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好きな曲

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ボカロ曲が多いです。
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#好きな曲

平井大『Stand by me, Stand by you.』鑑賞

たくみな人称の切り替えによって、甘さを中和するかと思いきや、むしろ増強してしまう激甘ラブソング。 A-Bメロでは「ボク」の視点から「キミ」との仲むつまじい日々が描かれる。 サビに飛ぼう。 サビでは「75億分の一人(ボク)」と「(75億分の)一人(キミ)」の物語が、三人称の視点から語られる。カメラをぐっと引き、世界全体を視野に収めるのだ。 「ありきたりな」「当たり前のように」と一見ドライに突き放す言い方をするが、「キス」等の甘さを踏まえると「世界の中ではありきたりな恋で

Omoinotake『幾億光年』鑑賞

Omoinotakeのヒット曲『幾億光年』について、「光」「声」「時間」「距離」等に着目して鑑賞していきます。 やわらかな歌い出しですが、相手への思慕や、それにもかかわらず声も聴かせてもらえない(電話もできない?)隔絶が提示されます。 思い出への執着が、具体的で身近な描写から伝わってきます。 一緒に暮らしていたのでしょうか、親密な関係だったことが窺えます。 歌詞の随所に「音」や「声」の表現が出てきます。 一緒に過ごしている間は思い出が更新されていきますが、離別の後は

新しい世界に出会うアニソン6選

魅力的なヒロインとの邂逅、好敵手とのバトル、幼馴染の変化……様々なきっかけで新しい世界や自分に出会えるようなアニメソングを紹介します。 SOUVENIR /BUMP OF CHICKEN TVアニメ『SPY×FAMILY』第2クールOP主題歌。同作品には「スパイ活劇」と「ホームドラマ」の両面があり、これらがOPとEDに振り分けられているように思われます。それでいうとホームドラマ寄りの曲です。 「通り過ぎるばっかの毎日」も、帰る場所があるとワクワクして過ごせる……温かな出

tuki.『一輪花』 クリアな比喩で離別を歌う。愛が雨(哀しみ)に変わり、風(弱さ)に揺れても「凛と立つ」一輪の(孤独な)花(主人公)。サビのaとiの韻には明るさがある。 「咲き続けるために」変わっていくという歌詞は、細胞が恒常性維持にエネルギーを要することも連想させる。

Saucy Dog『シーグラス』 別れる二人が最後に思い出の海にやってきた。幸せな記憶と悲しい現在が溶けあう。断片的で映像的な文体は、回想をそのまま言葉にしたかのようだ。 記憶も波に洗われたのか、終始「君」は美しく描写される。特に波止めの上で羽ばたいてみせるシーンが鮮やかだ。

hirihiri & lilbesh ramko feat.IA『残響ディスタンス』 電子音をおしゃれに使ったボカロ曲。人の声の入る部分もあり、ボカロの機械らしさが際立つ。 意味の不明瞭な歌詞の中で「君」への思慕だけが鮮明に立ち現れる。ロボットが不器用に人を愛するかのようだ。

TOMOO『Super Ball』 丸くて幼くてカラフルな心(スーパーボール)を隠し持って、四角く刺々しい社会(ビル等)を生きる美学を歌う。「そのままでいい(うつむいたまま・丸いまま)」と「強くあれ(踊って・つらぬいて)」を両立させる。 転がりだす、歩くなど動詞が効果的だ。

Orangestar feat.IA『八十八鍵の宇宙』 "中心" に対象物を置いて "周囲" から眺めるとき、全ての面を一度に見られないことは分かりやすい。一方この曲は "周囲" の88の星座を "中心" の地球から一度に見られないことに言及し、人の多面性について語っている。

UNISON SQUARE GARDEN『8月、昼中の流れ星と飛行機雲』 君との「平行線」状態を解消するために「ねじれたって近づきたい」と願う、両想い目前の夏曲。 「引力」「距離」「公式」等、理数用語というほどではないが物理・数学をほんのり匂わせる言葉が散りばめられている。

れるりり feat. 鳴花ヒメ&ミコト『スペシャルガール』 情報量の緩急が巧い。 A~Bメロでは場面設定やストーリー(不思議ちゃん、クラスメートへの片思い、宇宙への憧憬など)を丁寧に示す。 サビでは恋の高揚感を短いフレーズで言い募り、メロディーの中毒性を増幅させている。

aiko『アンドロメダ』 宇宙性と身体性を共存させる世界観が冒頭(遠くの星と肩の埃を並列する)で明確になる。いっぽう失恋が判明するのはサビ以降であり、情報の順序が巧い。 比喩的な視力のテーマが全体を貫く。 サビの「交差点」の頭上に銀河(歌詞に直接は出てこない)が見えそうだ。

ジグ feat. 初音ミク『ストレルカ』 ソ連の宇宙犬であるベルカとストレルカを踏まえている。曲名はストレルカだが、歌詞にはベルカのみが出てくる。 強い絆(因縁?)に結ばれた二人は「あの星で生きていく」ことを夢みてきた。それがついに…。どこか危ういけれど、軽やかなラブソング。

平井堅『太陽』 具体的な単語を排し、神話的な世界観を築く。 「この鎖がいつか解けたら」で作中主体が鎖に繋がれた状態が示唆され、続く「大空を羽撃けたなら」で神話性が増幅される。 あなた(太陽)を慕い、危険も顧みず「雲間を抜け」て飛んでいこうとする姿はイカロスも想起させる。

蝶々P feat. GUMI『心做し』 愛されなくて苦しむ恋歌は多いが、これは愛されて苦しむ恋歌だ。 人の心をもたない「僕」が無条件の愛に触れて狼狽する。機械人間(←比喩にせよ実景にせよ)と人間の愛の物語だが、歌詞は物語調ではなく、「僕」から「君」への語りかけのみで進む。