土地セクターはこれからのトレンドか?
最近話題になっているのが、「排出源」の反義語である「吸収源」
「カーボンソース」ではなく「カーボンシンク」です。
国連の「Race-to-Zero Campaign」でも、2050年カーボンニュートラルを達成する場面においては、残余排出量の中和を要求していますが、その際に用いられる「中和クレジット」は、吸収・除去系のクレジットであると考えられます。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第4条1及び第12条1に基づいて、附属書I締約国(いわゆる先進国、もちろん、日本も含まれます)は、毎年自国の温室効果ガスインベントリを作成し、4月15日までに条約事務局へ提出することが義務付けられています。
この報告は、セクターごと(エネルギーセクター、廃棄物セクター等)に算出されますが、その中で唯一、排出源と吸収源を両方含むセクターが「土地(利用)セクター」です。
この報告については、4回シリーズでお届けしました。
非人為由来の排出・吸収が存在する唯一のセクターでもありますが、これらのことから必然的に、他のセクターとは異なるルール・原則の下で吸排出量を取り扱うことが要求されます。
ですので、SBTiは「FLAG」というセクター別ガイドラインを作成しましたし、GHGプロトコルは「Land Sector and Removals Guidance」と言うガイダンスを作成中です。
FLAGについても、説明済です。
土地セクターの他に「LULUCF (Land Use, Land Use Change and Forestry; 土地利用、 土地利用変化及び林業) セクター」や「AFOLU (Agriculture, Forestry and Other Land Use)セクター」などが類義語として存在します。
ですが、これも「アルファベットスープ」よろしく、何が何を含むのか判りにくかったり、それぞれの用語に差別的な意味合いが入ってきたりしていたりと、非常に使いづらい。
ということで、「土地セクター」という当たり障りがなく、かつ、直感的に「吸収源」を全て含んでいるように理解されやすい用語が好まれるようになったのでしょう。
そんな折、EU理事会と欧州議会は11月11日、LULUCF規則の改正について暫定合意に達したようです。(EU理事会の発表 欧州議会の発表)
現行規則は2018年に採択され、2021~2030年の土地と森林、バイオマスなどの管理の結果、発生する温室効果ガス(GHG)〔二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素(N2O)〕の排出と吸収に関して規定しており、加盟国に対して、対象部門(土壌、森林、植物、バイオマス、木材)からのGHG排出を吸収することを義務付けている。欧州委員会は、2021年7月14日に発表した2030年のGHG削減目標「1990年比で少なくとも55%削減」を達成するための気候政策パッケージ「Fit for 55」の1つとして、LULUCF規則の改正も提案していた(2021年7月15日記事参照、注1)。暫定合意は概ね欧州委案を維持する内容となった。
現行では「排出量が吸収量を超過しない」というルールなのですが、改正案では、2026~2030年にはGHG吸収を強化し、2030年までに対象部門の年間のGHG吸収量がEU全体で3億1,000万CO2換算トン以上、排出量を上回ることを目標として新たに定めたとのこと。
つまり、LULUCFセクターでは、カーボンニュートラルだけではダメで、カーボンネガティブを達成しなさいということなんですね。
欧州委員会は、2021年7月14日に発表した2030年のGHG削減目標「1990年比で少なくとも55%削減」を達成するための気候政策パッケージ「Fit for 55」の1つとして、LULUCF規則の改正も提案していたので、既定路線ではあったのですが。
このように、「土地セクター」周りでは、様々な動きが見られています。
それだけ、このセクターの「吸収ポテンシャル」が、1.5℃目標、2050年カーボンニュートラル達成に不可欠だと、世界が気づき始めたのでしょう。
と思っていたら、日々チェックしている、CO2排出量データベースの一つである、グローバル・カーボン・プロジェクトがデータセットに土地利用変化を含め、過去に遡って更新したそうです。
このデータを分かりやすく可視化している「Our World in Data」の「Global Carbon Budget」も更新され、CO2 Data Explorerで入手可能です。
この「CO2 Data Explorer」では、国別やガス種別、総量や人口1人当たり、生産者ベースや消費者ベースなどなど、様々な条件毎にグラフ化できます。是非サイトを訪れて、試してみて下さい。とても楽しいです。
CO2排出量についてのデータベースについては、以前ご紹介しています。
こちらも、参照下さい。
ということで、個人的に「土地セクター」に着目していたところ、ガイドラインやらデータベースやら、はたまた欧州委員会の強気なレギュレーションやらが明らかになってきて、俄然、注目度がアップ。早速お届けしようと思った次第でした。
皆さんも「土地セクターアンテナ」張っておいてみてはいかがでしょうか。
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