クレジットよりもリアル削減活動を
2022年7月27日の締切に向けて、CDP担当部署は、超多忙な毎日ではないでしょうか。省エネ法の報告締切も重なって、夏休み前の修羅場かとお察しします。もう一踏ん張りです。頑張ってください。
昨年報告と比較して、実績はいかがだったでしょうか。
バウンダリーを拡げたり、一次データを使用するようになったりすると、もしかして、排出量が増えているかもしれません。
でも、ご安心ください。
CDPは、排出量の多寡ではなく、目標に対して着実に削減できているか。
その過程を重要視します。SBTiも同様の考え方です。
回答書の中で、ちゃんと「弁明」することができます。
しっかりと、自社の取り組みの説明を行いましょう。
さて、算定に当たって、「排出量ゼロ」であると楽ちんですよね。
なので、「カーボンニュートラル」と謳った商品やサービスであれば、飛びつきたくなる。でも、基本的にNGですから、注意して下さい。
以前、「カーボンニュートラルLNG」を例にご案内しています。
そんな中、JTBが出張時のCO2排出量を算定してオフセットするサービスを開始するというプレスリリースを出しました。
確かに、皆さんが一番気にしている、CDPの回答や、SBTiの目標達成のための計画に使用できるという文言はありません。
しかし、このプレスリリースをみたユーザーはどのように捉えるでしょう。
「JTBにお願いしたら、カーボンフリーの出張を手配してくれるんだ」
こう勘違いしても、おかしくないでしょう。
カテゴリー6「出張」の排出量が一気に減らせるじゃ無いか。
海外出張は思いの外、排出量が多くなります。
外資系であれば、飛びつきたくなるかもしれませんよね。
ですが、現在、クレジットは基本的にCDPやSBTiの短期、長期計画には使用できません。
国連の「Race to Zero」イニシアチブに参加しているSBTiの「Net-Zero Standard」では、自社の削減活動ではどうしても減らすことができない量が10%残るとしており、2050年の段階で、その10%は「中和」することとしています。
その時に使用できる「中和クレジット」については、現在定義を策定中ですが、「大気中から炭素を除去し、永続的に貯蔵」する手法によるものとしています。
吸収系も含まれるのではないかとは思いますが「未定」なので、今敢えて購入する必要は無いと思います。「ビンテージ」という、実際に吸収した期間(例えば、使用する前5年以内とか)にも縛りが入るかもしれませんので、早まらない方が得策です。
また、短期目標には使えないこと、及び長期目標における中和のみで使用できることを明確にしています。
個人的には、以下の太字の表現も、問題と考えます。
CDM及びその後継クレジットのことを指していると思いますが、CDMは京都議定書第一約束期間において有効な市場メカニズムであり、パリ協定6条4項において、どのような扱いにするのかを、現在交渉中なのです。
つまり、必ずしも使えるかどうか分からないクレジットでオフセットする可能性もあるわけで、このような書きぶりは不誠実です。さらに、このように書いてあれば、なおさら「ゼロカウントにできるんだ」と思うでしょう。
使用するクレジットは、恐らく国際的にも信頼性が高いプログラムの、かつ吸収・除去系のクレジットだとは思うものの、プレスリリースの方法、文章が、あまりにも正確性を欠いたものである点が問題だと考えます。
私としましても、皆様に正しい行動をとってもらいたく、折に触れ、繰り返しご案内していきたいと思います。
もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。