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台湾のクレジット事情 現状確認

AlliedOffsetsの隔週発行ニュースレター「Policy Carbon Currents」
気になっていたイシューをタイムリーにレポートしてくれるので、非常に助かります。

今回は、台湾のクレジット動向がテーマ。
法規制関係は中国語のみが多いので、とかく情報収集に苦慮するので、めちゃくちゃ参考になりました。

昨年23年8月、台湾証券取引所と台湾当局系ファンドの国家発展基金が共同で、台湾初のカーボン・クレジット市場「台湾炭権交易所」を設立、関連する法整備などを行った後、2024年前半にも取引をスタートさせることを公表したことくらいで、アップデートは止まってました(汗)

なので、有難く、レポートの内容を見ていくことにしましょう。


今年2024年に、取引市場を整備した後、2025年にカーボン・プライシング・メカニズムを開始する予定としています。「A carbon levy」となっているので、日本語に訳すと「炭素賦課金制度」でしょうか。

多排出企業(毎年25,000トン以上のCO2を排出している企業)を対象としており、炭素排出量全体の約80%をカバーすることを目指しているそうです。

気候変動対応法に基づいて実施され、主な規制には、CO2削減目標の義務付け、遵守を確認するためのパフォーマンス・レビュー、炭素賦課金制度導入などが含まれ、2050年ネットゼロ達成という台湾の目標に沿ったものになっているとのこと。

賦課率はCO2トン当たり300〜500台湾ドル(約243円から約405円/トン)の間で提案されている。電力、鉄鋼、石油精製、セメント、半導体、液晶製造など、複数のセクターで合計512社が影響を受ける予定。

仮に1トン当たり9ドルが採用された場合の、主要なカーボン・プライシング・スキームとの比較がこちら。

世界銀行より(対象範囲、コンプライアンス、補償方法等が異なるので、直接比較はできない)

EU-ETSやNZ-ETSといった老舗よりも遥かに低いレベルではあるものの、韓国や中国、シンガポールなどの新興アジア諸国の市場とは同レベルといったところでしょうか。

特筆すべきは、国内だけで無く国際的なカーボン・クレジット基準を策定、遵守義務を果たすために国内および独立したクレジットメカニズムからのクレジットを使用できるようにする予定である点。

既に実施されている中国や韓国のETSだけでなく、検討中のインドネシアやブラジルなども、まずは国内のクレジットのみを使用できるとしており、将来的に海外のクレジットも、というスタンス。日本も同様。EU-ETSにおいては、「まかりならん」というポリシーです。

台湾のように、最初から、国内、海外、両方を検討しているという例は少ないと思います。そのバリエーションも、CERや6.4ERのような、国連の管理下にあるコンクレだけで無く、ボラクレも含まれると言うから、エポックメイキング。

企業は、遵守義務達成のために必要なクレジットを、24年に整備が予定されるカーボン・クレジット市場「台湾炭権交易所」を通じて購入することができるようになるのです。

そうは言っても、ボラクレも無条件にとはいかず、国内で実施されたプロジェクトに基づいて発行されたものに限るようです。

AlliedOffsetsより(現在台湾においてボラクレ使用は認められていない)

カーボン・パルスの調査結果によると、 台湾は今年2月に国内のオフセット方法論を刷新し、13種類の国内プロジェクトについて143のCDM方法論を採択しているとのこと。

現状、自己排出量の控除には使用不可としているものを、賦課金制度では認めるという形にするところから始めるのでしょう。海外プロジェクトのクレジットを台湾国内企業が購入すると、自国内の排出量は増えてしまいますが、これであれば、その心配はありません。

独自の制度を作ると、政策コストがかかってしまいますが、このように、既存スキームを拝借すれば、コスト削減できるので、賢い方法です。

ですが、台湾は、自前の制度も予定しており、前述の143の方法論だけで無く、森林管理活動、竹林、マングローブや藻場を含む、より自然をベースとしたプロジェクトの方法論の草案を検討しているそうです。

ボラクレの方法論はグローバルで適用が難しいところ、民間セクターの参画を促すために、国内の事情を考慮したスキームも必要との判断でしょう。

現在、自然ベースの方法論は1つしかリストアップされていない(AR-AMS0001)そうですが、これから、優先順位をつけながら、パイプラインが作成されていくと思います。

とはいえ、賦課金制度の導入と並行して国内のクレジット制度における方法論が拡充していくのは難しい。なので、政府は、VCMの取り込みも同時進行させる予定。

高品質のカーボン・クレジットの開発、発行、利用を促進するため、 TCX (the Taiwan Carbon Solution Exchange Corporation) とVerra の間で覚書が締結されたように、既に普及しているクレジットスキームから方法論を採用する意向があることは明らかです。

ということで、AlliedOffsetsのニュースレターを参考に、台湾のクレジット事情をお伝えしましたが、いかがだったでしょうか。

排出枠の割り当てが、無償なのか有償なのか、開始当初に使用できる、国内・海外のクレジットの選択肢はどれくらい揃っているのか、対象セクターはどうなるのかなどなど、具体的な仕組みづくりはこれからでしょうが、来年にかけて目が離せませんね。

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