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単なる交流会に人が来ない 〜コロナ明けで変わる人の動き-1

コロナが明けて、イベントへのニーズが根本的に変化しつつある気がします。私含め、周りの主催者がそんなことを感じているようです。

それが何なのか、何人かに話を聞きながら、理由を考えてみました。あくまで一部の人の感じていることに基づく仮説なので、皆さんの意見も伺いたいと考えております。

今回は、単なる交流会に人が集まらなくなった、という話。

原因-1:時間が減ったのに、イベントは増えている

イベント可処分時間が減少

まず、世の中の人がイベントに使う総時間が減っていると思われます。

  • 外に出る人の割合が減ったまま

  • 外に出る回数が減っている

  • 1イベントあたりの滞在時間も減っている

コロナにより、外に出ることに気が進まないままの人もまだまだいるでしょう。これも、少しは戻るでしょうが、コロナ前の水準には戻らないと思います。

また、コロナ下の在宅勤務普及で、毎日会社に行くことは、当たり前ではなくなりました。外出すればついでにイベントに参加することもあるでしょうが、そうでなければわざわざ行く感が高まります。いきおい、回数は減るでしょう。

また、長居せずに帰る人も増えました。コロナ前は、19〜21時のイベントなら、少なくない人が終わりまでいて、その後に行く人もちらほら、という感じでしたが、今は中締め前に結構な人数が帰るようになっている気がします。

競合や代替手段が増えている

イベント登録のプラットフォームの中の人に聞くと、イベントの件数はコロナ前よりも増えているそうです。

  • オンラインイベントは下げ止まり

  • 対面イベントは急回復

  • イベント以外の選択肢も増えている

そもそもコロナ直後から、オンラインイベントが手軽にできることが分かり、イベントの件数は増えていました。

コロナの5類移行後、対面イベントが急回復し、オンラインは減ったものの下げ止まり、トータルの件数ではコロナ前より増えているのです。

また、コロナで外に出られなかった間に習慣として普及した、NetflixやYou Tubeなどのエンターテイメントも、コロナが明けたからといって利用をやめる訳ではありません。

より少なくなった時間を、より多くの競合や代替手段と取り合うのですから、集客が大変になるのは必定でしょう。

原因-2:参加者の変化

集まる根拠が不明確な場を避ける

何の集まりかの説明が難しいところに、人が集まりにくくなっている感じもあります。かつては「誰それの集まり」みたいなものでも人は来ましたが、今は「スタートアップ経営者の集まり」のような、どんな人が、何の目的で参加するのか、目的やテーマが明確なものがより好まれる気がします。

逆に、それらが分からず、何のために来ているか分からない、知らない人が沢山いる場に行くことを、避けるというか、興味を持てなくなっているのかもしれません。

そうなると、これまではきちんとした主催者や紹介者がアレンジしているので、そこに来ている人もそれなりであると考え、とりあえず行ってみよう、と考える人も減ります。

メリットや「タイパ」への志向

交流会においても、「YouTube」のように、短時間で効率的に、得られるメリットが明確なものを求める感覚が強くなっています。

古い感覚では、交流のような場で、メリットを強く押し出すのはなにかはしたない気もしますが、そうも言えなくなってきているのかもしれません。

ここが何の場なのか、どんな人が来ているのか、ここで何を得られるのか、といったことを、より端的に明示しなければ、個々人が行く理由も明確になりませんし、そういう曖昧な理由で来ている人がいる場を避ける傾向も出るのでしょう。

ライフステージの変化

冷静に考えると、コロナ前(2020年3月)から3年が経っています。

3年も経てば、若手は中堅になって仕事に本腰を入れ始め、ミドルは管理職となり、外に出る余裕が減るかもしれません。会社の部署異動や転勤などもあるでしょう。結婚や出産などで行動が大きく変わり、子供の進学や受験、地方への移住なんてのもあり得ます。

遊び回っていた若手も、外に行くことに飽きるかもあるかもしれません。ミドル以降なら、今更新しい人と会っても、と思う人の割合も高くなるでしょう。

主催者自身はそうでもなくとも、周りの人はそのように変化して、外に出なくなる割合が高くなるかもしれません。

原因-3:告知手段の非効率化

SNSの告知効果の低下

かつてはSNSでそれなりに人は集まりましたが、今はだいぶその効果も落ちています。

これは、インターネットのアナロジーがわかりやすいかもしれません。初期は、知性と良識ある好奇心の強い人だけが集まり、良質な情報が多かったものの、やがてそれが世に広まり、「有象無象」がドッと流入してくると、粗悪な告知に溢れる、というもの。

結果、プラットフォーム側もスパム対策をして告知効果は弱まりますし、そもそも情報の量が増えているので、見られなくなってもいます。

Facebookの高齢化、過疎化

日本においては、ビジネスパーソンがFacebookを使っている割合が高くはありましたが、既存ユーザーの利用頻度や利用者の割合が下がり、若者は使ってない人が増えており、告知手段としての効率は、この点でも低下しています。

