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最後の最後で、どんでん返し。

2020/10/7 読書記録no.8『ストーリー・セラー』有川浩

私は、有川浩さんの作品がとても大好きです。
シンプルに読みやすくて、
シンプルに物語が面白くて、
シンプルに「有川浩」という世界観にハマってしまうんです。

今日は、数多くある大好きな作品の中で、
特にお気に入りの1冊をご紹介いたします。


裏表紙のあらすじ。

妻の病名は、致死性脳劣化症候群。複雑な思考をすればするほど
脳が劣化し、やがて死に至る不治の病。
生きたければ、作家という仕事を辞めるしかない。
医師に宣告された夫は妻に言った。
「どんなにひどいことになっても俺がいる。だから家に帰ろう。」
妻は作家を書かない人生を選べるのか。
極限に追い詰められた夫婦を描く、心震えるストーリー。


読み終えて思ったこと。

読み終えてすぐ思ったこと、
それは、小説好きの気持ちを代弁してくれてありがとうという
感謝に近い思いを抱きました。

この小説には、
小説を「書く側」の妻と、小説を「読む側」の夫が登場します。
本編で、小説を「読む側」の夫が妻に向かって、
「小説を書きたいと思っても書けない」というシーンがあるんですが、
この言葉には激しく頷きましたね。
私自身、好きだから書きたいと思っても、
中々ペンが進まなかった記憶があります。

有川浩さんは、「書く側」の人のはずなのに、
「読む側」の人の気持ちも分かるとは、読んでいて本当に驚きました。

そして、私が思うにこの作品は、
有川さんが読者に向けて、
「ありがとう」の想いが込められているのじゃないかと思いました。
”読んでくれる人がいるから、私がいる”
そんなセリフを見たときにそう感じたんです。


そして、本作品は2つの目線から描かれています。
1つ目は、作家が不治の病になる物語。
2つ目は、作家の夫が病気になる物語。

運命の切なさ、仕事への葛藤、
相手を思いやる気持ち、病への不安、
やりたいことを続けることで悪い方向になってしまう苦しさ、
愛の温かさで胸がいっぱいになっているところに、
最後の2ページで「え?!?!」となりました。

クライマックスのどんでん返しには、本当に驚きました。
どうか、逆夢になってほしいと願うばかりです。

どこまでがリアルで、どこまでがリアルじゃないのか、
その境界線は何回読んでも未だに曇ったままですが、
「人が人を大切に思う気持ち」を純粋に書いた作品であると思います。


心に残った言葉。

P68 生活的にはお互いの1人暮らしが繕り合わさるだけ。生活上の労力が楽になるとは考えない。結婚の最大のメリットは、精神的に支え合える相手が常にそばにいることだ。
P72 君はドアを開いて、世界に出ていける人なんだ。
P73 君は翼を持ってるよ。俺は君が飛んでいるところを見てみたい。飛べても飛べなくても、君は何も無くさない。俺は一生君のファンだ。
P126 痛覚という生きるためのセンサーを失う代わりの安楽を。
そして、その安楽を引き換えの植物状態を。
家族ではないものがどうこう言える問題ではない。
P205 波の洗った後は何も残らない。
洗われた浜をヨタヨタ歩き、ポツポツと、情婦の残骸を拾い歩く。


小説なのに、作り物の世界のはずなのに、
何が本当で、何が本当じゃないのか、
もう分からなくなるくらい、描写がリアルなお話でした。

数多くの刺さる言葉がありますが、
「僕は君に会う前から、君が別格だったよ」
このセリフには痺れましたね。

「書けない側」の私からすると、
この表現力は、喉から手が出るほど羨ましすぎます。笑

そして、「どこまで本当だったと思います?」と、
最後の笑って戯けたチャーミングさがすごく心地よかったです。


きっと、これからも、この本は読み返したくなる。
そんな1冊です。


おりょう☺︎





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