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読書記録「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

 圧倒的ベストセラーのこの本。1年前に図書館で予約し、1200人の予約待ちを乗り越えてようやく私の手元へ巡ってきた瞬間はとても感慨深く、数年越しの友人に会えたような気分だった。1000人を超える予約に対応するため、図書館では100冊以上を用意しているそう。


 読後すぐの感想としては、

 長々と待たずにさっと購入して読んでだらよかった。

 子どもたちにも読んでほしいから、家の本棚に置いておきたい。

と思った。


 昨今、大きな潮流となっている「多様性」や「インクルージョン」を体感している著者とその周囲の人々。私の今の環境とは全く異なる世界の話はまさに本を通じて世界旅行や異文化交流をしているような、そんな気分になれた。


 なかでも印象に残ったのは、地雷のエピソード。

 相手に自分自身の地雷をさするような話題を振られ、むっと思いつつ、自身は相手の地雷に触れないよう気を付けていたのに、ふとした瞬間に地雷を踏んでしまったという話は私も身に覚えがある。話題にした瞬間の相手の表情を見て「失敗したなぁ~」と反省したものだった。あまり感情を表に出さない日本人と比べて、著者は「不快」という感情をストレートに表現されたようで、そいういったエピソードの節々で「異文化」というものを感じた。しかし、バックグラウンドの異なる人々と生活する中では相手の地雷を避け続けるというのは実際のところ不可能で、踏んでしまった後のフォローや自分自身も気にしすぎないということがそこでは重要になるのであろうと感じたエピソードだった。

 他にも、「底辺校」と称されている学校の教員や保護者の助け合いのエピソード、大雪の時のボランティア活動の迅速さ、今の私のを取り巻く環境とは全く異なる世界を知ることができたのはとても良かった。


 

 過去に私自身の通っていた中学校もいわゆる「底辺校」で、学力なんて二の次で相次ぐ暴力や器物破損に辟易していたのだが、その中では本著にあるような教員や保護者の助け合いっはなかったように思う。でもなぜか不良更生の一環として「ミュージカル」に力を入れていたのは同じ。中三の文化祭は教員指導でウエストサイドストーリーを練習し、荒れに荒れまくっていた不良同級生たちが少し丸くなったような、そうでもなかったような記憶がある。最近までこの中学校での生活は私自身にとっての暗黒時代としか思えなかったが、当時の先生方はとても苦労されていたのだろうなと思えるようになった。

 「底辺校」周辺の社会問題、それを乗り越えるための知恵と心がけ、きれいなうわべだけの「多様性理解」「インクルージョン」だけでは語り切れない本質がこの本にはある、と思う。

 続刊も期待大。

 今度は購入し、いち早く読もうと思う。




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