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移行期間のCBAMルールを考える(4)

今年の10月から始まる、報告義務だけが課せられるCBAMの移行期間に適用されるルールについて、CBAM規則及び実施規則・附属書を参照しながら、主に算定周りを確認してきました。

CBAM Regulation
実施規則

3回目はこちらです。

具体的なルールが記載された附属書は一通り読んだので、最後に、CBAM規則と実施規則に目を通していきたいと思います。

まず、気づいたのが、第2条3項。

第2条は「Scope」つまり、適用範囲を定めている条項になります。
第1項が原則。まぁ、お決まりの記載内容。

1. This Regulation applies to goods listed in Annex I originating in a third country, where those goods, or processed products from those goods resulting from the inward processing procedure referred to in Article 256 of Regulation (EU) No 952/2013, are imported into the customs territory of the Union.

1. 本規則は、第三国を原産地とする附属書 I に記載された物品であって、当該物品又は規則 (EU) No 952/2013 第 256 条に言及される対内加工手続により生じる当該物品からの加工品が同盟国の関税地域に輸入されるものに適用される。

第2項は「関税地域」の詳細な説明なので省略。
で、第3項が例外規定ですが、(b)にしっかりと「personal」との記載があります。

(b) goods contained in the personal luggage of travellers coming from a third country provided that the intrinsic value of such goods does not exceed the value specified for goods of negligible value as referred to in Article 23 of Regulation (EC) No 1186/2009;

(b) 第三国から来る旅行者の個人的な手荷物に含まれる物品。ただし、当該物品の本質的価値が、規則(EC) No 1186/2009 の第 23 条で言及される無視できる価値の物品について規定される価値を超えない場合に限る

EU域内への輸出の話なので「個人は関係ないよなぁ」と思っていましたが、言われてみると「確かにそう」って感じ。「対象セクター」の製品を、お土産で持ち込んでも対象となるのですね。

で、「無視できる価値」を確認してみました。
どうやら、150ユーロ以下のようです。

ということは、150ユーロを超えるCBAM対象製品を、フェデックスで送ったとしたら、CBAM証書を購入しないと駄目なのでしょうか?

CHAPTER V Consignments of negligible value
Article 23

1. Subject to Article 24, any consignments made up of goods of negligible value dispatched direct from a third country to a consignee in the Community shall be admitted free of import duties.

2. For the purposes of paragraph 1, ‘goods of negligible value’ means goods the intrinsic value of which does not exceed a total of EUR 150 per consignment.

第5章 無視できる価値の貨物
第 23 条

1. 第24条に従うことを条件として、第三国から共同体内の荷受人に直接発送されるごくわずかな価額の物品で構成される荷物は、輸入関税を免除される。

2. 第1項の適用上、「ごくわずかな価額の物品」とは、その本質的価額が1託送品につき合計150ユーロを超えない物品をいう。

Regulation (EC) No 1186/2009より

とはいえ、認定CBAM申告者以外は輸出入禁止。

(43)The customs authorities should not allow the importation of goods by any person other than an authorised CBAM declarant.

(43)税関当局は、認定 CBAM 申告者以外の者による貨物の輸入を許可してはならない。

CBAM Regulationより

そうでなくても、四半期毎に報告もしなければなりませんから、たとえ自身が算定を行ったとしても、対応してくれるクーリエはいないでしょう。

対象となる物品は、およそ個人で扱うようなものではないので問題無いとは思うものの、今後、例えば「日本酒」などが対象となれば、輸出に活路を見出している老舗酒蔵などは、影響があるのでは?と心配になったりします。

このあたりは、対象拡大の際に、しっかり手当してくるでしょう。
税を徴収する側は、頭の良い人が多いですから。

ということで、疑念点を指摘したところで、続きは次回にしたいと思います。
もう少し、お付き合いくださいませ。


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