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無人販売は優しさの塊

岐阜には、無人販売が多くて車で走っていると、あらゆるところで見かけます。季節の果物や野菜が多いのですが、手書きの値段表や家にあるものだけで作ったと思われる手作りの販売台、料金箱まで買ってくれる人のこと、盗られないための工夫を凝らしたものなど個性溢れるものがたくさんあります。

無人販売が好きすぎて、見つけては写真をとって、ついにInstagramで専用アカウント(@mujin_stand)まで作ってしまいました。
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そして、自分でも無人販売初めてみました。初めてみていろいろわかったこと、思うことを書いてみました。

無人販売研究所(@mujin_stand)

無人販売始めました

最初は、2月の終わり、取引先のイチゴ農家さんが、「形が悪かったり、熟れすぎてしまったりする市場に乗らないものがあって、本当はこれが一番美味しいんだよね」。というお話がキッカケでした。

「そのイチゴ買わせてください。うちのお店の前で売ってみます」ということから始まりました。

早速、店頭に並べてみるとインスタで告知するとあっという間に完売して、次の販売日はいつ?と問い合わせが来るまでになりました。

無人販売のいちご

夏はゴーヤを販売していました、これは母が畑でゴーヤを作ったら豊作過ぎて、「どうしよう。もう配るところがない、助けて!」と連絡があったのです。実家に行ってみると、すでに収穫されたものが30個、畑を見ればまだまだ出来そう、一軒の家でとても食べられる量ではないくらい。

どこの家にも庭に小さな畑があったりするような地方の田舎では、近所でも同じ野菜を持て余し、「うちもあるのよ」と断られることもしばしばあったようです。
少し離れた私のお店の前は、どこの家にも畑があるという立地ではないのでじゃあちょっと売ってみる?という感じで初めてみました。

夏野菜の無人販売

他にも味はいいけど、色付きが少し悪かったり、ぶつけて形が悪くなったカヌレやパンなども置いてみました。

これまでは社内でおやつとして食べたり、社員の皆さんの家に持って帰ってもらっていました。

それを話すと、いいなとよく言われるのですが、私たちも、家族も日常になりすぎてしまって、最初は喜んで持って帰ってもらっていたものも、次第に押し付け合いのようになってしまうことも度々あるのです。

まとめてネットショップで訳あり品として販売することもありますが、送料や決済手数料なども発生します。正規品を買ってもらっている人もいる中で、確かに正規品にくらべたら、なんらかの理由はあるのだれど、どこかでお客さんを区別しているようなモヤモヤした気持ちを持っていました。

無人販売で販売してみると、ネットショップで正規品を購入されているお客様とは全く違い、私たちが半ば押し付け合いになってむしろ迷惑がられていたものが、地域の人たちが楽しみにして、喜んでもらえる。お裾分けの延長で、どちらもHappyになる仕組みだなと実感しています

無人販売って盗まれないの?

よく聞かれるのが「盗まれないの?」という声。
最近、無人販売の万引きや盗難というニュースはよく見かけます。

実際、私がやっている無人販売は今のところ回収率は 90%を超えています。90%ということは、足りないということもあるのですが、なぜか料金が多い時もあるのです。袋代とかお釣りが足りないからとか、前に足りなかったから次に来た時に前回分もという事もあるみたいです。

敵は人じゃなかった

お金の心配というよりも、カラスに取られるという被害にもあった事もあります。お金が足りないという事よりも、カラスに取られたことの方が私はダメージが大きかったのです。

なぜなら、お金が足りないことってある程度予想出来ていたのです。人件費や手間を考え、そこに費用をかけるくらいなら盗られることも承知で大らかな気持ちでやってみようと思っていたのです。

でも、カラスは全く想像していませんでした。確かにカラスはどこにでもいることはわかっているのですが、商店街の人の気配もあるアーケードの下で、堂々とイチゴが食べられるなんて思ってもいなかったのです。

カラス(犯人ではありません)

カラスは、とっても頭がいいので、そこにあるとわかったら、ピューっと来てサッと素早い動きで何度も食べにいらっしゃいます。常連です。

言葉も通じない、コミュニケーションが取りにくい(鳥だけに、、、、)相手に太刀打ちするのは本当に難しい。

万引き犯は、警察に突き出して謝罪の言葉をもらったり、商品を返してもらうか、お金を払ってもらうことで解決するのかもしれないけれど、警察に突き出したところで相手にしてくれるはずありませんよね。

人間のルールなんて、無意味なのです。

ちょうどイチゴの終わりかけの時期の出来事だったので、しばらく休業して、カラスさんには無人販売の存在を忘れてもらうことにしました。

信頼関係で成り立つ無人販売

無人販売のことを高知では「良心市」、海外では「Honesty box」という名前で知られています。
どちらも、良心、正直という言葉が使われています。
持って行こうと思えば、商品を持ち去れる。だけど、対価を支払う。
それは、買う人、近隣に住む人や通り過ぎる人たちを信用して設置されています。

あげてもいいもの、捨てるくらいなら誰かに食べてもらいたい、せっかくだから肥料代くらいは回収したい、次に作る作物の苗代くらいになればという思いはあると思います。

最近の無人販売は、畑で出来過ぎた野菜や規格外の果物だけではなく、小さな店舗やコンテナハウスに冷凍ショーケースを設置して、餃子やラーメンなど加工食品も置かれるようになりました。

万引きや売上金の窃盗は絶対にあってならないと思います。作り手の信用を裏切る行為です。実際に盗られたり、お金がなくなるということがあったら本当に悲しくて、落ち込みます。

だけど私は、無人販売をする以上は、このようなことがあるというのは当然と思って初めています。無人販売にするメリットというのはあるから運営しているんですよね。例えば、直接接客する必要がない、人件費がかからない。
廃棄されるもの、作り過ぎた、これまで流通チャネルに乗らなかったものが誰かの手に届く。

もしかしたら、盗んだ人は今日食べるものがなかったのかもしれない。無人販売をする前は、平気でと言わないまでも廃棄したり、食べてくれる人を探していたんですよね。もし、今日食べるものがない人がいて、喜んで食べてくれたら喜んで差し出したと思います。
それが無人販売でお金になるということがわかったから、盗んだ、盗難だ!ということになって警察だ!ニュースで報道だ!というのはどうなんだろうと思うんです。

なんだか、最近毎日のように無人販売で万引きしたというニューズが流れています。それは氷山の一角なのかもしれませんが、とても悲しい気持ちになるのです。

盗んでいいと言ってるわけでもなく、警察に通報したりすることが悪いと言ってるわけでも否定するわけでもないんです。

商品となっているものを盗むという行為は犯罪なので、絶対ダメです。
だけど、もっとおおらかな気持ちでないと無人販売はやってはいけない。だってお裾分けの延長なんだから。カラスに盗られても仕方ない。

作る人(売る人)、食べる人(買う人)の信頼関係で性善説だけで成り立っている無人販売がたくさんある町って、心が優しい人が集まっていて、信頼関係で成り立っている安全で寛容な町だと思うんです。
まさに無人販売は優しさの塊です。

継続させるためには、やっぱり誰も嫌な思いをして欲しくない。
作る人(売る人)が嫌な思いをしないためにも、対価は必ず払うべきなのです。おおらかな気持ちを持つ、感謝の気持ちで、持ちつ持たれつで続けていきたいと思います。


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