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移行期間のCBAMルールを考える(3)

今年23年10月から、CBAMの報告義務が始まり、報告期間限定の実施規則のドラフト及び附属書が公開されたことを受けて、中身を読み込んでいます。

詳細を確認したい方は、こちらで原文に当たってください。
もちろん、英語ですが。

前回は、報告の項目と対象となる温室効果ガスを紹介しました。

今回は、「事業所レベルの排出量、生産プロセスの帰属排出量、商品の組込排出量、支払炭素価格」という章を読んでいきます。なお、対象セクター毎の測定方法は極めて技術的なので、一般的なものだけにしたいと思います。

まずは、「支払炭素価格」

生産国で、炭素税や排出枠など、排出するGHG量に起因する「カーボンプライス」を負担していたら、その額を報告するものです。

何故かというと、負担額がCBAM証書購入額から控除されるからです。
その条件は詳らかにはされていませんが、EU域内に対象製品を輸入した際、負担が軽減される可能性があるということです。

報告する項目にも、しっかり「Carbon price already paid」とあります。

実施規則より

これまで、GX-ETSがEUによって「EU-ETS同等の規制」となっているか否か、CBAM対象から外れるか否か、ということを懸念してきましたが、そんなこと気にせずに、予めEUA価格相当を引き当てておけば良い訳です。

インターナルカーボンプライシングの価格をEUA価格と同等にして運用しておけば、CBAM対策にもなるし、ISSBのS2に基づいて開示する際も「インターナルカーボンプライシングを導入している」と記載できます。

さて、「生産プロセスの帰属排出量」というのは、工場単位で把握している、燃料の使用量や電力の使用量を、製品に配分した排出量のこと。

お客様の要求に応じて、供給している製品の排出量を回答したことのある方であれば、既に実施されている事項だと思います。

製品ライン毎に、使用電力量や燃料の使用量などは把握していませんから、妥当な方法で個別の製品に「按分」して、算定されたことでしょう。

で、CBAMのルールではどうかというと、単純に重量で按分するようです。

配分方法

ALgは、報告期間中に生産された製品gの重量[t]で、SEEgはトン当たりの排出量[CO2e/t]、Dirは直接排出、Indirは間接排出を意味しています。

そして、直接排出量は、燃料の燃焼や外部から供給を受けた熱及び廃棄ガスによる排出量から、生産プロセスで消費せずに他のプロセスへ移出した排出量を控除したものです。

生産プロセスの直接排出量

DirEmは燃料の燃焼、EmH及びWGcorrは供給を受けた熱及び廃棄ガス、imp及びexpは、供給と移出という意味です。なお、プロセス中それらで発電を行い、他へ供給していれば、Emel,prodとして控除します。

間接排出量は、電力だけですね。

生産プロセスの間接排出量

さて、ルールブックには、こっそりこのような記述がありました。

経過措置期間中の間接排出の報告は自由であり、規則(EU)2023/956の付属書IVの4.3節に列挙されたものの中から最も適切な値を選択するように設計されている。

実施規則より

間接排出量の報告は自由、任意だというのです。
その理由がこちら。

経過措置期間の目的は、規則(EU)2023/956の附属書IVの4.3節で言及されている実施法において、 確定的な期間における間接排出の組込み込み計算の方法論をさらに規定するために、データを収集することである。

実施規則より

規則(EU)2023/956の 附属書IVの4.3節を確認すると、こうありました。

第三国で生産される財に埋め込まれる間接排出の既定値は、当該財の生産に使用される電力の、EUの電力網の排出係数、原産国の電力網の排出係数、または原産国の価格設定排出源のCO2排出係数のいずれかの平均値に基づいて計算された既定値に決定されなければならない。

規則(EU)2023/956 附属書IV 4.3節より

欧州委員会は、2025年6月30日までに、第7条(7)に基づく実施法を採択し、第1号に従って決定された計算方法のいずれを既定値の計算に適用するかをさらに規定する。そのために、委員会は、附属書Iに記載された商品の生産に使用される電気の量、その電気の原産国、発電源および排出係数に関して、経過措置期間中に収集されたデータを含む最新の信頼できるデータに基づくものとする。

規則(EU)2023/956 附属書IV 4.3節より

つまり、欧州委員会として、移行期間中の報告を参考に、どのような排出係数が使用されるかを検討、デファクト値を決定したいということでしょう。

なお、移行期間の報告に当たっては、次の中から最適な値を選択して、「任意報告」することになります。

・欧州委員会が提供するIEAに基づく、生産国の平均排出係数
・EU電力網の平均排出係数
・生産国の電力網の平均排出係数
・生産国の電力メニューの平均排出係数

附属書より

また、GHGの第三者検証を行っている人間からすると、こちらの記述も気になりました。

推奨される改善:事業者は、自主的に、ISO14065に認定された独立した検証者により、又は当該施設に関連する適格なモニタリング、報告及び検証システムの規則に従って、本付属書の第 I 章に従って作成された施設の排出デー タ及び特定の商品の組込み排出データの検証を受けることができる。

附属書より

14065認定を受けた第三者検証期間による検証も、推奨されています。
国内では6機関しかありません。

ただでさえ、情報開示の流れを受けてプライベート検証が増えている中、GX-ETSも条件により第三者検証を要求しています。現在でも、オーバーキャパシティのところ、さて、どうなりますやら、ちょっと恐ろしいです。

ということで、ざっと実施ルールを眺めてみましたが、いかがだったでしょうか。これから、さらに読み込んで、理解を進めたいと思っています。

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一緒に勉強していきましょう。

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