削減貢献量について考えて見る(5)
WBCSDが発行した、削減貢献量(Avoided Emissions) の算定・報告に関するガイダンスについて、シリーズでご案内しています。
1回目では、「削減貢献量」という概念について私なりの見解を述べました。
2、3回目では、「削減貢献」を謳う資格があるか否かの要件である、3つのGateについての説明。
4回目からは、具体的な算定方法についての説明に入ったところで、下記4ステップ(Step 5 は optional)のうち、Step 2まで終了しました。
Step 3は、ようやくソリューションシナリオ排出量及び参照シナリオ排出量の算定に入ります。この時、2つのアプローチ方法があるとしています。
「Attributional approach」と「Consequential approach」です。
(日本語にしづらいので、英語のまま説明させて下さい)
この概念は、GHGプロトコルの製品別の排出量算定ガイドライン「Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard」に登場していました。
バウンダリーの決定の際に重要になる概念で、簡単に言うとこんな感じ。
WRIは、2019年に発表した「ESTIMATING AND REPORTING THE COMPARATIVE EMISSIONS IMPACTS OF PRODUCTS」というワーキングペーパーで、このような説明をしています。
分かりにくいと思いますが、「Attributional approach」は、スコープ1・2と、スコープ3のカテゴリー1、3、10、11、12の算定。「Consequential approach」は、差分のみを算定するアプローチと言えます。
例えば、左の図で言うと、全体がある組織のバリューチェーン全体での排出量、点線で囲まれた扇形が、製品の製造・使用・廃棄に関わる排出量にあたり、ここを算定しようというのが「Attributional」
右の図の、デコとボコが、差分となって、ここを算定領域とするのが「Consequential」というわけです。
まぁ、難しく考えることはありません。
確かに、LCAの世界では使われるアプローチではあるものの、ガイダンスでは「どちらを使え」とは言っていません。ただ、どちらを使ったかを明らかにし、その妥当性を示す必要はあります。
とはいえ、自社のスコープ1・2・3排出量の削減ではネットゼロは達成できない、脱炭素に資するソリューションを提供することによって、世界全体の排出量を削減する必要がある、という認識の下に開発されたのが「削減貢献量」という概念でした。
ガイドラインでは、貢献の仕方として、3つの柱(Pillar)を示しています。
ですので、Pillar Bを謳う前に、Pillar Aを満足することが必要です。
ということで、提供するソリューション(製品・サービス・プロジェクト)の排出量算定はマストとなっています。(なので、個人的には、「Attributional approach」が好適ではと思っています)
算定手順の中で、ユニークだと思ったのが「ダブルカウント」の考え方。
ガイダンスでは「問題無し」としています。これは、大いにガッテンです。
それぞれの企業が、自社の寄与分を正当に主張するのは当然。それにより、ステークホルダーに評価され、社会に受け入れられ、事業が拡大すれば、まさしく、WBCSDが「削減貢献」の概念を通じて実現したいビジョンに近づきますから。
ようやく、Step 3まで終了しました。
次回は、Step 4について、ご案内していきますね。
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