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Hurts - Faith (2020)

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総評 : 5/10


日本ではどこのファン層にもフィットすることなく、結局人気が出なかった感のあるHurts。これまで4作、良い曲・適度なサウンド・上手いボーカル・カリスマ性により、ヨーロッパでは人気を博してきた。

ボーカル:Theo Hutchcraftの深刻なメンタルイルネスを経て3年ぶりのリリースとなる本作はどうだろうか。結論を言えば、芸術性と大衆性のバランスがうまく取れなかった、という印象。

Depeche ModeやNine Inch Nailsを彷彿とさせるインダストリアルなインディロック。マダムを喜ばせる美メロバラード。両極端な曲がアルバムに半々の割合で入っている。

過去最も殺伐とした"Fractured"で「俺はもうぶっ壊れてるんだ。放っといてくれ。」と歌った直後。豪華なストリングスに導かれ「あ〜俺は君の虜さ♡」と宣言する"Slave To Your Love"。どっちがリアル?

「頼むから俺を救ってくれ」と切実に訴える"Redemption"は良い。だけど最終曲"Darkest Hour"で「俺が君の光になるよ♡」…いつの間に他人のこと気にする余裕が生まれたのだろうか。

元々このデュオはソングライティングとサウンドメイキングの器用さは超一流だが、ブレない方向性と探究心が無い気がする。器用貧乏な現状がなんとももどかしい。

1 Voices
アコースティックラテンギターにビッグなリズムを加えた、市場を意識したポップソング。可も無く不可も無く。

2 Suffer
90年代に入る頃のDepeche Modeを思い出させるインダストリアル。派手さは無いが実直な曲調が好印象。

3 Fractured
Janet JacksonやMissy Elliottをも思い出させる、アヴァンギャルドなインダストリアルR&B。こういう曲で思い切ってアルバムを統一できないあたりに、このデュオの突き抜けなさが出ているような気がする。

4 Slave To Your Love
ストリングスを主体とするサウンドに、Theoの張りのある美声が生えるパワーバラード。Hurtsお得意の曲調。

5 All Have To Give
もう少し落ち着いたバラード。シンプルなメロディをしっかり聴かせる。(「俺の挑戦は十分では無いのかもしれない。もっとオープンになった方がいいのかもしれない。でもこれが自分にとって精一杯なんだ。」素直にそう吐露する人のことをそんなに悪く言う気にはなれない…)

6 Liar
硬質な音の上で静かに怒りを滾らせる。「君の見え透いた嘘にはうんざりだ。恥を知れ。」怒りの対象は政治的なもの?個人的なもの?

7 Somebody
Imagine Dragonsが憑依したリズムアンセム。持ち味を遺憾無く発揮したTheoのボーカルが聴きどころ。歌詞は前曲と似たような感じ。

8 Numb
『Donward Spiral』のNINになりきったインダストリアル。あまりにそのままなのでコメントがしづらい。

9 Redemption
自身の1stアルバム『Happiness』に近い荘厳なバラード。シンプルに優れたメロディを美声が歌う、完成度の高い曲。

10 White Horses
白馬の王子様を待ち続ける女がついに相手を見つけたというストーリーが悲劇的に描かれます。歌詞の面でも音の面でも、何が言いたいのか、何がやりたいのか、今ひとつピントの定まらない印象。

11 Darkest Hour
お約束の感動バラード。往年のオアシスでもやらないようなギターソロには閉口。ただそんな曲にも確かな説得力をもたらすTheoのボーカルの魅力だけはガチ








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