移行期間のCBAMルールを考える(2)
今年23年10月から26年1月までの移行期間における報告内容を規定する実施規則のドラフト及び附属書が公開されましたので、その内容を見ていこうと思います。
なお、7月11日までパブコメを実施していましたので、10月からの移行期間前に発表される正式版では修正が入るかとは思いますが、その場合は、適宜キャッチアップしていこうと思っています。
CBAMについては繰り返しご案内しています。
詳細については、こちらを参照ください。
さて、1回目は、CBAMの変遷や位置づけをご紹介して終わっていました。
2回目は、内容に入っていきましょう。
まずは、附属書に記載された報告すべき項目一覧から。
項目数は、数えたところ186項目ありました。
その中で、報告者名や国、住所など基本情報や、書誌的なものは除き、主要なものを抜き出してみました。
「Installation Emissions」 は、一般的には、特定の施設や設備が直接的に排出するGHGの量を指すことが多いです。例えば、工場が石炭を燃焼させてエネルギーを生成する際に排出される二酸化炭素は、その工場の「installation emissions」になります。
なので、CBAMの文脈では、事業所における排出量のことです。組織の排出量算定における、直接・間接排出量、スコープ1・2排出量と考えて頂ければよいかと思います。
バリューチェーン排出量算定のために、取引先から製品単位の排出量の報告を依頼された場合、事業場のスコープ1・2排出量を按分して算出することがありますが、この「Installation Emissions」も同じように按分して利用することになります。
「Embodied emissions」(または「Embedded emissions」)は、一般的には、製品のライフサイクル全体(原材料の採掘、製造、輸送、使用、廃棄)に関連する排出量を指すことが多く、直接排出や間接排出も含むこともあるようです。
とはいえ、CBAMでは、スコープ1・2+スコープ3カテゴリー1の排出量と認識していればOKです。
移行期間の算定ルールでは、対象製品の「関連する前駆体」が定義されています。分かりやすく言うと「原材料」のことですが、これを処理するときに排出する、直接・間接排出量も「Embedded Emissions」として算定することになっています。
ちなみに、この「前駆体」の「Embedded Emissions」には、採掘や輸送などの、いわゆるスコープ3排出量は含める必要はありません。
なお、現在のところ対象となっている温室効果ガスは、以下の3つです。
附属書には、2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas InventoriesのGWP値が掲載されておりますが、これをみると、CBAMではパーフルオロカーボンとして、テトラフルオロメタンとヘキサフルオロエタンの2種類だけ想定しているようです。
ということで、レポートの項目と対象ガスのご紹介までお届けしました。
次回は、算定の実務について見ていきたいと思います。
引き続き、お付き合いください。
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