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私的音楽夜会(2019/12/26)

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『私的音楽夜会』に伺いました。(2019/12/26@ASPIA ホール

「私的音楽夜会」は作曲家の武谷あい子さんが主宰する音楽制作・作品発表企画です。クラシック、コンテンポラリー、ポップス、などを型にはめないコンサート企画で今回は、ピアノ・トリオ、そして8人の歌手とピアノのアンサンブルの初演が盛り込まれました。

プログラム前半は大沼弘基さん作曲のピアノ三重奏曲『絵のない絵本』、後半は武谷あい子さん作曲の"Requiem e Kyrie" for SATB and Piano(2018-19) "Agnus dei" for SATB a cappella(2018) "Lux æterna" for for SATB and Piano(2018-19)でした。

作曲家の大沼さんはクラシックの曲を16歳から作曲。武蔵音楽大学卒業後は、純音楽の作曲活動をし、そしてクラシックとポップスの垣根を越えた自身の楽曲を演奏する”J’s Garage Group”を結成。
同じく作曲家の武谷あい子さんは東京音楽大学卒業後、音楽制作、編曲者、伴奏ピアニストとして活躍しています。また全国生涯学習音楽指導員協議会東京支部に在籍し、生涯学習指導員として幅広く活動をしています。

大沼さんの『絵のない絵本』はアンデルセンの33夜からなる「絵のない絵本」の第3夜「或る女の一生」、第5夜「戦争で散った、息子の命の影を追う母親」、第8夜「月が見えない夜」、第16夜「道化師の恋」といった”生と死”、”喜びと悲しみ”を題材にする話を取り上げ、それらが混ざったり対比している世界観を和声であったり構成として曲に落とし込んだ作品です。愛犬の思い出にまつわる ”One” ”Two” ”Next Future” では愛情に満ちた、雰囲気に満ち、素敵な気持ちになれる音楽でした。

武谷あい子さん作曲の"Requiem e Kyrie" "Agnus dei" "Lux æterna" は、太平洋戦争終結をフィリピンで迎えた日本人女性が終戦の75年後に発した「慰霊ってなにさ」という言葉への答えを探し、鎮めの鐘が響く曲です。武谷さんのピアノ演奏と8人の歌手により戦場を思わせるような緊張感、不安、祈りが交錯した鮮烈な印象を受けました。祈りが垣間見られるものの、しかしそこに平穏はあるのかと考えさせられるような、きれいごとにならない切実さを感じる音楽で、ソリストは複雑なテクスチュアを正確に歌い上げ、武谷さんの音楽世界を創りあげました。

前半の出演はヴァイオリンの迫田圭さん、チェロの飯島哲蔵さん、ピアノの齋藤誠二さん、大沼弘基さんで後半は、ソプラノは川上明里子さんと牧田信乃さん、アルトを西村祐美子さんと櫻井陽香さん、テノールを市川泰明さんと佐佐木雄一郎さん、バスを木村雄太さんと鈴木与志一さん、ピアノは武谷あい子さんでした。

現代の作曲家が鋭い感性と柔軟な発想で提示する音楽に触れることができ、とても刺激的なコンサートでした!

皆さんもぜひコンパスを使ってコンサートをお楽しみください!


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