予算編成の2大課題「現場の納得」と「予算の質の向上」-第2回行財政愛好会2/2

こんにちは!

今回は前回の記事に引き続き、2021/12/22に開催した第2回行財政愛好会の内容を2回にわたってお届けします。

予算編成の課題分析

予算編成が抱えている課題は「個別事業に対する現場の納得性」と「自治体全体の予算の質の向上」の大きく2つに分解でき、解決するためには、それぞれ下記のような要素が必要となるのではないか、と分析しました。

第2回愛好会1-2

「個別事業に対する現場の納得性」に必要な要素

「中身の妥当性」「主体性・自分で決めた」
・現場以外の人がメスを入れるのではなく、現場を熟知している原課が「これはやめられる」と決定することでこれらの要素は担保できるのでは。

「タイミングの妥当性」
・原課がやる前提・廃止する前提で各所に調整した後に、財政課からあれこれ言われると混乱してしまう事態が往々にしてある。この事態を避けるため、先に調整をしておくことでこの要素は担保できるのでは。

「救済の用意」
・「どうしても廃止できない」という事業に対して枠外で対応する、財政調整基金を切り崩す、などの救済措置を用意しておくことで担保できるのでは。
・ここで大切なのは救済措置の方法ではなく、現場が「どうしても難しい時は手を差し伸べてもらえるから、まずは頑張ってみよう」と感じられる環境にすること。

「公平性」
・「事業を廃止しなければならない状況であることは理解できるが、自分の事業だけ切られるのは不公平」と感じてしまう心理状況を、どうクリアにしていくか。
ここは更に分解しました。
一律のプロセス:「枠予算」という仕組みで担保する、首長視点でジャッジする、など一律のルールで進めることが大切。
フリーライドできない仕組み:枠配分の場合、枠からはみ出た要求を見逃さない、各部局からあがってきた行革案を共有する(=行革案が出てこない部局が浮き彫りになる)、などズルができない仕組み・環境が大切。
努力が報われる仕組み:頑張って枠内に収めた分には手を入れない、一件査定でもしっかりとした行革提案があれば報われる、など。
再チャレンジ可能:復活要求や次年度要求など一発でうまくいくとは限らないけれど、頑張ったら報われるチャンスを用意しておくこと。
これらによってこの要素は担保できるのでは。

自治体全体の予算の質の向上


「経費テクニック」(小改善)
・非効率・非合理的な予算が無いかチェック。
・原課が実施する自治体、財政課が実施する自治体と様々。

「横ぐし・統合」(大改善)
・例えば管轄の違う施設の統合など、部局を超えた改善のこと。
・財政課が担当している場合が多いが、重要なのは「財政課」というポジションではなく、横ぐしを通すような調整を行えるスキルを持つ人が実施。

「首長意思の反映」(イノベーション)
・イノベーションを起こすには首長が目指すべき方向に自治体全体で進んでいくことができるような仕組みが必要。


要素の追加

上記の要素について財オタの皆さんからもご賛同いただきました。
また、これらの要素ではカバーできないけれど、査定の現場で起こることとして
・事業の縮小・廃止査定=原課や担当職員を否定していると受け止められてしまう
・「財政課に情報を渡すと切られる」といった心理から財政課に渡す情報を絞られてしまう
といったことが挙げられました。
これらをカバーするには
・原課や担当職員が悪いわけではない、ということを伝える
・それを伝えるには、TPOに応じて原課の限界点を超えるような場合は助け舟を出す
といったことが考えられ、この点を含む要素として「個別事業に対する現場の納得性」に

「深く理解する・代替案の共創」

を追加しました。

査定のスキルは共有できる?

今回の愛好会では「自治体全体の予算の質の向上」に必要な要素「横ぐし・統合」について議論が深まり下記のような展開で新たな仮説が生まれました。

・事業に横ぐしを通す・結合するには、全体を俯瞰して見る力、横ぐしを通す・結合することで改善できるポイントを見つける力、関係部署を調整する力など高度なスキルが必要。
・自治体の規模の違いによって横ぐし・結合の役割を担う部署は変わってきますが、どの部署であっても、これらの高度なスキルを持った人が行っていることは変わらない。
・一件査定から枠配分予算に編成方法を変えた自治体が、再び一件査定に戻る事例を多く耳にするが、もしかしたら、その原因はここにあるのかも。
・枠配分予算は、これまで財政課が行ってきた査定を原課が行うことになるが、全ての原課にこのようなスキルを持つ人材がいるわけではないし、そもそも全体を俯瞰することが難しい環境でもある。
・そうすると、各原課は自分が担当する業務の範囲での査定に留まり、自治体全体で見ると、同一業務を他部局で行う等、非効率・非合理的な予算編成となりやすくなる。
・結果、査定のスキルが蓄積されている財政課が目を通す必要が生じ、一件査定に戻ってしまう。

このような議論から、
・スキルを持っていれば、これまで財政課に頼っていた横断的な査定を原課が自ら行うことも可能になり、予算編成の質が向上するのではないか
・これにより、財政課はより広い視点で市全体のバランスを見る必要がある事業の査定に注力できるようになるのではないか

といった仮説が生まれました。

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