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データ散歩〜1人当たりエネルギー使用量

WRIが、23年3月2日、世界のGHG排出量データをアップデートしました。
前回は、21年12月29日なので、1年2ヵ月ぶりですね。21年分のデータまで含まれています。

奇跡的な合意に至ったパリ協定がついこの間のようですが、その、2015年からしても、実に様々なことが起こりましたね。

批准あるいは参加した国・地域は196に達し、全体の排出量に占める割合は96%以上。さらに、US、日本、カナダ、ドイツやメキシコなど、57の国が、長期の脱炭素目標を引き上げています。

WRI リリースより

データを見ながら思うのは、時代は変わったなと言うこと。

90年代は、US一強時代、それがUSと中国で背比べする段階に移行し、今では、米国にとって、中国の背中は遠い存在。他方、インドの姿がひたひたと迫っています。まぁ、インドは人口世界第一位に躍り出ましたから、宜なるかなでしょうが。

いずれにせよ、排出量については、トップ10が全体の2/3を占めるという、冨の偏りと同じ構図。日本の排出量も、世界的に見て、決して少なくはありません。一票の重みは、大きいです。一人一人が考えて行動したいですね。

さて、こちらは、1991年から2019年までの、排出量の内訳を経時的に示したグラフになります。一目で分かるのは「Energy」の圧倒的なシェア

世界の排出量の割合の推移

一貫して首位を走り続け、2019年での割合は76%。
1990年からは、61.9%も増加しています。2013年からの5年間では4%の増加と落ち着いてはいますが、ホットスポットであることに変わりなし。ここにメスを入れなくして何するの?です。

世界が今、脱化石燃料、再エネ化に邁進するのは当然なんですね。


さて、ここで、「エネルギー全般」に目を向けてみましょう。
再エネまで含めたエネルギーの使用ではどうなるでしょうか。

今回は、ちょっと違った視点で見てみたいと思います。
こちらは、1人当たりで見てみた国別のエネルギー使用量です。

ELEMENTS ウェブサイトより

ベストテンはこちら。

ELEMENTS ウェブサイトより

何と、UAEやカタール、クウェートなどの産油国を差し置いて、アイスランド1位になっています。でも、想定内ですよね。

同国には豊富な地熱及び水資源があるため、アイスランドの発電量の99%以上を地熱発電所と水力発電所が占めていますから。さらに言うと、1人当たりの発電量もトップです。

ELEMENTS ウェブサイトより

アイスランドの3つのアルミニウム製錬所(Alcoa、Rio Tinto Alcan、Century Aluminum)は、他のすべての部門の合計よりも多くのエネルギーを消費し、同国の二酸化炭素排出量の30%を占めているそうです。

アイスランドはボーキサイトが特に豊富というわけではありませんが、安価でクリーンな電力は、アルミニウム製錬会社がアイスランドで事業を行う大きなインセンティブとなっているのは明らか。

同様の理由で、アイスランドはデータセンターやビットコインの採掘にも人気のあります。年間を通じて涼しい気候のため、24時間稼働する数千台のコンピュータの冷却コストが低く、クリーンな系統電力によって二酸化炭素排出量を最小限に抑えることができるんですね。

ということは、逆は逆。

日本のように、夏は暑くて冬は寒い。
エネルギー自給率が低く、再エネ導入も進んでいない。
かくして、電気料金も高い上に、ボラティリティも高い。
与件可能性も低いとあれば、産業を呼び込むことはままならないでしょう。

であれば、何をなすべきか。

WRIは、GHG排出量データのアップデートを公開したレポートの中で、こう述べています。

エネルギー関連の二酸化炭素排出量を対象とするGlobal Carbon Projectのさらに最新のデータによると、排出量の伸びは2013年から2019年にかけて世界的に鈍化し、1990年以降の平均1.7%に対し、年平均0.8%の増加となっています。この成長の鈍化は、同時期に世界経済が成長していたにもかかわらず起こったもので、21カ国がすでに経済成長から排出量を切り離すことが可能であることを証明しています。

つまり、「経済成長とGHG排出量のデカップリングが起きている」のです。

今まで、「デカップリングすべき」という議論でしたが、もう、現実のものとなっているのです。難しいといわれていた事象が、予想を超えて早く実現した。「あり得ない」が「あり得る」のではないでしょうか?

電力業界と環境ビジネス、両方に与するものとして、与件を持たず、全体最適となるべく、バランス感覚をもって、目の前にある事象にひとつひとつ対処していきたいと思っています。

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