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最近聴いているアルバム2021.08

Happyness - Weird Little Birthday (2014)

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去年初めてこのアルバムを聴いてから、ずっと忘れられなくなって困っている。2014年のロンドン作品とは思えないほど、90年代前半のアメリカの光景がありありと眼前に広がる。出口の無い郊外に暮らす、怠惰で、自虐的で、諧謔的で、でもどこまでもまっすぐな瞳を持つ奴ら。10年代以降で最も気に入っている作品の一つ。2020年の3rd『Floatr』も素晴らしかったが、これはそれを上回る。本物の雰囲気を纏っている。この人たちは本当に凄い。


Sam Gendel - 4444 (2017)

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ソロデビュー作だが、メンバーはINGAなので実質的にINGAのセカンドアルバムと言った方が適切だ。実際、彼のシグネチャーであるサックスはほぼ聴こえてこない。今の彼とは全くの別物と言った方がいいだろう。深夜のアルバム。声とギターとベースとパーカッションだけだが、演奏の質が異常に高いせいか、かなりの情報と感情が視覚的に脳に流れ込んでくる。こっちの方がより技巧的でカッチリしているが、あのInc. No Worldの名作『As Light As Light』と同じ地平にある唯一の作品と感じた。


Deftones - Ohms (2020)

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Deafheavenの新作を聴いていて気付いたのは、このDeftones『Ohms』との共通点だ。過去最も音響への目配せをし、単に曲を演奏するのでは得られないもう一つ上の深みを見事に構築しきっている。真のプロフェッショナルが、自分のプレイに真摯に向き合い、パーツ一つ一つを極限まで磨き上げることによってのみ掴み取れる、完璧な精度。一言で言えば、実力。こんなギター弾けるなら、たとえ地球平面説を唱えていてもカッコよく見えてしまう。


Yussef Dayes Trio - Welcome To The Hills (2020)

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ドラム:Yussef Dayes。ベース:Rocco Palladino。キーボード:Charlie Stacey。現代最高峰のミュージシャンによるライブ音源。アディショナルプロダクションによってスタジオ音源として聴くことも出来る。もちろん演奏は盤石。3人の息が完璧に合った瞬間——いや瞬間ではなく1時間以上合いっぱなしなのだが——、を捉えた決定的なもの。グルーヴの極みであるYussefとRoccoのプレイに、Charlieのスペイシーなキーボードが絶妙な彩りを添える。Yussefのスネア音は気持ち良すぎる。この歴史的な現場にいた観客が心から羨ましい。


The Cure - The Head On The Door (1985)

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どんなに嫌なことや辛いことの渦中にあっても、The Cureは聴ける。それは、彼らの音がいかにファンタジックで浮世離れしているように聴こえても、根底では徹底してシビアな現実認識と内省の上に成り立っているからだ。どんなに良い音楽でも一度「自分には関係ないや」と思ってしまったらもうその音楽に心惹かれることはないが、The Cureの音楽は真逆である。常に「自分のためだけに歌ってくれている」「世界の涯てで自分だけを抱きしめてくれる」感覚がある。本作は、その魅力が最初に確立された一枚。巨大化する直前のコンパクトでキュートですらある一枚だが、その魅力をフルで味わうことが出来る。絶対にこのアルバムから聴くべき。



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