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Nothing - The Great Dismal (2020)

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総評 : 8/10


2ndの頃は「二度と戻れないあの日の青空」的な蒼い耽美さが全開で魅力的だったが、本作はむしろ完成度の高さが際立つ仕上がり。過度の感情移入(陶酔や恍惚)を拒む機能主義的シューゲイザー。そんなイメージの湧く作品。音質もこれまでの3作とは異なり、すっきり整理された分離の良さがある。これは前作後にギタリストが変わったことによるかもしれない。


01 A Fabrictated Life
陰鬱なトーンで始まるが、03:40以降はギターの残響の中で神々しいメロディが鳴り響く。いきなり宗教的、いきなりラストトラックのような長尺の一曲目。

02 Say Less
先行シングル。金属的なリズムと終始背景で歪み続ける洗練されたフィードバックノイズを聴き、一段上のステージに行ったことを確信したリスナーも多いでしょう。とにかく完成度の高い傑作。

03 April Ha Ha
MBV "Only Shallow"のようなイントロから始まる、スケールの大きな曲。Amusement Parks On Fireの名作『Road Eyes』を思い出させる、明るくて、それゆえ切ない、轟音。

04 Catch A Fade
ここまでの3曲とは異なりボーカルを前面を出した、ギターポップと言いたくなるような曲。とにかく完成度高く、淡々と進行していく。

05 Famine Asylum
The Smashing Pumpkinsのようなギターサウンドを聴かせる。サビでは、そのバンドではもう聴けなくなった、切なく美しいメロディを存分に聴かせる。とにかく完成度(再現度)が高い。

06 Bernie Thunders
先行シングルその2。ギターノイズを使った楽しい一曲。聴いていても強い感情が一切感じられない。歌詞を見ても、「渋谷のバーが楽しかった」くらいで、大したことは言ってない。アルバムの雰囲気から浮いている謎曲。

07 In Blueberry Memories
前曲から気を取り直し、再びヘヴィ&ノイジーなシューゲイザー。質実剛健、そんな一曲。

08 Blue Mecca
前半はクリーントーンギターリヴァーヴの海で漂う。中盤からはヘヴィギターノイズに雁字搦め。シューゲイザーのギター美を一曲で楽しめる佳曲。"Yesterday is a long way down..."と遠い目をして歌うのも、曲調にぴったり合っている。

09 Just A Story
05や07と同じく、堅牢なバンドサウンドの上で切ないボーカルメロディを楽しめる曲。シューゲイザーとグランジのちょうど中間あたり。

10 Ask The Rust
ラストだからと気負いすぎることはなく。これまたThe Smashing Pumpkinsや、『Gore』でのDeftonesのようなオルタナギターサウンド。ただ天から降るようなリードギターの存在がこの曲を特別なものにしている。

※Bandcampはハイレゾでした。

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