K-POPやYOASOBIに見る音楽バリュー・チェーンの変化

23年の紅白で改めて感じたが、やはりK-POPアイドルは見入ってしまうしYOASOBIのアイドルも良かった。アイドルは間違いなく23年度で最も流行った曲だろう。

一方で日本のアイドルは少し苦しくなってきた気がする。というのも従来K-POPは日本人女性の需要を中心に捉えてきたが、特に直近は男性需要も捉えている気がする。NewJeansおじさんなんて言葉もあるくらいである。実際彼女たちの方がセクシーだし歌もダンスも面白いしですし。

コンサル的に言うならば、明らかにK-POPの方が競争優位性が高いのである。
主にジャニーズ(男性)、AKB48始めとした各種アイドル(女性)を念頭に比較してみたいと思う。

視点としては、価値自体の大きさ(Products)と価値を享受する手間の少なさ(Place)という2つに絞りたいと思う。基本的にビジネスモデルは同じだという前提とし、マーケティング的なPriceとPromotionはさほど変わらないと仮定した上である。
※ちなみにK-POPはグローバルマーケット狙ってるという話は今回触れません。あくまで日本市場での対比です。

価値自体の大きさ(Products)について
日本の場合は、男女ともに(中心メンバーの)顔の良さと楽曲自体の良さ/親しみやすさである。
前者は白石麻衣、大島優子や(是々非々あるが)前田敦子やキムタクから始まり、山田涼介、目黒蓮などが代表例である。近年乃木坂がAKB48を押してるが、正直明らかに顔のレベルが逆転している。まぁこれはかつて(ポニーテール〜くらい)のレベルが相当に高かったというのはあるが。また女性は特に整形や化粧の普及により秋元康グループ以外でもチラホラ人気のあるグループも出てきている。
後者は恋するフォーチュンクッキーを代表とするもので、かつてのAKB48やSMAP嵐といったアーティストの歌は特にアイドルに興味がなくても知る人は多かっただろう。

これらの価値を訴求する戦い方は、弱点があると考えられる。一人の(顔が良い)メンバーの脱退や外グループへの加入により競争環境が変わりやすいこと、またヒット曲を当て続ける必要があることである。つまり個人に依存する面が大きいのである。

これにうまく対応したのがK-POPだなと思った。

まずK-POPは顔のビジュアルだけでは戦わず、スタイルの良さ、ダンスの上手さ、歌との調和性で勝負している。実際日本とは10センチ近く身長も異なり、またレッスンや体型管理への事務所関与も強いという。端的に言うと顔が可愛い女の子が口パクでバラバラなダンスを踊ることが多い日本アイドルとは異なるのである。(否定しているわけではないが、前述の通り日本にいる顔が可愛いメンバーをどう調達するかに依存するのである。ちなみに全盛期AKB48は私も大好き)
一方で韓国は(あえて極端にいうと)顔は尖ってなくてよいが、そこそこスタイルが良い男女を鍛え上げる(必要なら整形や化粧含め)ことで、K-POP的な高い価値を持つグループを量産できるのである。これはPlace側にも影響があるが、後述する。
また作曲面では、これは有名な話ではあるが、K-POPでは作詞作曲は欧米を始めとしたグローバル分業を行っており、韓国側の事務所はミュージック・ビデオなどの制作やプロモーションに特化している(らしい)。要するに日本の場合は秋元康さんが考えたコンセプトを元に秋元康さんが作詞をし、秋元康さんのグループに供給続けている(作曲とMVは流石に他の人と思われる)垂直統合モデルなのに対し、韓国は各バリューチェーンで最も良いものを調達し続ける水平分業的な仕組みが確立しているのである。
ちなみに、K-POPはグローバルに作詞作曲ネットワークを広げることで、ヒット曲を継続的に獲得しているが、YOASOBIは小説をコンセプトとすることで、作詞(作曲)のネタを絶やさないようにしているらしい。これもある意味バリューチェーンの変化であろう。宇多田ヒカルみたいな超天才ならコンセプト作りから作詞作曲から歌うところまで全部できるが、並の天才(これでも十分すごいことだが)は明らかに途中で歌が似通ってきたり飽きられたりするだろう。

また価値を享受する手間の少なさ(Place)は端的に言うと、グループ数と思われる。日本は現在なら乃木坂、SnowManのように人気アイドルが集中しているように思われる。これは結果としてライブやトーク会などの頻度に影響すると思われる。またこれはジャニーズのみ該当するが、男性日本人アイドル≒ジャニーズに該当するので申し上げるが、ストリーミングで聞けるコンテンツが少なさ過ぎる。これは現代結構致命的だと思っている。YouTubeだと広告ジャマなんだよなーと(ジャニーズのためにはプレミアムにはしないかなぁ。SpotifyのほうがUX良いし)。

というわけでYOASOBIの話は少なめでしたが、紅白を見て感じたことをまとめてました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?