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Black Foxxes - Reiði (2018)

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総評: 9/10


やっぱりこのバンドはいい。4月にレビューした『Black Foxxes』(2020年)は何度聴いても傑作なのでその前作の本作も聴き返しているが、負けず劣らず素晴らしい。というか本作の方が良い。とにかくエモーションが強い。

凍て付く冬の時期のThe Smashing Pumpkins。最も研ぎ澄まされていた時期のPlacebo。世界が止まって見えた頃のMew。激情たぎらせ全てを掴もうとしていた頃のMuse。それらと重なる場面がある。90年代末から00年代初頭の"あの"雰囲気。

本作の制作に先立ち、ボーカルのMark Holleyはアイスランドを旅したそうだ。彼のメンタルイルネスは最悪の状態だったようだが、彼の地の大自然に触れることである程度、快方に向かい、曲のアイデアも泉のように湧いてきたという。本作からは、そんなアイスランドの火山や氷河のような生命力を感じることができる。

アルバムタイトルのReiðiとは、怒りを意味するアイスランド語だ。一方、曲名のSælaは至福を意味する。歌詞が抽象的なので内容の理解は難しいが、前作『I'm Not Well』が単調であったという反省から、人生の光と闇、そして一人の人間の希望と苦悩を一枚の中で描いた、深みのあるアルバムにしようという思いで制作にあたったそうだ。

そのせいか、バランスが絶妙だ。1で早速メランコリックな叫びを聴かせた後に、爽快に泣かせる名曲2,3が来る。全てを薙ぎ倒すラウドな6の後にはサラッとした7だ。また一曲の中でもディストーションと静寂のスイッチをかなり大胆に切り替える。このバランス感覚、トータルアート感覚により、まんまと作品に引き込まれてしまうのである。

“You’re not the same band you were three years ago, so why recycle old sounds? That’s why I have a problem with pop-punk." と語っているように、このバンドが今後どのような進化を辿っていくか、とても楽しみだ。願わくば、実力にふさわしい人気が出てほしい。こういうバンドを応援しなければロックファンとして失格だろう、という暴言まで吐きたくなる。


2,3はかなりの名曲。コード進行とメロディだけで無限の広がりを見せるオーセンティックな名曲。9,10はとにかくエモーショナルでメランコリックで、今どき珍しい王道のUKロック。



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