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気候変動も生物多様性も〜持続可能な世界を目指そう

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双子の条約と言われる、「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」だけど、後者はどうしても分かりにくいですね。でも、持続可能な世界の実現には、避けては通れません。どちらも一緒に学んで…
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#CBAM

EU-ETSのこれまでとこれから(2)

ETSの草分け的存在、EU-ETSについて振り返りをしております。 前回は「これまで」をお届けしました。 今回は「これから」とその先を考えてみたいと思います。 開始からの20年間で、対象範囲は段階的に広げられてきました。当初は電力とエネルギー産業が主な対象でしたが、2012年からは域内航空、2021年の第4フェーズからはアルミ、セメント、化学品などの産業に範囲が及ぶようになり、現在の制度のカバー率は、EU全体の排出量の約40%に達しています。 今後、更なる対象拡大と制

CBAM移行期間のルールが最終決定(5)

CBAMの移行期間に適用される規則及び附属書について、実施されていたコンサルテーションが終了、最終版が公開されたことを受け、2回に亘って、フィードバックの状況及び内容をご案内した後、附属書の報告リストを、ドラフト版と最終版とで比較したところでした。 全体的に、フィードバックの内容の反映はあまり見られないな、という感想をもちつつ、今回は移行期間の施行規則「C_2023_5512_1_EN_ACT_part1_v6」と附属書「C_2023_5512_1_EN_annexe_ac

CBAM移行期間のルールが最終決定(4)

CBAMの移行期間に適用される規則及び附属書について、実施されていたコンサルテーションが終了、最終版が公開されたことを受け、2回に亘って、フィードバックの状況及び内容をご案内。 3回目からは、フィードバックを受けて、最終版がドラフト版からどのように修正がなされているかを、確認しています。 前回は、附属書の報告リストの前半を見ましたので、今回は後半です。 両者を横並びで比較しており、赤字は最終版で追加となった項目、青字は削除された項目です。 前半と比較すると、さほど大きな

CBAM移行期間のルールが最終決定(3)

CBAMの移行期間に適用される規則及び附属書について、実施されていたコンサルテーションが終了、最終版が公開されたことを受け、2回に亘って、フィードバックの状況及び内容について見てきました。 今回は、フィードバックを受けて、最終版がドラフト版からどのように修正が入ったのかを見ていきたいと思います。 前回ご案内したように、フィードバックの内容は、主に次の5点でした。 「1.機密情報の扱い」は、とにかく報告する内容が細かすぎることに起因するものです。また、「2.EU-ETSに

CBAM移行期間のルールが最終決定(2)

CBAMの移行期間に適用される、規則及び附属書について、実施されていたコンサルテーションが終了、結果が公開されました。 この結果については、こちらのサイトで公開されています。 前回は、どのような国、産業セクターからのフィードバックがあったかについて、簡単にレビューしました。 今回は、フィードバックの内容について、ご案内していきたいと思います。 とはいえ、187全部を見るほど体力はありませんので(笑)、日本企業にとって参考になるであろうEU域外からのフィードバック、タイ

CBAM移行期間のルールが最終決定(1)

CBAMの移行期間に適用される、規則及び附属書について、ドラフトが今年5月に公開され、コンサルテーションが実施されていました。 その際には、5回シリーズでご案内しました。 そのコンサルテーションは、7/11で締め切られましたが、187件のフィードバックが寄せられたようです。 内訳を見ると、当然ですが、企業や業界団体が大半を占めています。 その後には、EU域内の個人、NGO、政府機関と続いています。 国別にみると、ベルギーが39件(21%)でダントツなのが不思議かもしれ

インドETS、念願なるか?

排出量の多い製品の輸出入に対する措置として、EUがCBAM、USがCCAという制度を導入、綱引きの様相を呈している旨を、前回お届けしました。 EUのCBAMであれば、EU域内では排出枠を購入しなければならないので、域外で製造して輸入しようという事業者に対し、「出ていってもいいけど、輸入するときにはCBAM証書を購入する必要があるからね」というもの。 いわゆる「リーケージ」を防ぐ手段です。 代わりに、今まで「出ていかないでね。その代わり、無償で排出枠を割り当てるから」とい