薄青い空に
四時過ぎに、外に出たら、空が曇っていた。
今日も、星は見えないかも……と思っていたら、月と金星が出て来た。金星は、時々雲に隠れたけど。
私はやっぱり、金星が好きだなと思った。
月の光は黄色過ぎて……
気づけば、火星とカペラも出ていたが、雲に隠れて見えなくなった。
カペラは、また出て来て、隠れたりしていた。
アルデバランは、ほとんど鈍くて、少ししか出ていなかったけど。
しばらくして、ペテルギュウスとリゲルが出て来た。これらもまた、すぐに隠れてしまったけど。
カペラ、アルデバランも復活した。
リゲルと火星も。
リゲルが隠れて、ペテルギュウスもと思ったら、またリゲルが出ていた。
大分空が明るくなって、薄青い空に、
月の上に、ポルックス、右横に、プロキオンが出ていた。
下には、金星も。
最後は、月と金星だけが残り、
私は、「おやすみなさい」と言った。
星明かりは綺麗で、目が痛くならないのに、人工の光は何であんなに醜いんだろう?
五時前に、ネクタイをしめて上着は着ていない男が、家の横の通りを歩いて行った。
土曜日くらいから、眼鏡が曇るようになってきて、肌寒くなってきた。
火星が赤く輝き、思わず、私の口からは、「うわ~っ」という声がこぼれた。
オリオン座、シリウス、アルデバラン、すばる?プロキオン、金星、ずいぶんと細くなった月、カストルとポルックス、カペラ、頭の中で星座図を描くことが出来ない私には、何の星か分からない星達も輝いていた。
墨を落としたように、空が黒い。冬の空だ?
ザッザッザッという足音が響いて、前の通りを男が足早に歩いて行った。以前も、歩いていた白いシャツの男だ。しばらくして、単車が家の横の道を走って行った。
星座図を見ても、
頭
の
中
に、
ぎょ
しゃ
座
を
描く
ことも出来ない
私だけど、
星を見ていると、宮沢賢治の「星巡りの歌」を歌いたくなる。
家が建て込んでいるし、電線がたくさん渡してあるので、なかなかパノラマみたいには行かないけど。
火星は西に、月と金星は北に移動して行っているように思える。
空の下が薄青くなってきたので、私は、金星に「おやすみなさい」と告げて、家の中へと入った。
曇り空の中に、火星と金星が出ていた。
火星はぼんやりしていたけど、金星は強く輝き、雲の中に吸い込まれそうになっても、また出て来た。ちょっと目を離した隙に、また隠れてしまったけど。
車のエンジンがかかる音がして、ガレージを出る金属音が聞こえ、眩い照明を放ちながら、家の横の通りを走って行った。
星達が天気に左右されている間も、人間達は動き続け、空を見上げていると、誰もいないはずの空間に、煙草の臭いがする。
金星も、火星も、空にすっと吸い込まれては、また出て、を繰り返し、今日はもう駄目みたいだ。
外灯の光が目にしみる。
遠くにある宝石みたいな金星に手を伸ばし、掴んでみたい。
目を傷つける外灯の光などいらない。
人は暗闇の恐怖を克服し、便利さと平和な生活を手に入れたはずだったのに。
肉眼や、双眼鏡や、望遠鏡で、夜空を見上げる人達が後を絶たないのは、何故だろう?
金星♀と
火星♂が
追いかけっこをしているような曇り空を見ながら、
私はスマホで詩を書いていた。
今日は、乙女座の新月らしい。
外環の方は、もう動き出しているようで、車の走行音が聞こえる。
どこから聞こえて来るのか分からないザッザッザッという人の足音や、ブーン!という車の走行音が聞こえる。
目の前の通りを、車が走って行った。
気づけば、オリオン座が出ていた。
ものすごく短い時間だったので、アルデバランまでは確認できなかったけど。
左を向けば、カペラ、プロキオン、一際明るいシリウスも出ていた。
今日も、空の下が薄青くなってきた。
火星が雲に隠れ、プロキオンが見えなくなり、シリウスの輝きも薄くなり、最後まで残った金星に、私は、「おやすみなさい」を言った。
一瞬、雲に隠れたはずのシリウスが見えた気がした。
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