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ISO14068-1がリリースされましたね

開発が続けられていた、カーボンニュートラルのISOですが、COP28期間中の2023年11月30日にリリースされました。

この規格は、組織や製品(建築物やイベント等の商品やサービス)において、定量化、削減、オフセットを通じてカーボンニュートライティを達成・実証するための原則、要求事項、ガイダンスを提供した規格です。

詳細については、ISOのウェブサイトを参照ください。
規格のサンプルを読むこともできます。

購入に当たっては、日本規格協会の「Webdesk」がお手軽でよいです。
なお、ISOですので、もちろん英語です。

JIS化に当たっては、数年はかかるでしょうから、いち早く内容を確認したい場合は、購入した上で、優秀な翻訳ソフトに頼りましょう。

規格の名称は、正式には「ISO 14068-1:2023(Climate change management-Transition to net zero-) Part1 : Carbon neutrality」

日本では「カーボンニュートラル」と称呼されますが、「Carbon neutrality」
なので、これからは、「カーボンニュートライティ」と正式名で呼びましょう。

これまで、「ISO14068」という「−1」がつかない形で議論されてきましたが、LCAFの稲葉先生によると、発行の直前にISO中央事務局から指示があったそうです。

ISOは、昨年のCOP27期間中に「IWA42:Net Zero Guidelines」をリリースしており、目的を次のように説明していました。noteでも紹介済みです。

・ネット・ゼロの定義と関連用語(温室効果ガス除去、オフセット、バリューチェーンなど)、スコープ1・2・3の範囲の違いを明確にすること。

・カーボンニュートラリティを達成しようとするすべての関係者のためにハイレベルな原則を示すこと

・できるだけ早く、遅くとも2050年までに達成するための実行可能なガイダンスとなること

・透明性のあるコミュニケーション、信頼できる主張、そして一貫した報告方法を提示すること

リリースウェブサイトより筆者訳

このガイドラインとの関係性も気になるところですが、稲葉先生は「IWA42:2022(ネットゼロ)との関係を整理し、今後「-2」「-3」が続くことを想定しているのだと思います」と仰っています。

さて、GHGに関しては、ISO14064-1、−2、-3、14065、14067 など、GHG の定量化、報告、妥当性確認、 検証に関する既存のファミリー規格がありますが、ISO14068-1は、これらの国際規格の上に構築されるよう設計されているそうです。

規格の中に次のような、関係性を示す図が掲載されています。

なるほど、組織の排出量やカーボンフットプリント(製品のライフサイクルによる排出量)のISOを用いて、バウンダリー内における排出量を算定、プロジェクト排出量のISOを用いてクレジット量を算定、両者の関係性において「カーボンニュートラリティ」を判断するのですね。

ISO14068-1より

さて、個人的に注目したいのは、用語の定義。
詳細は購入頂くとして、気になるのは「カーボンニュートライティ」
これについても、稲葉先生が説明されています。

GHGの排出量と除去量が等しく、大気中のGHGを増加させないことを「カーボンニュートラル」と定義しています。「GHG排出量」から「GHG除去量」を差し引いた結果が「カーボンフットプリント」であり、これをカーボンクレジットを購入して相殺(オフセット)して「正味の排出量(Net Results)」をゼロにした状態を「カーボンニュートラル」と言います。

UNは、2050年断面においても削減できない排出量(Residual Emissions:残余排出量)については、「中和」することで「ネットゼロ」が達成できるとしており、その過程においては、自身の排出削減に取り組むべきとして、オフセットは認めない立場。

他方、カーボンニュートライティは、認める立場なのですね。
とすると、使用できるクレジットが気になるところ。これについては、

一般にカーボンクレジットには、たとえば石炭火力発電を自然エネルギー発電で置き換えるように「削減により生成されたカーボンクレジット」と、植林面積の増加のように「除去で生成されたクレジット」がありますが、ISO14068-1:2023では、長期的に削減努力をしてもどうしても残る「残余GHG排出量」のオフセットには後者の利用しか認めていません。大気中のCO2を除去することが重要ということだと思います。

稲葉先生のメルマガより

なるほど、やはり吸収・除去系クレジットしか使用できないのですね。
このように、ISOが、具体的にルールを定義してくれたことで、俄然、カーボン・クレジット市場が活気を帯びてくることが予想されます。

とはいえ、吸収・除去系でも「高品質」でなければ認められません。
その代表例が、パリ協定第6条2項、4項のクレジット。

これから、14068-1を読み込みつつ、COP28での成果を確認、排出量削減に資する高品質なクレジットの創生、利活用に邁進していきたいと思います。

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