企業アルムナイをカムバック採用につなげる難しさ
アルムナイでカムバック採用をしよう、と考える会社は少なくありません。アルムナイを立ち上げたからといって、安易に採用案件を提示しても大半は興味を示さないでしょう。転職したい人が多く集まるサイトならそれでいいですが、人数も限られ、必ずしも転職を考えているわけでもない人の集まりにそんなことをしても、役に立たないノイズ情報としか思われません。
会社としては、エンジニアなど採用したいターゲットもあるでしょう。しかし、そのようなターゲットはアルムナイ参加者のごく一部で、ターゲット以外の多様な人がいます。ターゲットのみにアピールするような、会社都合が前面に出過ぎることをすれば、他の人が冷めてしまいます。
アルムナイという手段を用いて成果を出すのは、一筋縄ではいきません。
ターゲット以外も含めた全体に価値を提供する
全員とは言いませんが、多くの人にとって「参加する価値のある場」にして初めて、人が人を呼んでターゲット層も増え、場も盛り上がります。ターゲット以外の多様な層にも価値を提供して場を温めた上で、ターゲットに望むアクションをしてもらうのです。
例えば、転職に興味ある人にリーチしたいなら、転職のロールモデルとなる卒業生や、ターゲットが行きたいと思える会社の採用に関わる卒業生を集めたパネルや交流会などを企画するといいでしょう。そのような、今すぐではなくても、次のキャリアを考えている若手〜ミドルの卒業生が参加する場を継続することで、母集団を形成して関係を維持します。やがて相手のタイミングにかみ合えばマッチングが成り立ち、目指す成果につながる、という流れです。
この時大事なのは、互いにベネフィットがある、持続可能な構造にすることです。ターゲット層には、他では得られない情報や接点を得られ、登壇する側も「一定レベル以上の人材とカジュアルにコミュニケーションを取れ、採用に成功しても紹介手数料がかからない」などの相互ベネフィットが成り立ちます。会社にとってもそれが採用という成果に繋がります。
もちろん一部は他の会社に転職するでしょうが、ケチくさいことは言わないことです。相性や巡り合わせは当然ありますし、マッチングで自分だけが得をするなんてあり得ません。他の参加者(他社に行く人、他社で採用する人)にも価値がある場でないと、卒業生は集まらないので、そこは撒き餌のような投資だと割り切ることです。
成果に繋がるまでのプロセス
このプロセスを抽象化すると以下となります。
会社(主催者)は、卒業生が「参加に値する」と感じる場を作る
場の価値を感じた卒業生が自発的に参画し、他の卒業生や場全体に価値をもたらす
それが、他の卒業生の新たな価値貢献を誘発する
互いにGiveし合う連鎖により、場全体の価値が継続的に上がる
その結果、会社(主催者)に価値が返ってくる
アルムナイで成果を出すことの難しさ
裏を返せば、これがアルムナイのようなコミュニティを活用して成果を出すことの難しさです。
自分の指揮命令下にない人々に、自発的に動いてもらう必要がある
成果が出るまで複数のステップがある
よって、打ち手が間接的・複合的にならざるを得ない
不確定要素が多いので、確度も高いとは言えないし、時間もかかる
成果の出にくさだけでなく、それを人に伝えることも難しいです。打ち手と成果の因果関係も不明確なら、費用対効果も説明・検証しにくく、うまく進捗しているか客観的にも判断しづらいからです。
そうすると、マネジメントや他部門に効果を感じてもらいにくく、予算を取れない、最初に取れても続かない、となりがちです。
比較優位や補完の説明も必要
採用という目的を達成する手段なら、成果に分かりやすく直結し、短期間に成果が出る、オーソドックスな手法がいくらでもあります。
紹介会社に依頼する
人材DBでダイレクトにリーチする
採用広告に出稿する
採用イベントに出展する
これらに比べて効果的なのか、機会費用や補完の観点からも説明できなければならないでしょう。
その上で、アルムナイという手段が優位なことを見出す
そんな面倒があるのに、それでもなお、やる理由を見出せるかが、アルムナイをやるべきか、そうでないかの判断ポイントです。
これはまず、アルムナイを立ち上げようとする人の前提条件や目的によって異なります。
また一般に、コミュニティという、自社に自発的に貢献し続けてくれる人の集まりは、他社では真似できないアセットになります。その費用対効果は、盛り上がれば盛り上がるほど、基本的には増進していきます。
その成功状態やそこに至るステップの解像度を上げ、そこで得られる成果を評価できるなら、費用対効果も説得力を増すでしょう。
とはいえ、困難がある分、うまくいった時のリターンや差別化の成果が大きいので、ぜひ考えてみてください。
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