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企業アルムナイのつくり方-5.得たい成果を明らかにする

ソニー有志アルムナイを立ち上げて1,000人規模にするなど、複数のコミュニティの立ち上げや運営に17年近く携わってきた実践家が、企業アルムナイのつくり方を詳説する連載企画。

今回は、目的と成果の具体化について。

なお本稿では、企業主導でアルムナイを立上げる想定で説明しますが、卒業生側が立上げをリードするケースでも、基本となる考え方は同じです。

目的と成果を具体化する

アルムナイ運営に会社の費用や工数を投入する以上、見合う成果が求められます。

目的は、例えば以下のような、よくあるものから選べば良いでしょう。複数ある場合は優先順位をつけます。

【採用】カムバック、リファラル
【採用】採用ブランディング(卒業生の活躍や応援)
【人事】現役社員のキャリア開発(セカンドキャリア、起業家精神)
【人事】辞めたから言える本音、外に出て他と比較して分かったこと
【事業】人を通じた一次情報の収集
【事業】他社との共創、複業人材の活用
【事業】顧客・パートナー化(販売先、仕入先、協業先)
【事業】出資・投資案件のソーシング先
【IR】人的資本開示
【マーケ】企業ブランディング、卒業後の企業アンバサダー・ファン化

方向性を絞るだけでも、ゴールやアクションの具体化の効率が上がります。

成果を具体的に定義する

例えば「カムバック採用」が目的だとしても、以下まで具体化しないと、なかなか成果にまで繋げることはできないでしょう。

  • 具体的に何を達成するのか

  • そのためにどんな順番で何をすればいいのか

  • それぞれの段階や最終的に何をもって達成と言えるのか

ここはオーソドックスに考えればよく、分かりやすい枠組みでは「5W1H」です。

ターゲット(Who)を絞り込む

得たい成果を5W1Hで具体化するに当たり、まずはターゲットである「誰」を考えます。

カムバック採用といっても、欲しい人の属性は限られているはずで、属性を区分した上で、フォーカスを絞ります。

  • 職位や年代:実務リーダー級なのか、ミドルマネジメントなのか、より上のマネジメントなのか

  • 経験や専門:新規事業の経験、エンジニアのような専門、など

ターゲットがどんな人かを定義したら、その人がどうすればいいかを考えます。

また、目標設定では「SMART」という枠組みもよく使われます。

Specific:具体的に
Measurable:測定可能な
Achievable:達成可能な
Related:経営目標に関連した
Time-bound:時間制約がある

成果に至るシナリオも描く

アルムナイというコミュニティを使った施策は、デジタルマーケティングや営業のような、施策→結果、というような単純なものではありません。様々な人の自主的なアクションが積み重なって結果に辿り着くものだったりします。

以下のプロセスも参考に、自身の目標達成までのシナリオを書いてみるといいでしょう。

  1. 会社(主催者)は、卒業生が「参加に値する」と感じる場を作る

  2. 場の価値を感じた卒業生が自発的に参画し、他の卒業生や場全体に価値をもたらす

  3. それが、他の卒業生の新たな価値貢献を誘発する

  4. 互いにGiveし合う連鎖により、場全体の価値が継続的に上がる

  5. その結果、会社(主催者)に価値が返ってくる

例えばカムバック採用を例に、簡素化して書くと以下になります。

  1. 転職のロールモデルとなる卒業生や、ターゲットが行きたいと思える会社の採用に関わる卒業生を集めたパネルや交流会などを企画する

  2. そうすることで、今すぐではなくても、先のキャリアを考えている若手〜ミドルの卒業生が参加する場を継続し、母集団形成&関係維持

  3. やがて相手が転職しようと決断したタイミングに、自社の募集がかみ合い、マッチングが成り立つ

アルムナイで成果を出す際の留意点

まずはコミュニティ全体を盛り上げてから

アルムナイというコミュニティにおいて、ターゲットにのみアプローチしても成果にはつながりません。まずは全体に価値を提供し、アルムナイ自体の魅力を高めることでターゲットの層を厚くして、関係を続ける中で成果に繋げるという、持続可能な相互利益構造を作る必要があるためです。

詳しくは以下を参照下さい。

ターゲットや参加者との相互利益構造を作る

アルムナイはコミュニティの一種であり、コミュニティにおける価値は、主体である卒業生の自主的な活動からもたらされます。主催者が一方的に価値を提供し続ければやがてリソースも精神力も尽きてしまいます。参加者もあれこれしてもらうと、メンバーではなくお客様になってしまい、むしろ自発性を阻害して逆効果です。

そうぇはなく、この場は自分たちにとって価値もあり居心地もいい良い場であり、ここの趣旨に沿った貢献をしたいと思える道筋ととっかかりを差し出し、自ら望んでアクションしてもらうようにするのです。そうすることで、持続可能になるのです。

そのサイクルが継続し、価値が増幅する連鎖に入れば、持続可能に留まらず、加速度的に価値が増していきます。正直、そこまで至れているコミュニティは極めて限られていますが、目指したいところではあります。

次ステップ:参加者価値と主催者目的を整合

上記の通り、アルムナイというコミュニティにいおいては参加者が自発的にアクションするよう、主催者が参加者にとっての価値をまずGiveして、相互利益のサイクルを成り立たせる必要があります。

次回は、そのための考え方やステップを説明します。

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