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The Blue Nile - High (2004)

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総評 : 8/10

The Blue Nileの2004年の4thアルバム『High』がリマスター&2枚組としてリイシューされた。

リマスターの質は、文句無し。音圧は少しだけ大きくなり、本作の細かな音の粒子の解像度が上がった。オリジナル盤の時点で高音質でしたが、さらにクリアな音で楽しめる。

CDのパッケージは、3面のデジパック。ブックレット、ライナーノーツ、歌詞は無い。ここは少し残念。

本作は基本的には前作『Peace At Last』(1996)の流れを汲むアコースティックメインのサウンド。そこに『Hats』(1987)のシルキーなシンセ、クリーントーンのエレキギターが加わる。リズムボックスはやや単調、それを埋めるようにピアノがリズム楽器としての役割を担っている。

最高傑作と言われることは少ないと思うし、他の3枚、特に1st, 2ndに比べるとやや単調かつドライな雰囲気があるのかなという感じもする。しかし彼ら特有の雰囲気は一定して流れており、ロマンティックな音楽が好きであれば間違いなく楽しめる一枚であろうとは思う。

Disc 1

1. The Days Of Our Lives

一定して叩き弾かれるエレピ。ロマンティックという言葉が似合う彼らの音楽だが、しかしここでは淡々とドライに演奏される。歌詞も今の人生に疑念を抱く内容。これまでの作風とは少し異なるスタート。


2. I Would Never

しかし続くこの曲は、The Blue Nile節の名曲。本作からの唯一のシングル曲。アコースティックギターを軸に、次々に豊かな音が加えられていく様は本当に感動的。メロディ/コード進行もかなり分かりやすく進む。集大成と言えると思う。


3. Broken Lives

これまた淡々と繰り返し演奏されるエレピが印象的。ポールの語り風ボーカルも。後半ではクリーントーンのエレキギターのおかげで少し色付く。好みは別れそう?


4. Because Of Toledo

3rd路線の正真正銘シンプルなアコースティック曲。声の良さ、メロディの良さをシンプルに味わえる。


5. She Saw The World

シリアスな表情を見せる。終始マイナーコードで進行し、タイトなドラムとピアノが緊張感をもたらす。Radioheadの"Jigsaw Falling Into Place"にも似た切迫感が宿っている。


6. High

翻ってこちらは『Hats』に収録されていそうなシルキーなシンセと洒脱なピアノが印象的。ただしあのアルバムほど濃密ではなく、もう少しシンプルでサラッとした感覚もある。名曲。


7. Soul Boy

アコギの単音弾きと8ビートの単調な打ち込みがメイン要素。バックのシンセサイザーの軋みによる印象なのか、この曲からも不穏な雰囲気を感じる。


8. Everybody Else

メジャーコードで統一した明るい雰囲気。コードチェンジおよびシンセの使い方がやや単調かつ曲も短く、少し消化不良ではある。


9. Stay Close

本作全体に言えることだが、深い夜の静寂を感じさせるシンセサイザーの靄と、安っぽい打ち込みの組合せがある意味斬新。この曲はストリングスがバックで流れており、とてもシネマティック。悠久の時を経ようと変わることのない大河を思わせる。偉大なバンドの最後の曲としてふさわしい存在感。


Disc 2

1. Wasted (Previously Unreleased)

Disc2には未発表曲が4曲も収録されている。どれも制作時期は明かされていないが、この曲は本作からのアウトテイクではないか?本曲で複雑なリズムパターンを実験してみた、でもうまくいかず結局アルバム本編はシンプルなリズムに統一し、これは没となった、そんなストーリーが浮かぶ(完全に妄想だが)。

2. The Days Of Our Lives (Remix)

誰のリミックスか開示されていない。トライバルなリズムを大胆に付加。面白いとは思うがそれ以上でもそれ以下でもない、マニア向けの印象を受ける。

3. She Saw The World (Remix)

こちらは逆に良い。オリジナル版ではやや浮いていたタイトなリズムとギターが、ここではシンセのモヤに包まれることで心地よくマッチ。実験的でありながら、こっちこそがオリジナル版であるかのような、説得力のあるリミックス。

4. I

素晴らしい曲。ドラムの録り方が他とは違うように聴こえる。いつの頃の曲なのか、切実に知りたい…。

5. Bigtown

既にこれが何かのリミックスかのような、特異な曲。本当の意味でトライバルな、第三世界へのアプローチ。音量を大きくすると大迫力。

6. Here Come The Bluebirds

明らかに3rdの頃を思い出させる。しかも3rd収録曲の大半より名曲。これほどの名曲をアルバムに入れないなんて考えられない。


↓購入した本リマスター盤。

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