EVの主戦場はグローバル
先日、EUが「2035年までに全ての新車をゼロエミッション化」、すなわち、同年以降は内燃機関搭載車の生産を実質禁止するものの、カーボンニュートラルな合成燃料を使う新車については、例外として販売を認めることを決定したことをお伝えしました。
製造業界で合成燃料の開発に最も熱心なのは、自動車メーカーのポルシェと、総合電機・電子メーカー、シーメンスの子会社シーメンス・エナジーということらしいので、断固として反対の立場をとったドイツ政府も、中間管理職だったんでしょうね。
さて、そんな「Go Green」「Go BEV」に世界が邁進する中、IBMが、EVに関する調査の日本語版をリリースしました。
Key Take a wayは、こんな感じ
いずれにせよ、業界としては「内燃機関の次に来るモビリティのエネルギー源はバッテリーである」と認識、積極的に投資をしていることは間違い無いということです。
個人的には、モータースポーツ大好きですので、内燃機関(ICE)は消滅して欲しくないのですが、時代の流れには逆らえないでしょう。現在のMT車みたいな感じで、細々と残ってくれればラッキーかなと。
技術の盛衰は、優れているか否かだけではないことは、時代が証明しています。昭和を知っている方は、ソニーと松下の beta vs VHS競争、パイオニアとビクターの レーザーディスク vs VHD競争が懐かしいですね。
EVも、その国の電力の電源構成や、モーター、バッテリー効率などによっては、内燃機関車に劣る場合もあると思いますが、ハード的に究極までカーボンゼロに近づくことができるでしょう。
他方、内燃機関は、使用燃料が「カーボンニュートラル」にならない限り、超えられない熱力学の壁があります。その「カーボンニュートラルな合成燃料」に限り使用可としてEUの緩和措置も、コストの壁を乗り越えられるか、甚だ疑問。
加えて、自動運転が来るべき未来であれば、drive-by-wireが容易なEVに軍配が上がるのは致し方なし。あとは、バッテリーを始めとするリサイクル技術が確立すれば、EVの将来は明るいかと。
と、ここまで、内燃機関の次はEVということが、コンセンサスになりつつありますね、という話をしてきましたが、ここで改めて、調査結果に戻りたいと思います。
全体のまとめは冒頭でお伝えしましたが、日本の場合は「やはりこう来るよね」という結論になっていました。
1.消費者:保守的 業界:前向き
グローバルでは50%の消費者が3年以内にEVの購入を検討していると回答したのに対し、日本では9%と圧倒的に低く、調査した7カ国最低だったとか。他方、業界幹部は、59%が今後3年間でのEV関連投資の優先領域はマーケティングと販売と回答していたそうです。響く施策が打てるか?
2.EV総所有コストに対する許容度はダントツに低い
家庭用充電設備に、いくらまでなら支払うかという問いに対して、グローバルは平均14万円のところ、日本は何と7万円。見ている世界が違いますね。
メーカーは、環境性能を謳うだけではダメなのです。
3.自動車メーカーは前のめり
1.にも関わってきますが、EVへの投資額が内燃機関のそれを上回ったのは、グローバルが23年から24年と予測されるのに対し、日本は昨年既に上回ったようです。意外ではありますが、メーカーは、主戦場はグローバルと見ている証左かもしれません。
例えば、ミラーレスカメラ。
メーカーは、オール日本です。まれにみる成功例と言って良いでしょう。
まぁ、コンデジがスマホに駆逐され、ミラーレスしか残る道が無かったということもありますが。
その一社で、ミラーレスの先駆者であるソニーは、製品発表はアメリカ東部時間です。日本時間では、深夜2:00です。
YouTubeでプレミア公開されるので、眠い目を擦りながら視聴しますが、もちろん、全て英語です。事前にモニターとして配布されるのも、海外の著名カメラマンやYouTuberです。解禁時刻になると、一斉に紹介動画がYouTubeにアップされます。
プライスも、ドル表示。このところの円安で、日本人にとっては、ますます高嶺の花になりますが、仕方ありません。日本市場をベースに、R&Dをしていませんから。
もちろん、カメラよりも、各国の法規制や道路状況等々に左右されるので、一概に比較はできないものの、グローバルに調達し、グローバルに販売するのであれば、日本市場だけ見ていたら負けてしまうのです。
限りあるリソースをどのように配分するかは、各メーカーの販売戦略によるところでしょうが、この結果が如実に表していると言えるでしょう。
2030年、2035年、そして2035年。
これから、マイルストーンとなる年が、次々に到来します。
そのとき、道路には何が走行しているのか。
空を行き交っているのは何なのか。
楽しみですね。
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