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松本 望 ピアノリサイタル(2020/2/28)

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『松本 望 ピアノリサイタル』に伺いました。(2020/2/28@王子ホール)

松本 望さんは、東京藝術大学大学院修士課程作曲専攻修了し、パリ国立高等音楽院ピアノ伴奏科首席卒業(審査員満場一致)。2003年東京文化会館主催合唱作品作曲コンクール最優秀賞。2007年第4回リヨン国際室内楽コンクール第1位(ヴァイオリンとピアノのデュオ)。2009年第55回マリア・カナルス国際音楽コンクール・ピアノトリオ部門第1位。 在学中より作曲と演奏の両分野で活動を展開し、2015年度にはNHK全国学校(合唱)音楽コンクール(Nコン)高等学校の部の課題曲作曲者として注目を集めました。

この日取り上げられた楽曲はバッハ、ベートーヴェン、フランクに始まり自作を交え、三善晃、デュティユーの近現代作品で、時代や作曲家の国籍などは多岐にわたりますが、どれも「コラール」というキーワードにつながる曲で構成されています。これは松本さんがここ数年合唱に関わってきたなかで生まれてきたプログラムです。

1曲目の『目覚めよと呼ぶ声あり』が開始されると、松本さんのピアノ演奏から教会の雰囲気が醸し出され、全体を貫く”コラール”というキーワードを印象付けた演奏となりました。ベートーヴェンの後期ピアノ曲、ソナタ第30番はコラール風なリズムを基調とした傑作。端正な演奏から多声の動きが浮かび、松本さんの作曲家としての解釈が光りました。密度の濃い、重厚なフランクの曲を経て、透明な和音が印象的な三善晃のBerceuse、そして松本さんの自作「コラール・ファンタジー ~ピアノのために~」が演奏されました。

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松本さんの新曲は曲中にバッハの『マタイ受難曲』のコラールの旋律が音列的に急速的な音型として登場し、一方で原曲のゆったりした流れが交錯し、音が放たれ静けさを迎えます。そしてそれまでと違うコラール旋律が響き明滅しながら音楽は進みます。音響を効果的扱い、印象に残る素晴らしい作品でした!

最後に演奏されたデュティユーのソナタは作曲家自身が作品1と認めた、作曲家の自信作であり、個性を示した傑作です。第3楽章でコラールが変奏曲のテーマになっています。非常に高度な技術を要する曲ですが、終始透明感のある完成度の高い演奏、早目のテンポで虚飾のない松本さんの解釈がデュティユーの世界観を浮き立たせた素晴らしい演奏でした!

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▼セットリスト
J.S.バッハ(ケンプ編曲):目覚めよと呼ぶ声あり BWV645
ベートーヴェン: ピアノソナタ第30番 ホ長調 Op.109
フランク:プレチュード、コラールとフーガ
三善晃:Berceuse(子守歌)
松本 望:コラール・ファンタジー ~ピアノのために~(新作初演)
デュティユー:ピアノソナタ

皆さんもぜひコンパスを使ってコンサートをお楽しみください!


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