見出し画像

マリンバの現在(2020/2/21)

画像1

『マリンバの現在』に伺いました。(2020/2/21@トーキョーコンサーツ・ラボ)

マリンバを演奏したのは中野志保さんと増井彩さんです。中野志保さんは昭和音楽大学器楽学科弦管打楽器コース卒業、昭和音楽大学大学院音楽研究科修士課程を修了。2017年、安倍圭子国際マリンバ・アカデミーオーディション合格者によるプレミアム・コンサート等に出演。Marimba Duo Luz、micro⇆macroのメンバーとして活躍。増井彩さんは昭和音楽大学器楽学科演奏家コース卒業、東京音楽大学大学院音楽研究科修士課程修了予定。2018年、第16回PASイタリア国際打楽器コンクールティンパニ部門において第2位を受賞しています。

このコンサートは『マリンバの現在』とあるように、現在活動している作曲家の代表作や、日本の3人の若手作曲家による曲でプログラムが構成されています。多摩美術大学像演劇学科を卒業した後藤天さんの新曲《拾い足》は実験映像制作の実績や美術の知見を活かし、「1音の中」を描く作品。音の孤立と間、移動が時に視覚的に浮かぶような、創造力を呼ぶ作品でした。

ポサダスの《Hylé》は特別なマレットや弓などを用い、様々な奏法を駆使し多種多様な音に満ちた作品です。《Hylé》とはアリストテレスの哲学「質量」に関係しています。様々な奏法から生まれる現実態となる音の可能性を感じる興味深い作品。

灰街さんの《季節はずれのふたつのヴァレンタイン》はジョン・ケージのプリペアドピアノ曲《季節外れのヴァレンタイン》へのオマージュ作品。プリペアドマリンバと通常マリンバを使いデュオで演奏されました。ケージ作品の旋律をうまく効果的に使いつつ、破壊と再構築をしていくプロセスが描かれた作品です。

イタリアの国際的にも有名なシャリーノの《Il Legno e la Parola》作品を経て、冨田さんの新作《Palais de Marimba》が演奏されました。この曲は非目的論的な音楽的時間を多義的にとらえられる仕掛けに満ちた作品です。

これらの音楽は実験的要素も多分にありますが、同時に現代の作曲家が拓く可能性に触れることができるとても貴重な音楽体験となりました。中野志保さんと増井彩さんの演奏は一見散文的ともとらえられがちな音の激しい交錯や間を見事に表現し、最後まで高い集中力と隙のない演奏で惹きつけました。まさに圧巻でした!

▼セットリスト
後藤天《拾い足》(新作初演)
アルベルト・ポサダス《Hylé》(2013)
灰街令《季節はずれのふたつのヴァレンタイン》(新作初演)
サルヴァトーレ・シャリーノ《Il Legno e la Parola》 (2004)
冨田正之介《Palais de Marimba》(新作初演)

皆さんもぜひコンパスを使ってコンサートをお楽しみください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?