取って代わるプラットフォームがない

しかし、これに取って代わる連絡手段が無いのが実情です。

年代を超えて普及しているものは、メールかLINEくらいのものでしょう。Instagram、Twitter、Slack、Discord、などはまだユーザーに偏りがあります。YouTubeやTiktokも発信にはハードルが高いです。LINEは告知に向く感じでもありません。メールはスパム対策で使いにくくなっているとか、反応が分かりにくいとか、色々課題はあれど、一周回って、相対的にもっとも使える告知手段かもしれません。

あるいは、自作も現実的な選択肢かもしれません。一時期盛んだったオンラインサロンでは、メンバーが使うプラットフォームはFacebookの非公開グループが多いようなのですが、ツールの流行り廃りもあり、メジャーどころも徐々に人が減っていると聞きました。しかし、ある人だけそうでもなく、そこは自前のSNS的なツールを作って運営しているようです。

アルムナイコミュニティを運営していても思いますが、実際に必要な機能や情報は大してないし変わらないので、長い目で見れば、それで充分なのかもしれません。

イベント案内プラットフォームはフォロワーがいなければ効果が薄い

Peatixなどのツールも、フォロワーが蓄積されていなけば誰にも知られません。汎用ツールであるSNSと比べれば、ユーザー数は少なく、広告効果も弱いし、拡散力も弱いです。

また、この分野でもイベントの種類ごとにユーザーのすみ分けと細分化が進んでいます。ビジネスはPeatixやイベントレジスト、エンタメ系ならパスマーケット、TEKET、ライブポケット、雑多なものはこくちーず、また、ECツールのストアズや、学びのストアカなど、元々は別の用途のツールを集客の用途に使うケースも出てきているようです。

人と出会うことへの根本欲求は変わらない

とはいえ、社会的生物である人間にとって、新しい人と出会いたいという欲求は普遍的なものです。

時代や世代により前提となる感覚や方法が変遷しても、根本の欲求は不変で、これまでの主催者が見えていない新しい手段によって、その欲求が満たされている可能性が高いでしょう。

代替サービスが欲求を満たしている

例えば、オンラインゲーム、マッチングアプリ、ライブ配信などが、そういった欲求を満たしているとも考えられます。

個人が目立つことがリスクになる時代、リアルとは切り離された世界で別人格を構成し、バーチャル世界の中で社会とのつながりを持とうとするのは心地いいかもしれません。

マッチングアプリも、明確に絞り込まれた目的に対して、直接的な手段が提供されている、ということでは、前述の傾向に合致する、「タイムパフォーマンス」の高い手段と考える人もいるでしょう。交際相手、ビジネスマッチングなど、目的や対象ごとに細分化されています。

この手のサービスは若い人から普及が始まりますが、インターネットやスマートフォンのように、より上の年代に対しても一定割合の人や、個々人の感覚の中にも浸透していくもので、マクロで長い目で見たときには、大きな変化をもたらすでしょう。

狭い範囲で密なつながりを求めるように

ある大規模イベントの主催者は、毎年運営スタッフを集めているのですが、今年は内輪盛り上がりの度合いが例年とは異なると言っていました。キャンプ企画を募ったら、例年の3倍も集まったそうです。

また、地域交流イベントに対する欲求も減ってはいないと、別の人からも聞きました。他には、ある社員数千人の会社では、社内のオンラインセミナーで500人ほどが参加するそうです。

これは、上で述べた、理由が定かではなく集まる場でオープンに人とつながることを避ける傾向の裏返しで、ひとたび「仲間」として心理的安全性を認識した内輪の人となれば、密なつながりを求めるのです。

また、よく知った人々との会食や小規模の飲み会の類は盛んなようです。これも、限られた交流の時間をこちらに使い、オープンな交流に割く時間を減らしているのかもしれません。

ファンクラブ化

ライブ配信や推し活のような、共通する参加の目的や理由がある場も、他者と繋がっている感覚を与えてくれているかもしれません。

それは、推す対象との関係だけではなく、同じ対象を推す「仲間」がいる感覚があるだけでも充分で、仲間同士の個人的なつながりなどは必ずしも求めてはいないことも考えられます。

まとめ

以上のような考察から、アフターコロナの交流ニーズは以下のようになるのではと考えます。

  • マッチングツールなど、目的別にツールを使い分けるようになる。

  • 参加理由が明示的ではないオープンな集まりからは足が遠のく。

  • 参加理由や属性の明確な、狭い集まりの中で、より密な関係を求めるようになる。

  • よって主催者は、これまでより明確で強い参加動機を企画、提案出来るようになる必要がある。それは個人に対するファン化、ビジョン、即物的なメリットなど様々である。

  • コミュニケーションのツールは年代や階層による分断が進み、集客をツールに依存することが難しくなる。よって、自前のツールを使うか、ツールに左右されない求心力を持ちつつ、複数ツールを使ってリスク分散する必要があるかもしれない。

まあ、しばらくは主催者にとって難しく舵取りが求められるのかもしれません。

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