数学者という生き方と生き様


突然ですが、フィールズ賞という賞を御存じでしょうか?

これは数学界のノーベル賞と称される大変数学者にとっては名誉ある賞である。ノーベル賞は毎年該当者がノミネートされ、晩餐会を催されるなんてニュースが風物詩であるが、フィールズ賞は4年に1度の開催であり、とある数学者はノーベル賞には目もくれずフィールズ賞へ授賞されることに研究に没頭する位、大変誉れなことなのである。

日本人では1954年に小平邦彦先生(東京大学)、1970年に広中平祐先生(京都大学)、1990年に森重文先生(京都大学)と3名が受賞されている。(授賞内容は難解かつ書くのが大変なので割愛します。)最近の学者ではABC予想の一部に異を唱えたドイツのピーターショルツ先生(若干24歳で大学教授に就任した天才)やフェルマーの最終定理を導いたアンドリュー・ワイルズ先生も授賞されている。といったのがフィールズ賞の簡単な説明と前置きでした。

私にとって数学は大嫌いな科目でした。というのも授業で説明している内容が難解で簡単に説明している参考書や塾の講師に対して何度も文句を言った経験がある。根っから感性で生きてきたため、理論で説明や物事の順序を考えることが苦手であった。論理とか証明とか方程式とか知れば知るほど興味はあるが、実際に挑むと初歩で挫折するのであった。しかしその経験は私に無い部分として魅力に感じた。数学者という自分と正反対な性格、思考な人間は常にどんなことを考え人生を謳歌したのかと思うのでした。
そんなことを思っていた私が高校生の時ある一冊の書籍と出会った。

『天才数学者はこう解いた、こう生きた 方程式四千年の歴史』講談社

著者の木村俊一先生は広島大学教授で東大やシカゴ大学で数学の勉強をされた方でした。その先生が歴史上の数学者について著述されている。しかし当時の私は数学がまるっきり分からない生徒で、数学のテストもボロボロでした…しかし知識として数学者についてはもの凄い興味がありました。数学者といえば天才というイメージが強かったのと自分とは思考回路が違う人は物事をどうやって考えているのかなど知りたく読みふけっていました。その中にある日本の数学者が取り上げられておりました。名前も聞いたことは無く、どういった部分が凄いのか正直分かりませんでした。そんなことがあって高校の時に読んだ記憶のまま、つい最近上記の本を読み直す機会があり、再度その先生について深く知ろうと思いました。

その先生が高木貞治という方でした。

その高木先生という方は難解と言われる方程式の解読を立証したり、世界的に認められた功績として、なんと!上記に記載した数学界のノーベル賞フィールズ賞の選考委員を務めたという方。ただでさえ天才数学者が授賞を願うフィールズ賞の審査側にいらっしゃるなんて…もはや雲の上の存在なのだ。先生の上梓した「解析概論」は今尚名著として多くの人に愛読されている。

高木先生は東京帝国大学に進学して大学院に進み、国の要請でドイツ留学に旅立つ。当時の日本は欧米諸国から卑下されていた。先生も日本の学生としてドイツの地で偏見に遭いながらもベルリン大学の留学生として活躍した。その後ゲッチンゲン大学に移り、数学界の泰斗ヒルベルト教授の下で勉強をする。1900年にICM(数学者会議)で出されたクロネッカーの青春の夢という予想問題をヒルベルトが提唱し、世界の数学者が取り組んだ。

そして高木先生は帰国して東京帝国大学助教授として赴任して、これを見事に解いた。その後大学にこの問題の解を論文に寄稿して、東京大学初の数学博士論文第一号になったのでした。

このエピソードを聞くとミレニアム懸賞問題のポアンカレ予想を簡単な数式で説明したロシアのペレルマンを思い出しますね。このミレニアム懸賞問題は見事証明が出来たら100万ドル(およそ一億円)が与えられるそうだが、ペレルマンは証明できたことが出来ればそれでいいと賞金を一切貰らわなかったそうです。「お金のために証明したのでは無い」と言わんばかりの対応に世界の数学者は呆気にとられたそうです。近年は公に姿を見せないペレルマンですが、実はミレニアム懸賞問題を密かに証明してしまったのでは無いかと噂まであるほど。ある雑誌に掲載されていたある数学者のインタビューにこんなことが書いてあった。「数学者って自己満足が出来ればお金なんて要らない。私利私欲で生きている人間が彼らからすれば醜い存在、だから世俗を離れてゆっくり自然の中で生活したい、そしてふと数式が頭の中を駆け巡り、それに任せてペンを走らせる。それが出来るだけで満足なのだ。」

という天才のエピソードでした。詳細なエピソードは上記の書籍を読んで欲しいです。
まだまだ世に出ていない天才はごまんといらっしゃいます。これを機に天才を発掘していきたいと思います。

余談だがミレニアム懸賞問題はトータルで7つ出題され、上記のポアンカレ予想以外は未だに証明が出来ていません。近いうちに証明される時が来るのでしょうか?

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