」を政権が乗り越えられるか、それぞれの国内での闘争も激化するに違いない。

それにしても、プーチンのロシアにしても、中国にしても、どちらも「国内向けのプロパガンダ」が「動機」だったのだろうけれども、だからこそ、どうにも自力では下すことのできない「旗印」を掲げてしまって、周辺国がどれほど大変な状況に陥っても、最後までどちらも「ウクライナ併合」だの「台湾併合」だのの旗印を下すことはないんだろうな、と思える。厄介な隣人。

私個人の意見としては、今の段階でアメリカが「旗幟鮮明」にしてくれたことは、やはり、歓迎すべき判断だったような気がする。

それにしても、どうなることやら。

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