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「LCA」と「CFP」と「プロダクト基準」と 

LCA・CFPとGHGのプロダクト基準
「結局どう違うの?」って思ったことはありませんか?

「プロダクト基準」と「スコープ3基準」の関係については、説明されているので悩むことはありません。例えば、スコープ3のカテゴリー1では、プロダクト基準で算定された値を単純に足し算することができます。

スコープ3GHGインベントリーと製品のGHGインベントリーの関係(製品Aを製造する企業の場合)

また、「プロダクト基準」は「LCA」のsubsetとあるので、包摂される関係ということは分かりますが、どのような相違があるかは、にわかには分かりにくいです。

Product life cycle GHG accounting is a subset of life cycle assessment (LCA), which seeks to quantify and address the environmental aspects and potential environmental impacts throughout a product’s life cycle from raw material extraction through to end-of-life waste treatment.

Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard[P21]

カーボンフットプリントについては、工学院大学の稲葉先生がこのように説明されています。

カーボンフットプリントとは、製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2排出量に換算し、商品にその数値を表示するしくみである。

改訂版 演習で学ぶLCA[P87]

算定の対象は「製品やサービス」であり、ライフサイクル全体で排出される温室効果ガスをCO2に換算したものということなので、ここまでは、プロダクト基準と同じようです。

Through the development of the GHG Protocol Product Standard, the GHG Protocol has responded to the demand for an internationally accepted method to enable GHG management of companies’ goods and services.

Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard[P03]

In the Product Standard, a completed GHG assessment is called a GHG inventory to be consistent with corporate-level GHG accounting.The GHG inventory includes both the collection of data and the calculation of the global warming impact. This is different from the ISO LCA terminology which defines inventory as only the collection of data.

Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard[P25]

ただ、カーボンフットプリントがPCRというルールを明確に定めていることを鑑みると、同じカテゴリーの製品同士では他社比較ができる点は、相違点であると考えられます。

プロダクト基準はスコープ3基準に基づいたバリューチェーンでの排出量を算定するものであるところ、スコープ3基準は、バウンダリーやスコープ3のカテゴリーの選択は組織の選択に委ねられていることから、基本的に他社比較を前提としていないからです。

ここで、LCAについて考えて見ます。

LCAは、気候変動以外も幅広く扱うことが可能です。
加えて、LCAはISOで下記の4ステップを踏むものとされています。

  1. 目的及び調査範囲の設定

  2. ライフサイクルインベントリ分析

  3. ライフサイクル影響評価

  4. ライフサイクル解釈

カーボンフットプリントとプロダクト基準は、LCAの評価対象領域のうち「地球温暖化」に対する影響のみを取り扱うものですので、いずれも、LCAのsubsetなんですね。

以上を踏まえて、私なりの理解を簡単にまとめると、こんな感じです。

他社製品比較でプロダクト基準は「✕」としているのは、ルール上「目的としていない」としているためです。他方、CFPとLCAは、比較するもの同士が同じルールに従って算定すれば可能であるが、公表に当たっては各ステークホルダー同席の上のレビューが必要だったり、困難さを伴うと考えられるため「△」としました。

さて、とはいえ、厳密に定義を理解し記憶する必要はありませんので、目的がこのように異なるという点を理解していると、分かりやすいのではないでしょうか。

LCA 地球温暖化のみならず、環境に与える影響を幅広く取り扱う(11種類)
CFP 消費者の判断材料とするため、各社がルールに則って算定する
プロダクト基準 自社製品の排出削減のための指針とすべく算定する

誤りや不適切な表現、もっと分かりやすい説明などがありましたら、コメントでお知らせ下さい。一緒に、スキルアップしていきましょう。


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