区分所有法 第57条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)

←区分所有法第56条 区分所有法第58条→

条文

(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第57条 区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。

解説

 第57条から第60条までは、区分所有者と占有者の共同利益背反行為に対する対応を定めた規定である。マンションにおいて区分所有者や占有者は建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為(共同利益背反行為)をしてはならない、と区分所有法で定められている。区分所有者または占有者が最低限守らなければいけない法定義務である。法定義務とはいえ、共同利益背反行為を行った者がある場合は、その者に対してその行為をやめさせなければならない。それを定めたのが区分所有法第57条から第60条までになる。

 区分所有者または占有者が共同利益背反行為を行った時、または行う恐れのある時に、他の区分所有者または管理組合法人は、
○共同利益のために
①行為の停止
②行為の結果の除去
③行為の予防のための措置
を請求することができる。

 前述の請求は、訴訟または訴訟外で行うことができるが、訴訟で請求するときは集会の普通決議が必要。その訴訟を他の区分所有者のために提起することができるのは、⑴管理者または⑵集会で指定された区分所有者である。

 繰り返しになるが、第2項により訴訟を提起するには集会の決議のみで行えると規定しているため、区分所有者全員の同意があっても訴訟は提起できない。この規定は第58条から第60条まで準用されているため、共同利益背反行為に対する訴訟は必ず集会決議を経ることになる。全員同意で訴訟提起できないのは、区分所有者間で充分に話し合う機会を与えるとともに、対象者に弁明の機会を与えるためであろう。

 ※規約違反、敷地及び共用部分等に生じた損害賠償金の請求、不当利得の返還金の請求の訴訟は区分所有者のために管理者が行うことになり、集会で選ばれた区分所有者は訴訟の提起はできない。

 

参照条文等

区分所有法 第6条(区分所有者の権利義務等)
 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
3 第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。
区分所有法 第26条(権限)
 管理者は、共用部分並びに第21条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第47条第6項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第18条第4項(第21条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第2項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第35条第2項から第4項までの規定を準用する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?