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CBAM移行期間のルールが最終決定(2)

CBAMの移行期間に適用される、規則及び附属書について、実施されていたコンサルテーションが終了、結果が公開されました。

この結果については、こちらのサイトで公開されています。

前回は、どのような国、産業セクターからのフィードバックがあったかについて、簡単にレビューしました。

今回は、フィードバックの内容について、ご案内していきたいと思います。

とはいえ、187全部を見るほど体力はありませんので(笑)、日本企業にとって参考になるであろうEU域外からのフィードバック、タイ・中国・台湾・インド・韓国・日本からの計26件について、ざっと眼を通してみました。

先日、アルミニウムについて「抜け道があるのでは」という記事について、ご案内していたこともあり、「当事者の意見はいかに?」と思いつつ見ていました。

が、メディアが騒ぐほどのコメントはありませんでした。

日本アルミ二ウム協会
・2次製品、プレとポストスクラップの区別の有り無しが不明確
タイアルミニウム協会
・間接排出がアルミニウム製品に適用されるか早急に決定すべき
中国ボスチール
・スクラップの定義が曖昧

考えてみれば、現在域内へ輸出しているメーカーにしてみれば、「抜け道」と言われたところで、手続き及び証書購入のコストが発生するわけですから、純粋に収益に対してマイナスの要因しか発生しません。ルールの明確化を要請するのは、極めて当然かと。

EU域内からのフィードバックを見る必要があるかとは思いますが、EU域外のメーカーは至って冷静ということ。これがメディアというものでしょう。

さて、様々な意見が寄せられてはおりましたが、次の5点に集約されます。

1.機密情報の扱い
2.EU-ETSに対する不公平感
3.炭素価格の定義
4.緩和措置や移行措置、算定方法について
5.WTO違反について

この中で、「WTOに違反しているのではないか」というものは無理筋でしょう。
欧州は、この議論についてはCBAM設計当初から理論武装しています。
なので、これについては、完全にガス抜きと思われるので、他を見ていきます。

ほぼ全てのフィードバックに含まれていたのが「1.機密情報の扱い」について。
ドラフトの開示内容を見れば、予想できたところでしょう。

日本アルミニウム協会
・1次/2次含有量は機密事項に関係
POSCO
・ビジネス秘密情報の機密性を著しく損なう
タイアルミニウム協会
・技術機密についての扱いが懸念される
タイ工業連盟持続可能な水と環境研究所
・ライセンス契約で製造している場合の情報の取り扱いが問題
台湾経済省
・鉄鋼の含有成分の割合は機密事項
日本 匿名
・報告負担が多すぎ、かつ機密情報が含まれる
日本ファスナー協会
・秘密保持、知的財産権保護が重要

「2.EU-ETSに対する不公平感」は、報告期間及び報告内容について。
EU-ETSは年1回の報告に対し、CBAMは四半期毎。また、EU-ETSは直接排出のみであるのに対し、CBAMは間接排出も報告内容となっているのです。

日本 匿名
・EU-ETSは間接排出の報告不要で、報告は年1回で不公平
POSCO
・EU-ETSは毎年、CBAMは四半期であり、不公平
・EU-ETSは間接排出報告不要、CBAMは必要
インド鉄鋼協会
・四半期報告を一定条件下、EU-ETSのように年間報告にできないか
台湾経済省
・EU-ETSのようにベンチマークに基づいた排出枠配分にしてほしい
・EU-ETSでは下流製品(ねじファスナー)は規制対象外

「3.炭素価格の定義」は、「明示的炭素価格」のみなのか「暗示的炭素価格」も含むのか。つまり、「炭素税」や「排出権価格」のように、明らかにCO2排出に対して課せられた税金、賦課金と分かるものだけなのか否かです。

日本 匿名
・明示的な炭素価格以外も幅広く認めるべき
韓国政府
・炭素価格の導入方法についての詳細なルールが必要
台湾経済省
・上流が支払った炭素価格も認めるべき
中国E-Cデジタル
・支払われた炭素価格の定義の明確化が必要

生産国で負担している「炭素価格」をCBAM証書購入分から控除することができますので、輸出企業としては喫緊の課題です。

「4.緩和措置や移行措置、算定方法について」は、移行期間が短すぎて対処できない点や、先進国と途上国では差別化してほしいというもの、また、算定方法が不明確なので明確化してほしいという要望です。

日本ファスナー協会
・中小が多いことを考慮してほしい
タイアルミニウム協会
・途上異国を優遇すべき
中国ボスチール
・前駆体の定義がさらに必要
・測定の不確かさの計算方法や参照基準必要
インド鉄鋼協会
・投入原料の組込排出量は、システム境界外の場合考慮されるか
韓国国立研究機関
・複数生産ルートがある場合、異なるモニタリング手法は認められるか
POSCO
・移行期ルールと附属書ⅢF.2.2では電炉と高炉の区別方法が異なる
タイバンチャク
・十分な猶予期間が必要
・キャパビルが必要

ということで、いかがでしょうか。
「ナルホド」と思われたのではないでしょうか。
私としても、全く「想定内」です。

さて、それでは、これらのフィードバックを受けて、どのような変更が加えられたのでしょうか。

ドラフト版と最終版は、こちらのサイトから入手できます。

分かりにくいですが、ドラフト版は、ページ上側の、このリンクから、PDFがダウンロードできます。

最終版は、下の方の、こちらのリンクです。

ということで、次回は、内容を比較していきたいと思います。



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