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和のこころ・洋の楽想

『和のこころ・洋の楽想 クラシックコラボレーションコンサート』に伺いました。(2022/04/12@豊洲シビックセンターホール)

ピアニスト桜子さんがリスペクトするアーティストと共に織りなすジャンルフリー・パフォーミングアート「SAKURAKO CLASSICS」シリーズ第8弾が開催されました。前半は「光うみし者たち」と題し、箏奏者の大川義秋さんの曲と演奏および、桜子さんの曲を中心に彩られました。大川さんの曲と演奏からは伝統を踏まえつつも、一方で新しい扉を開く希望や活力を感じさせる魅力にあふれたものでした。桜子さんの楽曲も今日の世界情勢の中にあって、ことさら強く心に響くものでした。和の心を持つ美しさを感じさせる、ぜひもっと多くの方にも聴いてもらいたい曲です!前半最後の曲ではフルート奏者の大澤明子さんが加わった演奏で松村崇継「Earth」が演奏されました。視界が広がり清涼感ある空気を肌に感じるような素敵な演奏表現に魅了されました!アンサンブルにパーカッションの山下由紀子さん、コントラバス奏者の篠崎和紀さんも参加し、色彩感豊かなハーモニーを生み出しました。

 後半は「深淵なる世界」”静と動” ”生と死””絶望と希望” ”光と影”と題し、ドビュッシー、J.S.バッハ、ラフマニノフ、ストラヴィンスキーの楽曲が演奏されました。

フルートのソロで演奏されるドビュッシーのシランクスに続き、金春流能楽師 山中一馬さんとの共演による福島和夫作曲「冥」で、第2部がもつテーマの深みが浮き彫りになりました。これはとても印象的な瞬間でした。

続いてコントラバス奏者の篠崎和紀さんによるソロ演奏でJ.S.バッハの作品が演奏されました。通常のチェロ演奏では味わえない温かさと低音の厚みが新しい魅力を生み出したように思いました。バッハの普遍性を感じると同時に、コントラバスで演奏してしまう技巧の高さに驚きました。ピアニストの小倉恵理さんはパルティータ第2番から「シンフォニア」を演奏。聴き手の感情に寄り添うような演奏表現で魅了しました。J.S.バッハが一般の愛好家のために家庭やサロンなどで楽しんでもらう意図で作曲をしたこの曲の性格が伝わる、素敵な演奏でした!

その後ピアニストの桜子さんにより、ラフマニノフのソロで前奏曲「鐘」が演奏されました。半音階的な三連符に始まる中間部の緊張感の高まりはまさに相反する様々な観念の葛藤が描かれているように感じました。

そして、最後は桜子さんと小倉さんのピアノ連弾、能楽師 山中一馬さんによるストラヴィンスキー「春の祭典」(世界初コラボレーション)です。この曲はストラヴィンスキーがバレエ団”バレエ・リュス”のために1913年に作曲したバレエ音楽です。リズムの斬新さと前衛的なメロディーを持つこの曲が、日本の”能”とどのような表現を生み出すか興味が尽きませんでした。実際に体験してみてとてもすごい芸術表現として高められていて、衝撃を受けました!”能”の抑制的な動きからは時に強いエネルギーが表出されます。そして音楽の世界と能の世界が融合しつつも、しかし互いに独立している。一見矛盾していますが、まさにこれが”能”であったからこそ実現できたのではないかと思います。ピアノ演奏だけでなくこのコンサートのプロデュースに活躍した桜子さんの活躍に注目です!

ピアノ演奏、プロデュースをした桜子さん


▼出演
桜子(ピアノ・プロデュース)
大川義秋(箏)
小倉恵理(ピアノ)
大澤明子(フルート)
山下由紀子(パーカッション)
篠崎和紀(コントラバス) 

▼セットリスト
第一部
大川義秋:「麗輪 -reiwa-」
大川義秋:「さくらさくら~恋ぞ積もりて~」
桜子:「ツキヲミルキミヲオモフ」
大川義秋:「3.11→」
桜子:「いにしえの里」
桜子:「あたらしい朝」
桜子:「元に戻る」
村松崇継:「Earth」
第二部
ドビュッシー:「シランクス」
福島和夫:「冥」
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番「プレリュード」
J.S.バッハ:パルティータ第2番「シンフォニア」
ラフマニノフ:前奏曲「鐘」
ストラヴィンスキー:春の祭典~第1部:大地礼賛

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